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怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

藻谷浩介「誰も言わない日本の実力」

2025-06-07 14:05:36 | 

この本は毎週日曜日に毎日新聞掲載ンコラム「時代の風」に寄稿したものをまとめたもの。複数の執筆者がいるので藻谷さんが執筆するのは1~2か月に1回。したがって2016年5月から2024年6月までの足掛け9年間に及ぶものです。

経済、政治、国際関係、社会、思考方法の5章にまとめてありますが、当然ながらかなり前のものもあるのですが、それを補うためにそれぞれに当時の時代背景を含めて「解説」が丁寧にされています。

一読してちょっと驚いたのがアベノミクスと安倍政治への強烈な批判。藻谷さんは「デフレの正体」がベストセラーになってテレビ、新聞にもよく登場していたのですが、アベノミクス、安部政治の批判を書くと政権に忖度するマスコミからどんどんオファーが減ってテレビで見ることもほとんどなくなりました。

もはや過去のこととして忘れてしまったことが多いのですが、アベノミクスとは何だったのか。強烈にアピールするレトリックで海外投資家を呼び戻し株高をもたらしたのは成果なんでしょう。実際の施策としては三本の矢と言っても黒田日銀総裁の下で行なわれた異次元の金融緩和だけだったのではないかと思うのですが、当初2年間でデフレを終わらせ2%程度の物価上昇をもたらすという自信満々だった宣言は実現できなかった。結果は円安と株価上昇をもたらしたのだが、物価はあがらず経済は成長しなかった。その副作用が目立つようになり、軌道修正に苦しむことになる。

それでも安部首相は総理の特権で自分の最も有利な時期で国会を解散し、やるべき消費税増税を延期を争点にするなどして選挙での勝利を重ねていった。まんまと安倍の選挙戦略に踊らされて盤石の長期政権を築いたことに対して、行間に藻谷さんの口惜しさがにじむ出ている。まあ、名古屋市民は何故河村さんを市長に選ぶのか、馬鹿じゃないのと思うのと同じようなことですかね。

政治では長期政権のもたらした弊害が目を覆うばかりなのですが、改めてこれらのことを読んで当時を思い出しても、それでも選挙に強いというのはいかばかりか。

コロナに対する対応についてもアベノマスクとかいきなりの緊急事態宣言とか行動制限とか的外れな対応が多かったのですが、死者数などから見るとインフルエンザの方がよほど影響が大きい。感染経路も飛沫とかエアロゾルを通じて口から口へだとすると効果のないいろいろな対策がなんと多かったことか。初期に家族がコロナに感染した時に濃厚接触者として公園の散歩も禁じられたのですが、屋外の開放空間で感染する可能性はいかほどだったのか。コロナに対しては藻谷さんの議論に必ずしも首肯できない面もあるのですが、コロナという新興感染症への対応は正しかったのか、どうすべきで何が誤ったのか、きちんと総括されているのか検証されているのでしょうか。

ところで藻谷さんは日本各地、世界各国を自分の足で歩き、見聞きし、データーを読み込んでいるので、現場の生の肌感覚が出ています。藻谷さんは日本の将来について少子化が一番の喫緊問題だと言ってますが、そのボリュームを考えると移民で解決するには日本社会への負荷が大きすぎる。地方では女性の就業率が高いのだが出生率も高い。求められているのは働きながら子育てできる環境なのだろう。因みに島根県は若い女性の就業率1位、出生率2位、対する東京は若い女性の就業率40位台で出生率47位とか。

ところで都道府県別の人口動態を見ると東京は全国からの社会移動があるので増加しているのですが、内訳を見ると生産年齢人口は減っている。年齢別にみれば増えているのは高齢者人口で、死亡率が減っているので高齢化率はどんどん上がっている。このまま東京の高齢者が増えていくと医療施設とか福祉施設とかの対応はひっ迫して大きな問題になると思うのだが、逆に地方では既に高齢化が進みすぎて高齢者の伸びはとまりつつあり、医療福祉で余裕が出てくるかもというのは何という皮肉。

社会の高齢化と人口減少は必ずしも経済成長の制約にはならないのだろうが、老いていく日本の行動は活力がどうしても衰えていくのは避けられないので旧来の成長戦略ではうまくいかないことが多いのではないだろうか。どうする日本。

安部支配の政治も終わり、そろそろ藻谷さんもいろいろな場面に出てきて鋭いコメントをしてほしいものです。

 


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