どうしようかなあと思いつつ過ぎて、年の瀬になり気が大きくなったのか、結局買ってしまった、『総特集 いしいひさいち 仁義なきお笑い』(KAWADE夢ムック)
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ワシは、いしいひさいちに関して、そのごく初期に、評判や流行や誰かの紹介とかではなしに自分で出合って、自分で見つけて、その後ずっとファンであったという自負があるのである。
もう四十年近く前、都内の某本屋で何気なく、『Oh!バイトくん』を手にとってやめられなくなり、買って帰って読みふけって腹がよじれるほど笑い、ついにここに天才を見つけたと快哉を叫んだ四畳半、なのである。
今回このムックを手にとって、そのとき爆笑したなかでも最も爆笑した四コマの一部が目次のバックに使われていて、涙が出るほど感激し、目が点になる(この言葉もいしい漫画に由来するはず)ほど感慨に耽ったのである。
安下宿共斗会議のバイトくんは送電線破壊の指名を受け、同志の声援を受けて鉄塔に登らんとする。ビビるバイトくんに対し同志たちが「大丈夫だ、命綱を着けといてやる。」と腰に綱をしばりつける。「命綱の端は俺たちがしっかり握っているから落ちても心配ない。」と仲間に言われたバイトくんは、覚悟を決めて、腰に綱をしばりつけたまま鉄塔を登って行く・・・。
で、三コマめと四コマめが以下のふたつである。
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これを読んだとき、ワシはほんとに死ぬんじゃないかと思うくらい笑ったのである。
それまでの起承転結を墨守するだけのつまらない四コマを革命的に破壊し、後進に決定的に影響を与えた見事な傑作と今も信じるが、文章で書いたんではやっぱり面白くないな。
それ以後、ワシは会う人ごとにこの天才の出現を説いたのだけれど、人によってさして面白がらない者もいるのが不思議であった。
そんななかある友人に『Oh!バイトくん』1~3巻を貸して、数日して返してもらい、返してもらいがてら居酒屋なんぞでいしいひさいちを熱く語り、別れて帰宅して数日後、間違いなく返してもらった『Oh!バイトくん』がないのに気付いたのである。どうやら居酒屋に忘れてきてしまったらしい。なんたる不覚!
かくして、ワシはかつては間違いなく所有していた『Oh!バイトくん』という日本文化の金字塔をいまや手にとることができないのである。痛恨の極みであるのである。
その後、いしいひさいちは「タブチくん」によって一躍寵児となり、ワシも十年くらい前までは、出るものを必ず買っていたのだけれど、ナゼだろう、なんとなくオトナになってしまって、最近は全く買わない。
ついでに言えば、絶対に素顔を明かさないとされるいしいひさいちがほぼ唯一マスコミに素顔を晒したとされる、文春漫画賞受賞時の週刊文春もワシは持っていたのである。持っていたのであるのに、ヘンにオトナになったばかりに、あるとき他の雑誌類といっしょに処分してしまった。
とっときゃよかったなあ。
細身の優男であった記憶。