路隘庵日剰

中年や暮れ方近くの後方凡走

上り坂炎熱抱いて下り坂

2010年07月03日 | Weblog
 朝は5時には目覚める。
 風呂に入って、朝飯食べたら、やることがなくなる。本日は10時集合だという。
 で、散歩にでる。

 ホテルのあるところはコージマチである。坊ちゃんの清が、お屋敷はコージマチかアザブ、と言った(?)コージマチであるから、今でもお屋敷があるのではないかと思い外に出る。
 お屋敷は、それほどないけれど、高そうなマンションは多い。その中から黄色い帽子の小学生がヒョコヒョコ出てくる。そういえばバンチョー小学校という名門校がこの辺だったな、と思う。道をひとつ変えたら、向こうから女子の集団がやってくる。制服の小学生から、私服の高校生(ひょっとしたら大学生か?)まで女子集団がザワザワ来て、やがてジョシ学院という学校に吸い込まれていく。

 ポツポツとお屋敷にでくわして、それがホントにお屋敷である。ベルギー大使館があって、その前に大きなお屋敷があったから、眺めてみると看板に表千家東京本部とあった。
 それにしてもマヌケなことに携帯を忘れて写メできない。

 ホテルに帰ろうとしていると、ワシの前を低学年らしき小学生が走っていて、それが不意に転倒する。転倒した拍子にあたりにけたたましくサイレンのごとき音がとどろく。どうやら都会の子供は非常ベル(?)みたいなものを携帯していて、それが転んだ拍子になりだしたらしい。その子はすぐに起き上がったけれど、その非常ベルが止められないらしく、路傍に立ちどまってしきりに困っている。サイレンはけたたましく鳴り続け、なんとかしてやりたいが、田舎のオジサンにはなんとかしてやる方法がわからない。どきどきしながら通り過ぎると、近くにいた高校生らしき男の子がやってきてあっさり止める。

 なんか朝からドキドキして、それでなくても朝から暑い。
 ホテルに戻ってもう一度風呂に入る。

                

 本日、午前の部は最近よくテレビにでてくる学者先生。
 あきらかにしょっちゅう講演して稼いでおります、というような出来上がった内容で、客を上げたり下げたり、テキトーに笑いをとりながら、結局ナンだったんだ、という風に終息する。

 弁当のあと、むずかしいハナシを半分以上寝て聞き流し、午後3時前には全スケジュールを終わる。

                

 その後お二人と別れ、ワシは神保町まで一駅歩く。

 暑い。

 ワシ、背広にネクタイだし。
 まさに全身汗の噴水と化して歩く。顔や体を汗が流れ落ちるのがハッキリわかりながら歩く。
 それにしても、道行く東京の人はどなたも汗かかれてないようにお見受けする。ワシはカンゼンに田舎のオヤジとお見受けされているだろうな、と思いながら歩く。

 最初に入った古本屋は(名前失念)文庫が結構充実していて、中公も旺文社も品数多い、でもどれもつけられた価格が総じて高い。ザッと見回して手が出ないので出ようと思ったけれど、足が出ない。クーラーがちょうどいいカンジなのです。
 で、買う気もないのに長居する。

 それから勇気をふりしぼってまた炎熱の通りへ出て、コミガレがあいていたのでさっそく入る。
 ハードカバーでも3冊500円だから、ここでなんとかせねばと思うのだけれど、なんとかできない。ガレージだからクーラー無いんですもの。
 まわりの都会人は平気みたいだけれど、ワシはたちまち汗の噴水と化して本選んでると汗の滴が本に落ちかかる。
 で、まことに口惜しいことながら撤退を余儀なくされ、クーラー求めて神保町古書モールへ。
 ここはこの前来た時割引券もらってあるからそれ使わなきゃ、と思い、さらに涼しいからちょっと粘って数冊。

 そのあと一階おりて三省堂古書館。
 ここも涼しいからちょっと頑張るか、と思ったけれど、なんというか疲れが、というか要するにもうヘロヘロ状態で、集中できない。
 まあ仕方がないから、もう帰ろうかと思って入口の平台を眺めていると、若いオニイサンが入ってきて店員さんに、ここにカサありませんでしたか、と聞く。
 どう見てもこの春田舎から出てきました、みたいな若者で、言葉に九州系の訛りがある。
 店員さんが、どこに忘れたんですか、と聞くと、入口を出た所の階段まで行って、ここです、と指差す。
 何時ごろですか、と聞かれたら、カバンから腕時計を出して、3時20分か、40分ころか、と言う。それなら3時半でいいだろうに、と心の中でツッコミながら、あーあ帰れなくなっちまったじゃネエか、と思う。(ナンデダヨ、と自分でツッコム。)
 どんなカサですか、と聞かれて、普通の、と答え、ビニール傘ですか、と言われて、ああそうです、と言う。
 ちょっと待ってください、と店員さんがいったん奥に入り、やがて出てきて、柄の色は? え? 持つとこの色。あ、黒です。という応対の後、奥から店員さんがおんなじカサを二本持って出てくる。
 オイオイ期待通りの展開かよ、と思って横目で見ていると。
 「どっちですかねえ?」
 「えーと」
 「コッチの方が古そうですね。」
 「えーと」
 「どこで買われました?」
 「えーと」
 というのを、新しい方だと言っちまえよ、と思いながら聞く。
 「あ、なんかこっちに〇〇屋ってラベル貼ってありますよ。」
 「じゃあそれじゃないほう。」というようなわけで決着したらしいのを、正直な若者が金のカサを手に入れたことを祈りつつ聞いておりました。

               

 というわけで、今回買ったのは以下のもの。
 藤森照信『建築史的モンダイ』(2008 ちくま新書)
 野見山暁冶『パリ・キュリイ病院』(2004 弦書房)
新村出『新編 ロウ(王へんに良)カン(王へんに干)記』(1981 旺文社文庫)
 井出孫六『アトラス伝説』(1981 文春文庫)
 斉藤隆夫『回顧 七十年』(昭和62年 中公文庫)
 藤沢桓夫『大坂自叙伝』(昭和56年 中公文庫)

 さて、今度神保町へ行けるのはいつだろう。