事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

新潮1月号

2011-12-09 01:05:32 | 本と雑誌

加賀乙彦幸福の森」(49)-奥さんを葬った後、僕は心臓発作で入院した、ペースメーカーを入れたので5年は生きられるらしい、何とか小説を完成させられるだろう、それじゃ元気でな、若いものどもよ・・・(完)
時代は9.11テロの直後、TVのニュース映像を病院で見ているところで終る、主人公の人生は作者本人よりはるかに波乱万丈かつロマンティックだったらしいけど、さて買って読むほどかと言えば文庫になってもどーかなあ?

この雑誌、来月は買わないと決めた、村田喜代子の連載があるけど単行本になってから買えばよいし、佐伯一麦の続きはだうでもよい、黒川創の連作は・・・まかり間違って買うかもわからんけどたぶん買わんだろな

野崎歓が「スベマヨ」を評してる、ホメてるらしいけどどこをどう評価してるのかサッパリわからん、当然献本されたと思うけど、男は高校教師じゃなかったって結末読んでないんじゃないの?この世界に「読まずの書評」は当たり前ってか、さてもお金をもらって書くということは・・・・・

村田喜代子地の底が抜け申した(じのそこがほげもした)」-15歳のヒロインは店へ出ることになった、ほんとはまだ早いのだが早いところ稼がせた方がよいという店の判断というか打算、そっかそういうこともしばしばあったんだなあ、処女というだけで喜ぶ男はいるからすぐに買い手がついてその体験を彼女は「地の底が抜けた」と表現したのだ、半年は初物として売られるとのこと、2回目以後はウソだがヤボな文句を言う男はいない、ある時硫黄島で知り合いだった男が来てヒロインを買った、お互い散々だった・・・
「心の営みがなかったら女にとって性交は苦痛でしかない」(意訳)とヒロインの作文を読む元遊女の先生は思う、元気溌剌で将来楽しみだった女の子だが男とのセックスを知る「女」になってしまった今後の運命やいかに、ああ、単行本絶対買うからね

佐伯一麦還れぬ家」-私たち夫婦はお母さんに頼まれて年越しの準備をするために実家へ行った、誰もいない家は寂しい、自分たちも飾りつけが終ったらすぐ帰るからストーブも点けない、田舎の一戸建てはとにかく寒い・・・・・
はい、それで?短いご縁でした、お元気で


すばる1月号2

2011-12-08 16:52:16 | 本と雑誌

丸谷才一インタビューby湯川豊-文藝評論集「樹液そして果実」、面白そうだが折口信夫とジェイムズ・ジョイスと来てはいささかむつかしいかも、折口は「万葉集」を現代語訳してるだけじゃなく「日本書紀」も読み込んでた、著書を読んでると元ネタはこれだと「感じるときがある」とのことである、なるほどそれは読みたいな(折口じゃなく丸谷の本を)
ジョイスは映画的手法を小説に応用し開発した、今ジョイス的方法を使わない小説はほとんどないから、ジョイスを読んでない映画人でも間接的に影響を受けてるハズとのこと、なるほどと言いたいとこだけど、ジョイスの「わけわからなさ」は尋常一様じゃないからなあ(って柳瀬訳をチラッと読んだだけながら)・・・・・

そして「源氏」、平安期の一番強烈な思想は「美」、美しいものが尊い、でもって男性もどこか女性的、まあさうかもね、だからヒロイックファンタジーだと思ったら間違うと言うんだ(これ言ったのは私、丸谷と湯川は「プレイボーイの女性遍歴というだけではない」と)
折口は「源氏がなぜ女三宮を引き受けたかというと彼女に財産がついてたからだ、だから左大臣家の柏木にはやりたくないと思ったのだ」(意訳)と言ったとのこと、これは初めて聞いたけど卓見かも、丸谷いわく「折口というヒトはホント隅におけない」
さらに丸谷いわく「源氏の基本パターンは、父親が誰であるかなんて実はわからないものだということ」、それはまさにその通りだと思う、珍しく我が意を得たり!!(こちら)

上野千鶴子ジェンダーで世界を読み解く」(1)-イブ・K・セジウィック(女性)の「男同士の絆」は19世紀のイギリス文学をフェミニズム研究的に読み解いた作品とのことで、これはおもしろそうと期待したが、上野は文学の内容には全く触れず、ホモソーシャル、ホモフォビア、ミソジニー=女ギライという3つの言葉を解説しただけなので、いささか物足りない、本の内容を知りたきゃ読めということか、はてだうするかな


