一月七日は人日(じんじつ)。一日の鶏から始まって七日で人に至るらしい。
朝起きてみると、オイオイまたも雪である。
注連飾りをとって、七草粥を食べて、家を出る頃には吹雪。顔を伏せて歩いてもビュウビュウぶち当たってくる。もう、行くのやめようかと本気で思う。
列車に乗って、一時間もしないうちに窓外雪は全く消えて、麗らかな春のよう。車窓から富士が美しい。
東京は曇り。ヤヤ寒い。
集合時間の一時間前には大学について、正面ロビーでコンビニで買ったアンパンを食べて昼食としていると、中から名古屋のNさんがやってくる。今終わったところだと言う。少し話す。ナントカまとめただけで、提出も締め切りの一日前だった由。謙遜なのかよくわからないけど。
30分まえに会場の図書館に入ると、面接室の前で、大阪のNさんが待っているのに会う。挨拶してちょっと話そうかと思っていると、中から滋賀のKさんが終わって出てくる。で、ちょっと挨拶。
部屋の前のストールに座って、中から聞こえてくるNさんの声を聞きながら待っていると、不意に心臓がドキドキしてくる。え、なんで?というくらいドキドキしてきて、おいおいどうしよう、というくらいになる。
そこへ不意にKさんが現れ、話しかけてくる。聞けばまだ二時間も先の順番だというのにモウ来たと言う。この人はいつもなんか間の悪い登場をするので閉口なのである。いろいろ話しかけてくるけど、こちらはドキドキの最中だからただ聞き流していると、Nさんが終わって出てこられる。
大阪の中学の先生のNさんはなんかいいカンジで、小生好きなんだけど、コチラの顔を見て微笑んで、「じゃあ交代です。」と言われたら、なんか落ち着きましたです。
部屋の中では、G先生とS先生が並んでおられて、挨拶をして、S先生が、「それでは、論文の要旨と結論を簡単に仰ってください。」と言われる。
結論なんて別にないんだけどなあ、と思いながらボソボソと。
「それでは、あなたの論文で新たに発見された点などありましたら・・・」
そんなもの特にないんですけど・・・と思いながらボソボソ。
「では、逆にここが未解決だというようなところがあったら・・・」
そりゃあ全編そうなんだけど・・・と思いながらボソボソ。
そのあとG先生が、「なかなかいい文章で・・・」と褒めてくださるのを、文章かよ、と思いながら聞く。
「もっと書きたいことがあったんじゃあないの?」と言われるのを、そうかもしれない、と思いながら聞く。
「あなたが金井に仮託する部分がだいぶあるのではないか」と言われるのを、そうかもしれない、と思いながら聞く。
そのあと両先生から細かな部分の指摘があり、それをホワホワと聞くともなく聞いて、G先生が、あと一部作って送ってください、というのを頭の端のほうで聞く。
「エーとほらほら、あの先生、誰だっけ、あの専門の先生に見てもらおうと思うから、えーと、ナンだっけ名前。」とG先生が小生を見ながら言われるのを、誰だよ、それ、と思いながら聞き、そのあとで、そんな人に見てもらったらタチマチ化けの皮がはがれちまうぞ、と思い直す。
で、そのあと少しだけボソボソ話して、終り掛けに、あ、そうそう、年賀状どうもありがとう、いえいえこちらこそと言いながら立ち上がり、あれ、こっちは年賀状貰ってネエゾ、と思いながら退出する。
出てきたら、Kさんがいて何か話したそうだったのを、無視して図書館をあとにする。
なんだかトロトロと歩いて、もう二度と来ることのないであろう学び舎を出る。
小生関わった学校の中で、もっとも思い入れのあるものとなった放送大学に心より感謝する。
帰りの電車はソコソコ混んでいて、なんだか腑抜けのようになって座って、窓外に広がる青空を見ていた。
そこに、母子らしい二人が座って、中国語で話し出し、その質朴なカンジが好ましく、不覚にも泣きそうになる。しばらくすると、中学生らしきそのニキビの男の子が前に立った老人に無言で立って席を譲り、またしばらくしたら母親のほうも同じように席を立って、そのさまにまたも泣きそうになる。
お茶の水で降りて、さてどうしようかと思ったけれど、これが最後と神保町へ。
日曜日で殆どの店は休みで、幾つか入った店でもナンカ心が虚ろで、書名もうまく目に入らない。
少し散策して、また駅に向かう。
駿河台の坂を上る頃、ちょうど夕暮れで、青空が少しずつ濃くなっていくのを見上げながらまた泣きそうになる。
新宿まで来たら、雪と強風のため電車は大幅に遅れるという。
寒風のホームで震えながら待っていると、ホントに凍えそうになる。
帰り着いたら、そこは全くの雪の世界であった。一日降り続いた雪で、冬眠鼠さん以下家族は大変だったらしい。ほんとうにすんませんでした。
ともかくも、これでオシマイ。
そのような雪の日をもって、このブログも終了。
また新たな旅立ちを期して、では。