路隘庵日剰

中年や暮れ方近くの後方凡走

夜桜の現世の房のうすみどり

2012年04月27日 | Weblog

 4月後半になってようやく桜が満開になった。
 隣の町のコウボウ山が全山桜なのを車運転しながら横目で見る。同じ日に夜桜を川べりまで見に行く。堤を頭上すぐの桜のアーチをくぐりながら往復する。闇にうきあがる満開の桜はこの世のものとも思えない。花を見上げながら桜の樹の下の土中深くを想像した人はやっぱりタイシタものである。

                              

 この間畑でせっせと耕運機転がして、芋や葱植えた。あっというまに草萌え出てきたから一日だけ草取りして火も焚いた。そしたらケッコウな雨も降って、また草だらけになった。

                              

 松本健一『昭和史を陰で動かした男 忘れられたアジテーター・五百木ヒョウ亭(ヒョウは票に風)』(2012 新潮選書)
 松本健一センセイ相変わらずの御健筆。大学教授やって内閣官房参与なんてのまでやって、どんどん本書いちゃうからなあ。五百木ヒョウ亭なんて全然知らなかったけどね。できれば参考文献のっけといてほしかったけど。
 子規の一番弟子というか弟分というか、ともかく同郷の俳人仲間だった人物がジャーナリストを経てアジテーターというか院外団というかフィクサーというか、要するに浪人、というものになっていく。この、浪人、というのが勘所なのだろうが、その実態はよくわからなかった。ともかく、今でも永田町界隈にはこんな人物がたくさん跋扈しているんでありましょう。ただ、昭和史を陰で動かした、かというとどうなのか、これまたよくはわかりません。

 というわけで、あっというまにゴールデンウイークでありますなあ。
 特に読みたい本も手元になく、何する予定もまったくない。天気がよければ草取りでもするか、といつものとおりに月日は流れていくのであります。

                              

 図書館でも行くか。



さぐる腹みる足元や花に雨

2012年04月14日 | Weblog

 このところ2,3日は天気もよく青空爽快。だけど昨晩あたりよりまた雨。風雨ともにけっこうな荒れ様。春の雨はやさしいはずなのにーー、である。

                              

 三上延『ビブリア古書堂の事件手帖1、2』(2011 メディアワークス文庫)
 ツバメの部屋からパクってきて読んだ。ライト・ノベルというのか、作者名も初めて知ったし、メディアワークス文庫というのも初めて手に取った。ライト・ノベルというのも全く初めてだけれど、どういうジャンルということなのかよくわからない。大衆小説とか中間小説とか通俗小説とかいうようなものとどう違うのか。(我ながら連想が古いなあ。)巻末に同系統らしい作家の作品がいくつかラインナップされているが、一人として全く知らない。しかし、この作者のものを含めてけっこう売れてるらしいから、このネット時代に活字媒体というのもそれなりにしぶとく分厚くあるということか。(というような発想自体が相当に古いんだろうね。)

                               

 ビブリオミステリと銘打たれた古本をめぐる推理譚はよくある(?)ところであるだろう。登場するのは『漱石全集』とか小山清の『落穂拾ひ』とか太宰の『晩年』、福田定一、足塚不二雄などというところで、古本というよりはポピュラーな書名。古書の世界にはまさに一冊のチミモウリョーのために平気で生涯棒にふる人間たちがワンサカいるだろうから、それから考えれば確かにライト・ノベルか。まあ均一棚の風情で、というところ、というようなことをグダグダいうところが年寄りの嫌われるユエンだろうが、白状すれば、面白かったぞ、けっこう。
 どうやら最近の若い人はストーリーの展開がうまい、というか展開に抵抗がない、ということなのか、本作で言えば登場人物の設定(それなりに通俗だけど)が決まった段階で物語を転がしやすかったんだろうか。いいカンジに転がってると思いましたです。道具立てである古書の挟み込み方も無理なくてうまいと思った。
 あと、設定でいえば、登場人物がみな親子関係においてナニゴトか瑕を負っている、というのは最近ハヤリなのかなあ。そういうのがないと物語回せなくなってるのだろうかとも思ったけれど、ま、だから年寄りは嫌われる、ということであります。
 ともかく、一気に読めて楽しかったぜ。