すばる1月号

2011-12-07 23:46:10 | 本と雑誌

辻原登冬の旅」(6)-地震の当日、何とか神戸へたどりつこうと苦闘する主人公たちの救援隊、「淀川を越えんとどこへも行けんのが大阪」とのこと、なるほど地元民らしくリアル、名古屋駅の乗り換えをすっ飛ばした先月の新潮中篇とはえらい違い(なんやろな、阪神間のことは私わからんし)、もうちょっとで避難場所へ着けるというところで中国人の女性を(もう亡くなってることは確実なのにそれを絶対信じない彼女の妹に懇願されて)病院へ運ぶハメになる、今までのこと考えるともうメチャメチャの無理スジで主人公が不運に逢うんだと思うけどここでオシマイ以下次号・・・おいおいホントに来月号も買うのかよー?

藤野千夜ホームメイキング同好会」(5)-ボーイフレンド(同じマンションに住む元同級生)の叔母さんにレモネードを作ってもらい、自分は家でパウンドケーキを作る、延々と作り方の説明(字数稼ぎとしか思われず)、ロボットのいる家には豆柴もいるとのこと、日曜日に彼が(たぶんケーキ目当てに)家へ来て両親に歓迎される・・・ああ、なべて世はこともなし、この先別に知りたくないな

あ、日付変わる前にとりあえずアップ

青山七恵めぐり糸」(3)-私は三年になって置屋の男の子とクラスが変わったが相変わらず彼のことを思い続けていた、夏休みが来て同業者の組合で海へ行くことになり、あの子も来るようにと不動様へ願をかけた、さて海へ着くと蟹を踏み殺し、服を来たまま海につかって溺れかける、彼といっしょに死んだ蟹を埋めようと棒切れで穴を掘った・・・・
とにかくツッコミどころ満載、まずセミをつかまえようとするんだが、それはツクツクボウシだと言う、夏休みの始めつまり7月にツクツクが鳴くかよ、その時期ならアブラゼミか東京ならミンミンゼミだろが、また夜明け前の暗いうちに願掛けしたと言う、あのさ、季節間違えてない?7月末は夏至の頃とほとんど昼の長さ変わってないどころか梅雨が明けるから却って明るいんだよ、夜が明ける前と言ったら午前3時台だろう、ほとんど丑の刻参りじゃないか、そんな時間に小さな女の子が一人で外を歩けるかどうか考えんくてもわかりそうなもんだと思うけど、またある日不動様の前で家の姐さんに会ったがお互い秘密にしたとも言う、そんな非常識な時間に外でお嬢さんをみつけた姐さんは心臓が止まるほどびっくりしたハズ、何も事情を聞かないなんてありえないのじゃあるまいか、ヒロインの年齢すら間違えてない?さらに海での事件、おおぜい(100人ほど)いっしょに来てるというのに服を来た女の子が海へ入ろうとするのを誰も止めない、またビショ濡れのまま浜へ寝転ぶなよ、服が砂だらけになるだろが、蟹は波にさらわれてなかったの?またそうそう都合よく穴を掘れる棒切れが落ちてるもんかなあ
ファンタジーにだって説得力は必要だと思う、私の読む限りこのヒロインは小さい時からアタマがおかしかったか、大嘘つきだが思いっきり嘘が下手なのかどっちかだとしか思えない、これまたあんまし続きを知りたくはならないな


パオロ・バチガルピ

2011-12-06 23:26:01 | SF

Windup_2 日付変わっちゃうからとりあえずアップ、AXNミステリー戦うベストテンにノミネイトされてたから買ったんだったよな、まあいろいろあるけど、ツッコミどころ満載だけど、小説としては行けてるのかなと・・・・なぜか前半だけしかAzonで出ないので二冊並べて写真を撮ってみた、この子が何で「ねじまき」なのかこの絵じゃわからないよね、本の内容を表したそれなりに凝った絵柄なんだけど何か飲んだくれてめんどうになっちゃったので後は明日考えるとしよう、しっかしこの子の服装何なんだろな?

