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比較神話学から見た記紀神話

2016年03月29日 | 歴史・民俗

古代史や日本人のルーツをひも解くにあたって、様々なアプローチがある。

考古学言語学遺伝学・・と、それぞれに諸説生み出しているが、特に理化学的な研究はめざましく、DNA研究から、現生人類は約20万年前にアフリカ中部にいたある1人の女性=イブを母親としているコトが判明している。

日本人の起源に関する研究では、ミトコンドリアDNAY染色体の他にも、血液型のうち血清の型を決定するGm遺伝子、白血球の型HLA(ヒト白血球抗原)、ATL(成人T細胞白血球)ウイルス分布による説など、まさしく科学的根拠をもった説が学界を席捲している。

 

ちなみにHLAの遺伝子の型の分布を調べた結果、日本人にもっとも多い型は、バイカル湖周辺を含むモンゴル人に多い型で、日本列島では北九州から東北まで分布、Gm遺伝子でも同様に日本人の起源は北方型モンゴロイドであり、その起源はシベリアのバイカル湖周辺だと言われている。

 

さて、そうしたアプローチの中でもユニークなものは、『比較神話学』と呼ばれるものであろう。

比較神話学とは、世界中の民族がもつ神話を比較し、その共通性を探り、分類する学問で、 日本でも1960年代から大林太良によって研究が進められ、本来は西洋古典学者の吉田敦彦が、ギリシャ神話やその周辺の中央アジアや北欧神話の研究成果と日本神話を結びつけるコトで、より深化していった。

そうした中で、『記紀』神話も日本で独自に生まれたものではなく、同様なモチーフの神話が世界各地に存在し、その影響を受けたものと考えられるようになった。

 

たとえば、天の岩戸神話「太陽の復活型神話」として、インド東北部のアッサム地方や中国南部から東南アジアにかけて広がる照葉樹林文化地域にしばしば見られるという。

『古事記』に出てくるオオゲツヒメ『日本書紀』ではウケモチ)という女神が、体や排泄物から食物を作って供したトコロ、「汚いものを食べさせた」と怒ったスサノオ『日本書紀』ではツクヨミ)から殺され、その屍体から五穀が生まれる・・という話は、"ハイヌウェレ型"と呼ばれる「作物起源神話」として、東南アジア、オセアニアから南北アメリカといった環太平洋地域全域に広がっている。

典型的なのが、インドネシアセラム島ヴェマール族に伝わる神話で、ココヤシの花から生まれたハイヌウェレという少女の排泄物が宝物になるので、それを村人に配ったトコロ、村人たちは気味悪がって彼女を殺してしまい、屍体を切り刻んであちこちに埋めてしまった。

すると彼女の屍体からは各種のイモが生えてきて、人々の主食になったというもの。


また海幸・山幸神話「失われた釣り針神話」として南洋諸島各地に、因幡の白ウサギ神話「間抜けなワニ神話」としてマレー半島に共通している。




これらのコトから、日本は少なくとも南方系―スンダランド起源のオーストロネシア文化の影響を強く受けているコトが分かる。



―が、もちろん、それだけでなく、多くの人が意外に思うかもしれないが、『記紀』神話とギリシャ神話の共通点が多いコトが指摘されている。

高天原に八百万の神々が住むという日本神話と、オリュンポスの山上に12神ほか多くの神々が住むギリシャ神話

ともに”神”といえども人間と同様の姿形で喜怒哀楽をもつ、非常に”人間的”な神々である。


『古事記』の冒頭にある天地創造の話(『日本書紀』は少し異なる)は、混沌の中から最初に三神が誕生するコトも、ギリシャ神話と同じである。


またギリシャ神話の豊穣の女神デメテルの隠遁と復活の話は、天の岩戸神話と共通しているとされる。


亡くなった妻に死者の国に会いに行く「亡妻神話」ともいえるイザナギ・イザナミの話とオルフェウス・エウリディケの話は、驚くほどそっくりある。


さらにギリシャ神話の英雄ヘラクレスに与えられた12の難行のうち、9つの頭を持つヒュドラを退治する話があるが、このヒュドラから我々日本人は、スサノオが退治したヤマタノオロチを連想するだろう。

(カテゴリー/歴史・民俗:「ヤマタノオロチ」参照http://blog.goo.ne.jp/kinto1or8/e/c1d178fe558e7a7b020f0284720afcb5


これらの共通点は、単なる偶然の一致では片づけられない。

先の比較神話学者・吉田敦彦は、ギリシャ神話を日本に紹介するとともに、インド・ヨーロッパ語圏の神話と日本神話の関連性を明らかにしてきた。

実際に、ギリシャ神話は日本にまで届いていたのである。


東洋と西洋の文化には、厳然とした断絶があるかのように思えるが、こうして見てみると、当然、東西文化に連続性があるコトがわかる。


では、ギリシャと日本を結びつけたのは、どんな人々だったのか?・・というと、アジア内陸部に幅広く存在した遊牧騎馬民族であるという。


つづきは、また・・。

(カテゴリー/歴史・民俗:「ギリシャと日本を結んだ遊牧騎馬民族・スキタイ人」参照http://blog.goo.ne.jp/kinto1or8/e/afc7cd5e515c8cbeac811c9cfdff004c



 

 

 

 


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