怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

池田清彦「驚きのリアル進化論」

2024-04-06 21:22:30 | 
進化論については学校で習った程度の知識なのだが、当時はネオダーウィニズムで説明されていたと思う。
そもそも「生物が進化する」と言う概念の歴史は新しく、「種は不変」と言う考えることが当たり前だった。
では現実の生物の多様性をどう説明するのか。ギリシャのプラトンは「イデア論」で説明。
種は不変と言う考え方はキリスト教の世界観と親和的で、今でもキリスト原理主義では進化論を認めていない。
「進化」という概念を始めて論じたのはラマルクですが、やがて「進化論の父」ともいうべきダーウインが登場する。
この本は進化論の歴史を要領よくまとめ、ネオダーウィニズムだけでは説明できないことが多々あり、著者の提唱する「構造主義進化論」の考え方を現在の結論としている。

ダーウインを始めとした人となりとかも紹介してあり、ダーウインは乗船したビーグル号の経費を親に出してもらっていて現在の貨幣価値では1億円以上とか。
ダーウインが種の起源に書いた進化論の仮説は
1 生物は変異する。変異のいくらかは遺伝する。
2 生物は生き残るよりずっと多くの子を作る。
3 変異が遺伝するならば、適応的な変異を持っているのは徐々に子孫を増やし、不適応な的なものは徐々に子孫を減らしていく。
4 その結果、生物の集団は、適応的な変異を持つものが徐々に多くなり、最後には元の集団から非常に離れてしまうこともあり得る。
ダーウインは種は不変ではなく自然選択により種が分岐すると言う説を唱えたことが生物界のコペルニクス転回となったのだが、「進化」を「進歩」と結びつけていない。進歩と結びつけて考えたのは彼以外で、スペンサーによって「自然選択」は「適者生存」として進歩と結びつけられた。
ダーウインは変異は漸進主義で獲得形質が遺伝するとしていたのだが、これは形質の遺伝の法則を発見したメンデルの登場により失墜。
因みにメンデルは実験結果とそこから導き出される法則に自信を持っていたのですが、メンデルの法則は世に認められることなく1884年に61歳で世を去っています。メンデルの法則はそれから35年たって再発見され20世紀の生物学会を席巻します。
そこから突然変異と自然選択の繰り返しで生物は環境に適応するように進化すると言うネオダーウィンニズムが進化の仕組みを説明できるとなってきた。
ネオダーウィニズムを簡単に説明すると
1 ある生物の遺伝子に突然変異が起こる
2 ほとんどンケースでは元からいたタイプよりも不適応的なので、この遺伝子を持つ個体はすぐに死んでしまうか、あるいは自然選択の結果、個体群から取り除かれてしまう。
3 ただし、ごくまれにその突然変異がオリジナルより適応的だと言うケースもあり、その場合は自然選択によって変異個体が集団に広がる。
4 この繰り返しで生物は環境に適応するように進化する。
耐性菌とか抗がん剤が効かなくなる現象はこれでうまく説明でいる。
ところがこのネオダーウィニズムでも説明がつかないことが多々出てきた。
この辺りから私の50年前の高校生物の知識ではちょっと手ごわくなってきます。
説明できない例示として人類が何故無毛かと言う話が出てきましたが、それ以外にも適者生存の論理では説明がつかないことは多々ある。
高等な動植物では遺伝子と形質はどうやら1対1で対応しているわけではない。
分子生物学の発展と遺伝子情報の解析によってゲノムがすべて解析でき、DNAを切り貼り改変できるようになってら、神の領域に立ち入ってとんでもない生物が出来るかもしれないと思われていたのですが、どうやらどんなにDNAを切り貼りしても新しい種を作ることは出来ない。ジェラシックパークの様に恐竜を復活させると言うのは無理みたいです。
遺伝子は大きく分けると「構造遺伝子」と「発生遺伝子」の2種類あります。同じ遺伝子でも発現パターンが異なると異なる形質が現れる。遺伝子を取り巻く環境の変化で形質は大きく変わってくるのです。
生物の発生と進化という現象の背後には何らかの構造が存在し、その構造を探知しようと言うのが構造主義進化論。そこから進化を考えるとダイナミックな生物の進化をもたらすには自然選択などと言うものとはレベルの違うシステムの変更がもたらしたものと考えられ、それはちょっとづつ適応して徐々に進化してきたと言うものではなくせいぜい数世代のうちに一気に進化してきたものではないかと考えないとうまく説明がつかない。
地球誕生以来45億年以上の年月を経る中で全球凍結とかCО2濃度の急上昇とか何度も環境は激変しているのですが、その中で、原核生物から真核生物への進化、単細胞生物から多細胞生物への進化、カンブリア大爆発による生物の劇的な多様化、魚類から両生類、爬虫類そして哺乳類への進化と言った「大進化」のメカニズムは地球環境の劇的な変化というアクシデントによって恣意的に行われたもの。その後の細かな種をまたがないレベルの小進化を突然変異や自然選択が担ってきた。ネオダーウィニズムでは大進化は説明できず種をまたがない小進化を説明できるに過ぎない。
ただし環境激変によってもたらされた大進化は誰も見たことがなく、実証することは不可能なので想像するだけですけど。
自然選択とか適者生存と言う言葉が、強者の論理として政治的に恣意的に使われることがあるのですが、進化論は確たる真理ではなくまだまだ未解明のものと考える必要があります。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 有川ひろ「みとりねこ」 | トップ | 4月6日熱田神宮公園テニス... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事