日本人でがん患者は増え続けていて、2015年には二人に一人はがんで死亡すると予想されています。がんと言う病気が一種の老化現象で高齢化が進むほど多くなるからです。
現在ではがんに罹患しても半数以上の方が治癒(5年生存)できるようになったのですが、初回治療が成功しなかった患者は、数ヶ月か数年で、大半が激しい痛みを経験しながら死んでいきます。
日本人のかかるがんの種類は、冷蔵庫の普及とともに胃がんが急激に減ってきて、欧米のように肺がん、前立腺がんが増えてきています。以前は胃がんが多かったことも影響あるのでしょうが、日本のがん治療は世界一手術偏重です。放射線治療は25%あまりですが、米国ではがん患者の65%が放射線治療をうけています。放射線治療医の養成も進んでいないとのことで、なかなか医師の意識を変えるのも難しそうです。
前段、中川先生が現状を押さえた上で、養老先生との対談になるのですが、これが結構面白い。曰く「自分は死なない」という考えを前提に、医療が成立していることが問題。人間の死亡率は100%。85歳の患者さんの5年生存率とはいったい何なのか・・・。がん患者の何割を完治できるかという教育を受け、医療を行っているが、治らない患者に対してどういう考え方でどういう医療をするか、それが緩和医療なのでしょうが、受け入れてくれる施設も少なく、今は難民のような状態になっている。
何で医療はもっと苦しんでいる人に向かないのか、治らない患者が残された時間を苦しむことなく生きていくのを助ける医療が十分ではない。
ちなみに日本人はモルヒネに対する抵抗感が根強いのですが、経口摂取では血中濃度が急激に上がることもなく中毒になることはないそうです。モルヒネの使用はアメリカ、フランスの4分の1とか。まず目の前の痛みを取ることに全力を尽くすにはモルヒネが必須なのですが、麻薬を呑むと命が縮むと拒否される。実際には痛みを我慢するほうが命を縮め苦しむのにです。根底には治ったら勝ち、治らなければ負けという考えがあって、そもそも人間は死ぬのだというごく当たり前のことを認識しようとしないことからきているのでしょうか。我慢強いのは日本人の美徳のように言われていますが、養老先生曰く「俺は死ぬんだよ」というときに、痛みを我慢してどうするのってことに、当然なりますよ。
ところで中川先生は死ぬならがんがいいといいます。突然死と違って末期といえども残された時間があり身辺整理も出来る。養老先生も中川先生も検診は受けたことがないといわれると・・・・。がん検診はともかく生活習慣病検診も受けないの?ちなみに今の告知のやり方にはお二人とも不満があるみたいで、演出と思いやりが必要で、そこに医師の力量が出るとか。
中川先生は放射線治療医なので、今のがん治療が手術に偏っているのは、大いに不満。がんの種類が乳がんや前立腺がんが増えてきているので当然放射線治療の比重が増えるべきなんでしょう。今はガンマナイフと量子線治療という体に浸襲性の低い方法もあるので、選択肢は広がるべきです。
ところでがんが治る治らないは治療直後にはなんともいえません。判定は5年生存率(前立腺などは進行が遅いので10年)の結果です。がん医療では最初の治療がなんと言っても一番大事で、再発してしまうとまず完治は望めない、といわれると初診の医者選びはいかに大切か。でも今はがんが残っている状態の人、治療できないがんをもち、傷みなどに苛まれている人に対して医療から差し伸べられる手は余りにも貧弱みたいです。人生はもともと限りあるもの、その豊かさは時間の長さとは別と思えば、充実した時間を過ごすにはどうしたらいいか患者の人生観が問われますし、医療としては患者が充実した時間を過ごせるようホスピスケアを考えなくてはいけません。
どことなくがんと戦うなという近藤誠によく似た議論になるのですが、中川先生も養老先生も東大とはいえ異端児?
