怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「統計学が最強の学問である」西内啓

2013-10-26 08:36:08 | 
大学時代、経済学部の必修単位に統計学があったのですが、何をするでもない呆然とした学生生活を送っていた私は、3年のときに単位を落としてしまいました。4年生で落とすとやっぱりちょっとまずいとその時はそれなりに必死で勉強したものです。おかげで再試は優で通りましたが、当然ながらあまり身についていません。それでも標準偏差、回帰分析、t検定などの言葉にそんなにアレルギーはない様に思います。
この本は最近話題で結構売れていると聞いて読んでみましたが、まったく統計学を知らない文系一筋の人にはちょっと辛いかも。

著者はもともとは医師ですので、疫学の成果から入っています。コレラの感染対策にスノウと言う外科医は詳細な聞き取り調査をし、データを集め、検証している。その結果はある水道会社の水を使うのをやめるということだった。侃侃諤諤の議論をし、時間と労力をつぎ込んだ努力よりもデータに基づく統計のほうが雄弁に対処方法を示していたのです。
いまや医療もエビデンスに基づかないものは考えられず、最近のITの進歩は大量のデータ処理が可能になっただけにますます統計学を知らずして議論が出来ないようになっているのです。
では実際どうしたらいいかというと、まずはサンプリング調査の有効性をよく認識しなくてはいけません。全数調査が最善と思いがちですが、そのかける労力と費用に比べてサンプリング調査の誤差はいかほどか、標準誤差と言う言葉で説明しています。
その上で統計データをビジネスに使うためには
1 何かの要因が変化すれば利益は向上するのか
2 そうした変化を起こすような行動は実際に可能か
3 変化を起こす行動が可能だとしてそのコストは利益を上回るのか
という問いに答えられなくてはいけません。
その意味では、残念なことにこれらの問いに何も答えてくれないグラフがなんと多いのか。
綺麗なグラフを作ってもだから何?どうしたのと言うのであれば何の意味もない。
「十分なデータ」を基に「適切な比較」を行うことによって3つの問いに答えられる解析を行わなければいけない。
著者はここで駄目なグラフの実例、そして分析結果が大きな売り上げ増に結びついた例を多々述べている。比較の手法として「カイ二乗検定」と「P値」が登場。だんだん数学的知識が必要になってきます。比較するに際して誤差はどれぐらい生じ、誤差を考慮しても意味がある結果かどうかを判断するのに使います。
それでは適切な比較とは何かですが、簡単に言えば「目指すゴールを達成したもの」と「そうでないもの」の違いを比較すればいい。それでは目指すゴールとはと言うとそれは人それぞれ。ビジネスではシンプルに「利益を上げること」です。ここらあたりがビジネスの世界はシンプルだけどそうでない分野もたくさんあるので考えどころなんですが、大量にあるデータのうち何が、どのような関係で利益と繋がっているのか、ここがポイントです。
まずは誰がどのようなデータを持っているのかと言う情報を共有することです。
その上で次に問題になるのが因果関係の向きとなるのですが、因果関係はどうやって分析できるのかというのですが、ここで登場するのが「ランダム化比較試験」です。即ちランダム化を用いて因果関係を確率的に表現しようとするものです。
しかしランダム化はすばらしい威力を発揮するのですが、限界もあります。
1つ目は「現実」の壁。1回こっきりのチャンス、ほとんどチャンスがないものに対しては統計学は無力です。条件を制御できないものにも同様です。
2つ目は「倫理」の壁。明らかに有害な条件、公平の原則に反する条件は倫理的に許されない。
3つ目は「感情」の壁。自分が比較試験の対象になり、その結果運次第で対応が違うのはいやと言うような感情面での拒否感は考えておかないといけない。
それではランダム化できなかったらどうするか?男女別年代別に区切ったグループごとに比較=層別解析をすることによって対処する方法がある。また回帰分析を行うことによってそのバラつき、標準誤差、95%信頼区間を見ることによってデータの関係性を判断できるようになる。
ここから重回帰分析、ロジスティック回帰と見るだけでもう駄目と言うような記述になっていく。ちなみに大学時代でも単純な回帰分析は出来たが重回帰分析というと結果の意味は分かってもどうやって出すのかはお手上げ。今となっては数式は飛ばして分かる日本語だけを読むのが精一杯です。
第6章は統計家たちの仁義なき戦いと題して統計学の6つの分野の概説と対立を述べていますが、ここはまあ学者ではないので読み飛ばせばいいのでしょう。
統計学の考え方を身につけエビデンス(科学的根拠)を持って判断していく、このことは一見科学的とかもっともらしい議論に流されないために大切なことと思いますし、この本が売れているのもそのため・・・
ただ、私としては大学時代の悪夢を思い出したこともあり、より文系に親和的な『「社会調査」のうそ』を読んでからにするのをお勧めします。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-03-25 21:05:31
西内は医師ではないんですよ。
「医学部卒」ってそれっぽくみせてますが、「看護学科卒」なんですよ。
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