京フェスレポートで大野さんが「エントロピーには何も勝てない」(こちら)というテーマのお話だとおっしゃってるが、私はちょっと違うように思う、確かに石油を使い切ったから車も飛行機も消滅して移動手段は自転車と飛行船(!)と帆船(?)、電気もほとんど使えなくてエアコンどころか扇風機もない(人力でファンを回してるらしい)という状況だけど、タイのバンコクでちゃんと氷を作れる、いったいどうやるんだ、冷凍機ってのはエントロピー減少の象徴みたいなもんて大変なエネルギーを使う機械だと思うけど
またバイオテクノロジーの発達はすさまじく(人類を含む)遺伝子改変動物がゴロゴロしている、今現在、遺伝子組替作物が当たり前なアメちゃんには違和感ないのかもしれないが、またマウスでは記憶力や運動能力を発達させる遺伝子を過剰発現することも今この時点で可能になってるが、しかし大型動物でそれをやろうと思ったらこれまたケタハズレなエネルギーが必要になるハズ、コンピュータを足踏みで動かす世界(ジョークじゃなしに大型蒸気コンピュータも存在する、とんだスチームパンクだ)でどっからそんなパワーを供給するんだよ?
さらに重要な動力はゼンマイでそれを巻くには小さいものは人手(あるいは自転車コギ)を使い、出力の大きなものにはメゴドントという遺伝子改変「象」を使う(カバーイラストにあるのはそいつら)、大型動物を食わせておくのに必要なエネルギーに比べてゼンマイから得られるパワーはあまりにも少ないのじゃなかろうか、また新型の強力ゼンマイを構成する素材とその製造工程というのがナゾだらけで(カバーイラストで少女が乗ってる正体不明のモノがその工場の機械じゃないかと思う)・・・いやこれはいくら何でも実現不可能に近い幻想ということになってた、ここはミステリといえば言えるところなのでネタバレ自粛

さてタイトルの「ねじまき娘」も(某アニメに登場する背中にネジのついた女の子ではなく)遺伝子改変動物である、ご主人様に絶対忠実なメイドあるいは秘書として作られたという触れ込みだったが実は大変な能力の持ち主でしばしば危険な存在になることが後半で明かされる、この辺はいかにもあちらのSFらしいロボットコンプレックス、いやフランケンシュタインコンプレックス、彼女の行動が原因でたちまち街が内戦状態になるあたりは「愚かしく戦闘的」なハリウッド映画的人物造型、確かに映像向きのストーリーだけど映画化されるかなあ、タイと日本(けっこう重要な存在)から猛烈な抗議が行くんじゃあるまいか・・・

とは言え小説としては最初書いたように行けてると思う、起承転結整って伏線もしっかり回収される、個人的にはタフにして貪欲しかしやることなすことハズレばかりな中国人難民の老人がお気に入り、彼をコキ使ってたアメリカ人が工場から発生した新型感染症で死に(あ、ネタバレかも)、彼と健気なタイ人少女が助かったのは説明つかない(何で感染しなかったんだ?)ながらめでたい(最終的に無事を確認されてはいないけど)

しょーもないツッコミ-ねじまき娘のご主人源道様というのはたぶん「エヴァ」からとったんだろうから「ゲンドウ」でよいんじゃないか(玄道もありってそれは「花の応援団」のオヤジさん)、また日本企業のミシモトというのはミシマとミキモトを混ぜちゃったのかと思ったけど、後の方にヤシモトというのも出て来る、たぶんニシモト、キシモトあるいはヨシモトって日本人を知っててアルファベットを一字変えてみたんだろね、今はなさそうな名前でも遠未来にはあるかもしれないからまーいっか、よくある名前をちょっとだけ変えるのってアシモフがよくやってたし(でも違う気もする)

ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF) ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)
価格:¥ 882(税込)
発売日:2011-05-20

 


群像12月号3

2011-12-04 10:58:01 | 本と雑誌

ジョージ・ソーンダース赤いリボン」-幼い娘が野犬に噛み殺された、父親を含む住民たちはもちろん犯犬をみつけて射殺したが、そいつらと接触した飼い犬たちが次々変になる、犬だけではない、猫もおかしくなった、まだどれもヒトを襲ってはいないのだが、何せ小さな女の子が殺されたという事件の印象は強烈で、ちょっとでも様子の変わった動物は始末しようという地域活動に発展し、それがどんどんエスカレートして、ついには全ての動物抹殺作戦へと・・・
どうやらヒトにも狂気が感染してしまったものと思われる、タイトルのリボンは女の子がつけていたもの(のコピー)で作戦の象徴としてだんだん大きくなるのがコワイ、03年初出だそうで、訳者の岸本さんによればイラク戦争(ブッシュ大統領は「対テロ戦争」と言った)開始の半年後という時期を思うと「ひどく象徴的」とのことである、アメちゃんはすぐ銃を持ち出すからなあ-と思ったけどヒトのことは言えないかも

