カトリック社会学者のぼやき

カトリシズムと社会学という二つの思想背景から時の流れにそって愚痴をつぶやいていく

映画『夜明けの祈り』を観る

2017-09-22 20:13:17 | 神学

 カトリック新聞推薦ということで、映画『夜明けの祈り』を観てきました。2016年度のフランス=ポーランド映画です。原題は Les innocentes, 英語題名は The Innocents。無罪とか無実という意味なのでしょうか。日本語の題名は 夜明けの祈り。これはよく考えられた良い訳です。ただ単に朝のお祈りという意味ではなく、修道院での「聖務日課」の「賛歌」のことで、日の出の時の「朝の祈り」のことらしい。現在の聖務日課では「1時課」がなくなったので、午前6時のお祈りを指すようだ。そしてこの聖務日課の賛歌の時間帯に、フランス人女性医師がポーランドの修道院のシスター達を助ける話だ。
 時は1945年12月。第二次大戦が終わり、ドイツによるポーランド占領が終わり、代わりにソ連軍が入ってくる。兵士が修道院を襲い、シスター達に暴行を加え、何人かが妊娠してしまう。この修道女達をフランス十字軍の女性医師マルチドが希望と光となって助けていくという話だ。実話だという。一般的に言えば、ソ連軍による集団レイプ事件だが、ポーランドがソ連の傘下に入っていた長い間、表沙汰にはされなかったという。
 ストーリーは別として、これは宗教映画といってよいだろう。身ごもったシスター達の信仰と現実の妊娠との葛藤が描かれる。主人公は医師マルチドだが、彼女が英雄視されて描かれているわけではない。現在でも世界のどこかで起こっている出来事が描かれている。
 わずか半世紀前のポーランドのカトリック修道院の生活を垣間見ることができた。お祈りだけではなく、炊事、洗濯などの日常生活も描かれ、興味深かった。観て楽しい映画ではない。聖務日課の意味がわからなければ、この映画は半分しか理解できないだろう。念のため、新旧の聖務日課の比較表を参考に載せておきました。現在は簡略化されて5課になっているようです。カト研の皆様にはぜひご覧いただき、感想を交換しあいたいものです。

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