実はこの一月で3人の近しい人ががんという話しを聞いてしまい、この本は時選を得ていたというべきなのか、自らの死生観を考えさせられました。150ページほどの活字も大きな本ですのですぐに読めますが内容は深いものがあります。
現在ではがんに罹患しても半数以上の方が治癒(5年生存)できるようになったのですが、初回治療が成功しなかった患者は、数ヶ月か数年で、大半が激しい痛みを経験しながら死んでいきます。
日本人のかかるがんの種類は、冷蔵庫の普及とともに胃がんが急激に減ってきて、欧米のように肺がん、前立腺がんが増えてきています。以前は胃がんが多かったことも影響あるのでしょうが、日本のがん治療は世界一手術偏重です。放射線治療は25%あまりですが、米国ではがん患者の65%が放射線治療をうけています。放射線治療医の養成も進んでいないとのことで、なかなか医師の意識を変えるのも難しそうです。
前段、中川先生が現状を押さえた上で、養老先生との対談になるのですが、これが結構面白い。曰く「自分は死なない」という考えを前提に、医療が成立していることが問題。人間の死亡率は100%。85歳の患者さんの5年生存率とはいったい何なのか・・・。がん患者の何割を完治できるかという教育を受け、医療を行っているが、治らない患者に対してどういう考え方でどういう医療をするか、それが緩和医療なのでしょうが、受け入れてくれる施設も少なく、今は難民のような状態になっている。
何で医療はもっと苦しんでいる人に向かないのか、治らない患者が残された時間を苦しむことなく生きていくのを助ける医療が十分ではない。
ちなみに日本人はモルヒネに対する抵抗感が根強いのですが、経口摂取では血中濃度が急激に上がることもなく中毒になることはないそうです。モルヒネの使用はアメリカ、フランスの4分の1とか。まず目の前の痛みを取ることに全力を尽くすにはモルヒネが必須なのですが、麻薬を呑むと命が縮むと拒否される。実際には痛みを我慢するほうが命を縮め苦しむのにです。根底には治ったら勝ち、治らなければ負けという考えがあって、そもそも人間は死ぬのだというごく当たり前のことを認識しようとしないことからきているのでしょうか。我慢強いのは日本人の美徳のように言われていますが、養老先生曰く「俺は死ぬんだよ」というときに、痛みを我慢してどうするのってことに、当然なりますよ。
ところで中川先生は死ぬならがんがいいといいます。突然死と違って末期といえども残された時間があり身辺整理も出来る。養老先生も中川先生も検診は受けたことがないといわれると・・・・。がん検診はともかく生活習慣病検診も受けないの?ちなみに今の告知のやり方にはお二人とも不満があるみたいで、演出と思いやりが必要で、そこに医師の力量が出るとか。
中川先生は放射線治療医なので、今のがん治療が手術に偏っているのは、大いに不満。がんの種類が乳がんや前立腺がんが増えてきているので当然放射線治療の比重が増えるべきなんでしょう。今はガンマナイフと量子線治療という体に浸襲性の低い方法もあるので、選択肢は広がるべきです。
ところでがんが治る治らないは治療直後にはなんともいえません。判定は5年生存率(前立腺などは進行が遅いので10年)の結果です。がん医療では最初の治療がなんと言っても一番大事で、再発してしまうとまず完治は望めない、といわれると初診の医者選びはいかに大切か。でも今はがんが残っている状態の人、治療できないがんをもち、傷みなどに苛まれている人に対して医療から差し伸べられる手は余りにも貧弱みたいです。人生はもともと限りあるもの、その豊かさは時間の長さとは別と思えば、充実した時間を過ごすにはどうしたらいいか患者の人生観が問われますし、医療としては患者が充実した時間を過ごせるようホスピスケアを考えなくてはいけません。
どことなくがんと戦うなという近藤誠によく似た議論になるのですが、中川先生も養老先生も東大とはいえ異端児?
実はこの一月で3人の近しい人ががんという話しを聞いてしまい、この本は時選を得ていたというべきなのか、自らの死生観を考えさせられました。150ページほどの活字も大きな本ですのですぐに読めますが内容は深いものがあります。