怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

鷺と雪

2013-01-02 11:37:36 | 
北村薫の直木賞受賞作です。
「街の灯」「はる(漢字が出ません)の天」に続く運転手ベッキーさんシリーズ3部作の最後の本です。

北村薫は既にベテランといっていい作家なので、今さら直木賞と思うのですが、この3部作は良く出来ています。2作目の「はるの天」


も直木賞候補になっていますが、私の読後感では「はるの天」のほうが良かったと思っています。そういうことも含めての第3作の受賞なのでしょうか。
単行本所収の3~4編それぞれが単独のミステリー仕立てになっていますが、全部読むとこの3部作が最初から構想されていたことが分かります。
昭和のはじめの軍歌の響きの大きくなる世相の中、富豪のお嬢様と御付の専属運転手ベッキーさん。博覧強記何でも知っていて拳銃も扱えるベッキーさん。その出自も3部作を読み進めていくと徐々に分かります。ミステリーとしては、よく出来ていますが、なぞ自体は日常何処にもでもあるようなちょっと不思議とか都市伝説といった類です。
それでも北村薫の作品の特徴ですが、時代考証が非常にしっかりしていて、参考文献を見ても、こんな本まで見ているのかと感心します。
しっかりした時代考証の下、徐々に軍部の力が時代を覆っていく中での貴族、華族の暮らしぶりが丹念に書かれていて、貧乏人の育ちの私としては興味深いと共に若干の不快感まで感じます。ベッキーさんのスーパーウーマンぶりはさわやかで、とても魅力的です。魅力的過ぎていくらなんでもこんな人はいないよなと思ってしまいますが、そこが小説の良さですね。
北村薫は「スキップ」「ターン」「リセット」から読み出したのですが、この時の3部作では「スキップ」がいいですね。

同時代として体験したこともあってよく分かるのですが時代考証はしっかりしていますし、なんともいえない切なさがにじみ出ています。
これからも図書館なりで見かけたらフォローしていきたいと思います。
コメント
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