冬が去り、春たけなわの季節を迎えた頃。
日本中の多くの人たちが、気持ちを浮き立たせ、暮らしに弾みをつけたいと思ったその時に・・・・・・。
その心を裏切るかのように、熊本と大分で、天災地変がまた起きました。
せめても、寒さ厳しい冬の季節でなくて良かった、と言えるかもしれないけれど、虚しい慰めの言葉でしかありません。
それにしても、相変わらず受難続きのわが国。
熊本城の無残な姿を見て、しばし呆然となった私です。
学生時代、修学旅行で訪れたときの感動が忘れられず、その後、「大好きなお城」と言って私は憚りませんでした。
十数年前、初孫のR君、夫と三人で、四泊五日の九州旅行に出かけたときに再訪を果たし、感慨に浸ったものです。
熊本城のみならず、倒壊した家は数知れず・・・・・・。
命を落とした方々の無念さ、被災した方々の悲しみや不安を思うと、慰めの言葉も見つかりません。
遅れ馳せながら、心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。
いつもは穏やかで美しい自然ですのに・・・・・・。
宿泊したホテルより見た、郷里の瀬戸内の風景
それにしても、TV画面に映る被災者の皆様の落ち着いた冷静な態度には、東日本大震災の時と同様に、私は感銘を受けています。
被害を受けられた方々のショック、恐怖、悲嘆は想像を絶するものでしたでしょうに。
私には、同様の態度で臨む自信など全くなくて。
恐らく腰が抜けて、一歩も動けなくなってしまうのではないでしょうか。
夫がいなくなった今、一人ぼっちの恐怖は、相当なものかもしれません。
東日本大震災の時は、我が家も激しい揺れに見舞われました。
けれど、被害を受けるほどではなく、私は二階に駆け上がる心の余裕がまだありました。
夫の書斎へと一目散。
そこには、いつもとさして変わらない表情の旦那さまの姿がありました。
その平静な夫の様子を見て、どんなに私の気持ちは落ち着いた事でしょう。
今また、このような地震が起きても、私が救いを求めたくなるような場所は、この家にはもうありません。
我が事はさておき、このたびの地震で驚いたのは強い余震の多さ。
本震と思っていたマグニチュード7の地震が、そうではなく、その翌々日に襲った地震が本震であったこと。
その地震が、広域にさらに広がり始めたこと。
かってこのような事があったでしょうか。
大地震が来ても、それが収まると、私たちは、ひとまず安堵し心を落ち着かせることができましたね。
もっと大きな地震がわが身を襲うなんて、考えないことでしょう。
ところがこのたびの地震で、その思考は、今後通用しないことが分りました。
「再度、大きな地震に見舞われるかもしれない」という恐怖を、抱き続けて暮らさなくてはならないなんて。
心の疲弊は、限りないものになってしまいそうです。
天災地変が襲うたびに、私は思い、慄然となります。
自然の猛威の前では、人が営々として築き上げた文明も、尊い人命すらも、いかにもろいものであるか、と。
私が住む地域も、娘たちが幼い頃から、大地震の予兆があると、一番言われ続けてきたところです。
ですから、このたびの天災も、とても他人事とは思えません。
熊本地震が起きる数日前にあった友人とのお食事会の席で、私は地震について触れたばかりでした。
「大地震に遭う前に死んでしまいたいわ。
私は地震で命を落としても、さほどの無念さをもう感じないかもしれないけれど・・・・・・。
万一の事があって、若夫婦家族の不幸を見るのは堪えられないから」と。
わが家からほど近い所に住む次女のMちゃんとは、東日本大震災後、その対策を、いろいろ話し合ったことがあります。
交通インフラが遮断され、共働きの夫婦が我が子の許にすぐ帰れなかった時の事です。
私が、小学校と保育園で待機している孫たちを迎えに行き、娘のマンションを避難場所として、そこで若夫婦の帰宅を待つ、というものでした。
マンションの庭の隅に、備蓄倉庫まで用意してあるようです。
その話を聞いたころは、まだ夫の体調はさほど悪くありませんでした。
けれどその後、病がますます重くなり、夫のマンションへの移動は困難に。
そのため、どうしたらよいものかと、わたしは途方に暮れているところがありました。
けれど、今は夫がいません。
如何に臆病な私でも、「火事場の馬鹿力」に似たエネルギーを発揮して、余震が続く不安な状況でも、きっと孫を迎えに必死で学校や保育園に向かうことでしょう。
そしてマンションで、娘夫婦の帰宅を待つことになるのかもしれませんけれど。
その後、待てど暮らせど若夫婦が戻ってこない。
音信も不通・・・・・・
そんなことを想像するだけで、気持ちが滅入ってしまいそうです。
受難続きのわが国を見ていると、もうあまり長生きはしたくないなあ~
早く旦那さまのところに行きたいなあ~
そんな気持ちになることも、時にはあるけれど・・・・・・。
孫たちを守るために、この老体でも役立つときが来るのかもしれません。
そう思って、もう少し頑張りましょう。
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花のように泉のように