物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

騒音を消すには

2014-07-28 12:56:24 | 科学・技術

これは最近購入したラ-ソン著(秋山・飯田訳)『数学発想ゼミナール』3(丸善出版)の訳者はしがきに数学者の秋山仁さんが書いていたことの受け売りである。

ある大手電機メーカーでエアコンの騒音をどうやって減らすか知恵を絞っていたが、すべての面で納得できる方法がなかなか思いつかなかった。

その消音担当の専門家があるとき昼食で隣り合った総務部か人事部のある方にエアコンの騒音を消すことができないとこぼしたら、その話を聞かれた方は「逆の音を出せばいいのに」と言われたという。

担当者はびっくりして「騒音を減らそうとしているのに、逆の音を出しても騒音は減らない」と答えたという。アイディアを出した部外者は「いや、音はサイン波か何かだろう。それとちょうど逆の音を出せば、音を消せるのではないか」

この部外者の方のアイディアにしたがって、騒音のないエアコンの開発にめでたく成功したという。

秋山さんはこの部外者の方は文系の人ではないかと書いてあるが、私はそうではないだろうと思う。なかなか波の干渉についての深い理解をされている方だと思う。

私の仕事場のマンションでも騒音に悩む、住居者の訴えを受けて騒音を出さないようにとの張り紙がときどき出る。

エアコンの場合にはいつも決まった波長の音を出すだろうから、その音の逆位相の音波を出せば、エアコンの騒音は消すことができる。

だが、楽器やテレビやラジオの騒音はいろいろな音波の重ね合わせであり、なかなかそれを逆の音で消すことは難しい。

いや、原理的にはどんな騒音でもそれと全く反対の音波をつくりだすことができれば消音ができるはずだが、あまりに多くの波長だとか、振幅だとかが重なってできる騒音は簡単な手段では消すことができない。要するに逆の音をつくることが難しいのだ。

結局のところ騒音を出す源を断つか、騒音を出すのなら、他人に迷惑をかけないようにするには防音壁か何かで断音するしかない。

エアコンの出す音は比較的簡単で定常的なものであったことが音を消すことに成功した理由であろう。