この歳になってやっと知ったことがある。と言ってもたいしたことではない。
例えば、アメリカ大統領はアメリカの議会のメンバーではなく年頭教書の演説には議会に招かれてスピーチをするのだとか、ベニスは島にある都市で、いわゆる陸地から少し離れたところにあるのだとかという他愛ないことである。
それを知ってみたところで人生が大きく変わるわけではない。だが、そういう細かな知識の積み重ねが人生を形作っているのだと思う。
だから、逆に破天荒の発見をする人はそういう既成概念とか多くの知識に惑わされない。
また、それとは一見反するようだが、小林ー益川の理論のように大きく言って坂田グループの雰囲気の中から生まれてきたと思われる業績もある。
話は違うが私の先生の一人であるOさんなども若いときに角運動量の合成の法則、多分Clebsh-Gordonの計算法を知らなくて間違いを犯し、坊主になったとOさんご自身から何回か聞いた。
そしてときどきOさんは「僕などももうかなり既成概念に毒されている」と自省されておられた。