ノンスタイルのボケ担当の石田明の漫才論。結構売れているみたいで、この本も予約してからしばらく待たないと借りることが出来ませんでした。
中学1年生の時に初めて心斎橋2丁目劇場で漫才を見て以来とりこになり、新聞配達のバイトをしながら劇場に通いつめ漫才の台本を書き写していた石田。そこからネタまで書くようになる、ある意味漫才オタクですが、自分自身が漫才をやる意識はあまりなくて高校を卒業して板前見習いになっている。でも中学校時代に知り合った井上に誘われて漫才をやることに。もちろんネタを書くのは石田です。以来ノンスタイルとして活動し、最初は路上ライブから始めて、公開オーデションに挑戦、何度も落っこちながら舞台に立つようになって、2008年にはМー1に優勝、今やベテランの域です。
漫才オタクだけにその漫才論は秀逸。業界内で知られるところとなり、NSCの講師を務め、受講生の中でも人気があり、Мー1の審査員もやるようになりました。
そもそも漫才とは「偶然の立ち話」。ある二人がたまたま会ってしゃべり始める。片方が変なことを言って(ボケ)、もう片方が突っ込む(ツッコミ)。それがどんどん繰り返されるというのが基本形。最近ではここにいろいろな工夫やアレンジを加え、今までの漫才とは違った様々なスタイルがが出てきています。Мー1でも漫才ではないという論争がありましたが、具体的なコンビを取り上げてそのありようと面白さを解説していますが、説得力があります。
漫才の幅が広がったのには、Мー1の影響が大きいというのですが、Мー1で優勝するためには劇場でうけるのとは違った要素が必要で、それは準決勝を勝ち進んでも、会場の雰囲気や審査の方法も違うので、決勝戦に即した戦略が必要です。「上手なだけ」「うけるだけ」ではだめで、一番会場でうけたコンビが必ずしも優勝するわけではなく、審査員がどう判断するのかというのが肝です。審査員もその面では自分の点数に毀誉褒貶を浴びせられることもあって厳しい仕事です。
また、オリジナリティが評価されるので、他のコンビと差別化することも必要で、Мー1で漫才の幅が広がっていったのは事実です。歴代の優勝者の優れていた点、新しい工夫、良かった点も詳しく解説してありますが、これはМー1に挑戦しようとする者の必読本になるのでは。まあ、これからNSCに入ろうなどと思う人も読んでから決めた方がいいと思いますけど。講師としての石田はコンビのいいところを一生懸命見出して育てていく感じで、人気講師というのも分かります。
ノンスタイルとしてのコンビのお互いの方向性の違いから来る軋轢もちゃんと書いてありますが、中学生時代から紆余転変がありながらコンビを組んでいるのは何処か離れられない絆があるのでは。井上が事故を起こして謹慎となるのですが、その直前が関係としては最悪だったみたいで、なぜか謹慎があったおかげでコンビの絆がまた強くなっていったというのは、これはもう腐れ縁?
因みにМー1優勝者よりも準優勝したコンビの方が売れるということについても書いています。実際2008年優勝したノンスタイルよりも準優勝したオードリーの方が爆発的に売れたということがあったのですが、それはテレビ番組にする際に台本を書きやすいかどうかが大きく影響するというのです。台本を書きやすいかどうかはその人のキャラによるのですが、テレビでうまくいじれるキャラの台本を書けるかどうかテレビ局の事情。ネタ番組で漫才をやるだけではないので、ちょっと漫才とは違った事情になります。テレビにどんどん出て人気が出て絶妙なコメントをし、МCとして番組をうまく回していくなどと言うのは、当然ながら漫才とはまた違った才能ということなんでしょう。確か石田自身もМー1の決勝で上沼恵美子から漫才は素晴らしいけどその場のコメントはもう少し磨かないとというようなことを言われたことがあったような?
新書本で読みやすくて一気に読めましたが、中身は結構濃い。お笑い好きの人は現在のお笑い界を見るうえで必読書かも。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます