物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

岩波講座『現代物理学の基礎』

2013-03-22 12:03:04 | 物理学

湯川秀樹博士が監修した岩波講座『現代物理学の基礎』は重厚な講座本である。

ここ数日、ちょっと用があってこの中(第2版)の『量子力学 I』 の8章 「力学系の対称性」 を見ている。読んでいると書かないのはとても読んでいるとは言えないからである。

ところが、この8章を見ていると引用されている、ある番号の式がどこにも出てこないのに気がついた。それだけではなく、他のところで引用された式の番号もどうも正しくないようである。もっとも私はきちんと読んでいるわけではないので、本当に間違っているかどうかは自信がない。

この8章はもう亡くなってしまった豊田利幸博士が書かれた箇所であり、書き方や意図は悪くないのだが、困ってしまった。

第2版になる前の初版の方を書き換えているために、おかしくなったのかと思って初版を見たのだが、この箇所はどうも第2版になって新たに稿を起こしたらしい。が、こういうことが起こるとは思わなかった。

最近になってこの講座『現代物理学の基礎』は、高額の価格で復刊されているが、この8章は誰かが気がついて修正がされているのだろうか。

小さな傷であり、大きな欠陥ではないのであろうが、どうも気になる。これは著者の責任というよりも編集者の責任ではないのだろうか。

もっとも数式などのある本を1冊でも出したことのある人なら、経験があることだが、校正をいくらしてもなかなかミスプリントとか間違いはなくならない。だが、それが凡ミスで読者でも判断がつくようなものなら、問題はあまりない。

だが、そうではなくてあるはずの式がなかったりというのは単なるミスですむものだろうか。

同じ豊田博士が書かれた古典物理学の箇所を何十年も前に読んだことがある。これは弾性体力学のラメの定数を導く過程であった。これもミスプリントが多くあり、そこを訂正しながら読んだ。しかし、こちらの方は理解にはまったく問題がなかった。その後、第2版が出たときに、調べてみたら、そのミスプリントは修正をされていた。

(2019.3.5付記)上に書いた弾性体力学のラメの定数を導く過程を「数学・物理通信」の8巻10号に書いたので関心のある人は読んでほしい。インターネットで「数学・物理通信」で検索すれば、すぐに名古屋大学の谷村さんのサイトに到達する。

 


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