遅まきながら評判だった「デフレの正体」を読みました。

著者藻谷浩介(日本政策投資銀行参事役)の講演録をもとにまとめたものなので文章はいたって読みやすく趣旨明快です。
一言でいえば「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減なのだ」
なんかこういうと実も蓋もないみたいですが豊富なデータをもとに説得力があります。
団塊の世代が高齢者の仲間入りをして生産年齢人口は21世紀になると落ち込み始め、日本の就業者数は減少していきます。高齢者は資産は持っていても消費はあまりしません。自動車販売も、家の新築も酒類販売も貨物輸送量も減少し、日本経済の基礎代謝は落ちてきています。失業率とか対前年同期比とかで見ているとみえにくいのですが、絶対数を確認すると内需が縮んでいるのがみえてきます。結果高齢者中心に持っている1400兆円の金融資産は使い道がなくほとんどが国債となり政府をファイナンスしているということでしょう。
日本の高度成長は先進国にキャッチアップするに際し、技術革新を行いつつ産業構造を高度化していったのですが、一番の足元で生産年齢人口の増加という「人口ボーナス」が旺盛な内需をもたらし、需要を心配することなく供給能力をいかに増大させるかだけが課題だったということに支えられていたのでしょう。
では出生率を上昇させればいいのかというと、今生まれても生産年齢になるには15年かかるわけで、まったく即効性はありません。モノづくりの技術革新を進めても輸出は伸びても内需拡大には寄与しない以上デフレ脱出の処方箋にはならないのです。外国人労働者をいれたらといわれても、生産年齢人口減少に見合う労働者を入れることが日本社会として可能でしょうか。すこしオーダーが違うみたいです。
しかし否応なく高齢化は進んでいます。団塊の世代は65歳を超えていこうとしています。第2次ベビーブーマー以降の世代は減少の一方です。デフレ脱出の処方箋はないのでしょうか。
著者は①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱める。②生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やす。③個人消費の総額を維持し増やす。とあげています。
具体的には
1 高齢富裕層から若者への所得移転;団塊世代の退職で浮く人件費を若者に、相続税の課税強化と生前贈与の促進
2 女性の就労と経営参加;生産年齢人口の専業主婦1200万人のうち4割が有償労働すれば団塊世代の退職の影響はチャラ。
3 外国人観光客、短期定住客の受け入れ;国際観光収入1兆円はまだ数兆円の伸びしろがある。
この処方箋既に政府が政策として取り上げていることが多いのですが、問題はいかに実効性あるようにできるかでしょう。相続税は課税強化されそうだし、観光についても力を入れています。でもデフレ脱却の切り札となるにはもう一段階ブレークスルーが必要だと思います。それにしても人口構造は10~15年では変えることが出来ないのでそれを前提にして政策を考えなくてはいけないというのはなかなかハードですね。この日本という国にはまだそれだけの覚悟が足りないのではないでしょうか。
そろそろ図書館でもあまり待たなくて借りることができますのでご一読を。

著者藻谷浩介(日本政策投資銀行参事役)の講演録をもとにまとめたものなので文章はいたって読みやすく趣旨明快です。
一言でいえば「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減なのだ」
なんかこういうと実も蓋もないみたいですが豊富なデータをもとに説得力があります。
団塊の世代が高齢者の仲間入りをして生産年齢人口は21世紀になると落ち込み始め、日本の就業者数は減少していきます。高齢者は資産は持っていても消費はあまりしません。自動車販売も、家の新築も酒類販売も貨物輸送量も減少し、日本経済の基礎代謝は落ちてきています。失業率とか対前年同期比とかで見ているとみえにくいのですが、絶対数を確認すると内需が縮んでいるのがみえてきます。結果高齢者中心に持っている1400兆円の金融資産は使い道がなくほとんどが国債となり政府をファイナンスしているということでしょう。
日本の高度成長は先進国にキャッチアップするに際し、技術革新を行いつつ産業構造を高度化していったのですが、一番の足元で生産年齢人口の増加という「人口ボーナス」が旺盛な内需をもたらし、需要を心配することなく供給能力をいかに増大させるかだけが課題だったということに支えられていたのでしょう。
では出生率を上昇させればいいのかというと、今生まれても生産年齢になるには15年かかるわけで、まったく即効性はありません。モノづくりの技術革新を進めても輸出は伸びても内需拡大には寄与しない以上デフレ脱出の処方箋にはならないのです。外国人労働者をいれたらといわれても、生産年齢人口減少に見合う労働者を入れることが日本社会として可能でしょうか。すこしオーダーが違うみたいです。
しかし否応なく高齢化は進んでいます。団塊の世代は65歳を超えていこうとしています。第2次ベビーブーマー以降の世代は減少の一方です。デフレ脱出の処方箋はないのでしょうか。
著者は①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱める。②生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やす。③個人消費の総額を維持し増やす。とあげています。
具体的には
1 高齢富裕層から若者への所得移転;団塊世代の退職で浮く人件費を若者に、相続税の課税強化と生前贈与の促進
2 女性の就労と経営参加;生産年齢人口の専業主婦1200万人のうち4割が有償労働すれば団塊世代の退職の影響はチャラ。
3 外国人観光客、短期定住客の受け入れ;国際観光収入1兆円はまだ数兆円の伸びしろがある。
この処方箋既に政府が政策として取り上げていることが多いのですが、問題はいかに実効性あるようにできるかでしょう。相続税は課税強化されそうだし、観光についても力を入れています。でもデフレ脱却の切り札となるにはもう一段階ブレークスルーが必要だと思います。それにしても人口構造は10~15年では変えることが出来ないのでそれを前提にして政策を考えなくてはいけないというのはなかなかハードですね。この日本という国にはまだそれだけの覚悟が足りないのではないでしょうか。
そろそろ図書館でもあまり待たなくて借りることができますのでご一読を。