 さんきゅう。




春月で鍵穴さがし家を閉ず

2012年04月11日 | Weblog

 ようやく春っぽくなってきた。
 畑打ち初め馬鈴薯植えた。今年は寒かったからなあ。馬鈴薯から畑が始まって、しかし齢とともに野良がよくなる。齢とともに鍬が重くなるが。

 歓送迎会に出たりして4月のカンジだなあ。たまっていた古い書類なんぞをボンボン燃やしたり。

 鳥たちが賑やかになってきた。

                             

 成田龍一『近現代日本史と歴史学 描き替えられてきた過去』(2012 中公新書)

                              

 なんか二枚目の画像がデカクなるのはなぜだろう?別に意図的にやってるわけではないんだけどね。

                               

 ありゃ試みにもう一枚アップしてみたら通常サイズだよなあ。

                                

 ひょっとして本の画像だとデカクなるのか。そんなことあるのだろうか。

 えと、なんだっけ。
 『近現代日本史と歴史学』ですね。
 日本の近現代史を、1945年8月から始まる戦後歴史学、60年代以降の民衆史、80年代くらいからの社会史の3期にわけて、それぞれにおいて歴史がいかに捉えられて、また修正されてきたのか、それを維新から始まって現代まで各時代ごとに腑分けする。史学史ということでいいのだろうか、ともかく、ゆっくり読んで面白かった。
 たぶん、近現代日本史(日本近現代史ではない)を学ぼうとする者にとっては今後必携となるものだろう。なによりも参考文献を一覧するだけで、読むべき本がわかる。初学者、独学者にとっては待望の一冊、大変な労作と思ったことでありました。
 ついでに云えば、さすが老舗新書、300頁近い厚さだけれど造本がよくて片手で丸めるようにして読んでも(寝ながら、ということですね)ページにクセがつかない。柔らかな感触が掌に心地よい良い本でありました。



                               

小路よりヒールの音や四月来る

2012年04月04日 | Weblog

 本来なら畑打ち始めていなければならないのだけれど、今年は寒くて、というところを思い切って出かけて耕運機掛ける。例年よりやはり土が固いというかまだ乾いていないというか重いというか。それでもウントコ押し続け、あと少しというところでポツポツ降り出したので、急いでやろうと思っていたら、ケッコウな降りになってきて、残念ながら途中棄権となる。
 耕運機押して帰ってくる途中からどんどん降りだして、雪まじりっぽくなり、というか風強くなって、なんだか爆弾低気圧というものらしい。夜にかけて報道で見るかぎり列島大変なことになっている。なんだか自然がまたも気持悪い。

                             

 井上寿一『戦前昭和の社会 1926-1945』(2011 講談社現代新書)
 作者戦前三部作で二冊目(に読んだ)の社会篇。
 戦前昭和を三つの観点で要約する。即ち、アメリカ化、格差社会、大衆民主主義。
 目次を書き出してみれば戦前期社会の流れが概括できる。Ⅰ章 昭和の大衆消費社会から始まって、昭和の格差社会、格差是正の試み、カリスマ待望と戦争、と続く。

                               

 つまり、高橋財政によって恐慌を乗り越えた戦前日本に大衆消費社会が現出し、それが格差社会を生む。その格差是正の試みがやがて大衆によるカリスマ待望となって戦争へとつながっていく。
 前冊に続いて目からウロコがいくつか落ちる。
 殊に、大衆の格差平準の期待にもっとも応えうるのが戦争であった、(そういう解釈でいいのだろう)というのは妙に納得させられてしまったことでありました。たしかに戦争というのは原則皆に平等な災禍ではあるな。