エナ・ルシーラ・ポルテラハリケーン」-ヒロインの私はキューバに住む30代、父は反政府活動家だったらしく人権保護団体に助けられてUSAへ渡った、母と兄貴はすでに亡い、父のところへ行こうと出国許可を待っているが下りる気配はない、超大型ハリケーンが接近した夜に「ある決意」を持ってトラックで家を出て・・・気がついたら病院にいた、トラックは倒れて来た木に当たってオシャカ、たった一人の家族だった弟もその夜によくわからない事情で死んだ、私はまだ出国できない、毎年ハリケーンを待っている
あの晩彼女はいったい何をしようとしたのか、キューバは島だからハリケーンに乗じてトラックで逃げ出せるとも思えない、と言って死ぬつもりだったのなら何もトラックで出なくてもよさそう、ハリケーンの最中に事故って助けられた、病院のTVで被害地域のヒトたちがやたらと元気な様子を映してた-とこのシーンを何が何でも書きたかったのかも、しかし次にハリケーンが来たらどうするんだろ、カトリーナはもうちょっと後だったかな?(本作は06年初出)

松井周土産」-遠未来の地球か、よその惑星かわからないどこか、人類に似た生物が地面に埋まって足から水を吸い上げ髪の毛で光合成している、なぜここに集まってるのかわからない、種から生えたのか、彼らに男女の区別はあるようだが種をつけることがあるのか、その辺も全くわからない、ヒロインの「私」はある時、外から来た男にいきなり引っこ抜かれて運ばれることになる、たちまち歩けるようになって自分が男を背負って運ぶことも、ものを食べて排泄することも、さらには走ったり泳いだりすらできるようになった、私が元気になるのと反対に男はどんどん衰弱する、前に住んでいた場所へ帰るつもりだったらしいが、どうやら迷ったらしく今どこにいるのか、どっちへ行けばいいのかもわからない、そしてついに死の予感・・・・
え、それでどうなるの?いやこの世界って前はどんなふうだったの?男は「抜きやすそうだったから」ヒロインを抜いただけ?彼とその集団(地面に埋まってない光合成人類)にも何かの目的があったんじゃないの?こういうのがおもしろくないとは言わないけど、ミステリ読みとしてはせっかくとんでもない設定を考えついたんだから、もうちょっとストーリーを展開させて「なるほど納得」と言わせてもらいたい、それとも「わからんことは作者もわからん」と放り出すのが純文の作法だってか?ま、そういうのもありかもな

中村文則二年前のこと」-この作者まちがいなくカフカを意識してると先月は思ったけど、今回はえらくまともというか、ホントに小説?エッセイじゃないの?という内容(他のヒトが紹介してるので略)、「作家になるとはどういうことか」なんてもう作家になっちゃってるヒトが今更悩むことかしらん?ただ「暗夜航路」についてだけは賛成というか、あの作品は長男が生まれてすぐ死ぬクダリだけが前後から浮いてリアル過ぎ、それが実体験だったからだと聞かされれば「ああ・・・」と絶句するしかないのである(少なくとも私は)、というわけで(どういうわけで?)これ以上言うことなし

海猫沢めろん二度と食べたくない料理」-とにかくメチャメチャまずそう、昔、林望の「イギリスはおいしい」って本があって、よくまあこんなまずそうなもののことばかしを楽しく読ませるもんだ、芸だなあと感心したんだが、海猫沢のはただひたすらまずそうなだけで別に楽しくはない、ただその「まずそう度」が林とはケタ違いで、やっぱこれも芸の一種なんだろうと思う、あ、でも本は買わないよ

今日とある週刊誌を読んでたら内田樹が「今は誰彼かまわず呪いをかける時代」と書いていた、「批評が文学を傷つけてる」と同じ趣旨だと思う、考えてみればまんざらのマチガイでもないやね、確かに今ネットではお金をもらわないが故の言いたい放題が蔓延してる、私もその一人、これって気に入らない作品を書いた作者に呪いをかけてるんだろか、だとしてそれが悪いことなんだろか、どんな作品でもホメなくちゃいかんのだろか、それはお金をもらって書くヒトの仕事だろ?