月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

そうだ、行こう。

2013-01-25 | 
なんだかとても疲れていた。

最近、少し動き回ると疲れが出る。なんとも情けない話だ。
出張から帰った翌日は、とりあえず3日間たまりきった家のホコリをきれいに取ることから始めた。
部屋がきれいだと気持ちも明るくなる。

久しぶりに本屋へ行き、かなり長い時間をそこで過ごした。気づけばもう夕方だった。

購入したのは、
1、黒田夏子『abさんご』
2、百田尚樹『永遠のゼロ』
3、湊かなえ『夜行観覧車』
以上3冊。

まだ図書カードの残高があると思っていたのだが、店員さんに「図書カードに11円ありますので、引かせていただきますね」と言われたときは、ちょっと顔が赤くなった。
11円って……!

1はこの間も書いていたように、作者に興味を持って読んでみようと思った。
2も前から読みたかったのだ。こういう本がベストセラーになるとは!日本は確かに右傾化しているのかもしれないな。
3は購入予定になかったのだが、この間、たまたまこの原作のドラマを見てしまったのだ。まったく予備知識はなかったが、途中まで見て「湊かなえっぽい?」と思って調べたら、やっぱりそうだった。
最終回まで見たところで到底ハッピーになれるとは思えなかったので見るのをやめようとしたが、ストーリーの続きが気になる。つい第二回も見てしまった。
で、私が選んだのは、ドラマを見るのをやめて原作を読んですっきりしてしまえ!という方法。

湊かなえはとにかく人間の嫌な面を書かせたら日本一である。
寂しさ、怒り、恐怖、嫉妬、虚栄心、殺意、無関心……、とにかく人が誰しも持っていながら隠したいと思っているような嫌な面を赤裸々に綴るのだ。
ハッピーからはほど遠い気持ちになるが、なぜかストーリーを追うことをやめられない。
これがこの作家のすごいところでもある。

とりあえず本屋から帰って『夜行観覧車』を一気読みした。結構分厚い本なので、3、4時間はかかったと思う。
やっぱりスッキリとはしなかった。
なんだかモヤモヤした気持ちのまま週末を迎えそうになったので、楽しいことを企画した。

奈良のお寺&地酒巡りである。

水曜日に東京へ行くとき、京都駅で新幹線に乗ろうと思ったら、エスカレーターの横に観光ポスターが貼ってあるのに目が行った。
『そうだ、京都へ行こう。』シリーズかと思ったら、奈良編の『いま、ふたたびの奈良へ』『うまし うるわし 奈良』シリーズだった。

キャッチコピーは

――ただひとりの天女。

秋篠寺の伎芸天が佇んでいる。

奈良は大学も通っていたし、それなりにいろいろ散策はしたのだが、秋篠寺はまだ訪れたことがなかった。
行きたい行きたいと思い、すぐそばの西大寺には足を向けるものの、なぜか行く機会に恵まれなかった。
縁がない?
いやいや、縁は自分で作るもの。
完全なるパクリだが、「そうだ、奈良へ行こう」と思い立った。
こういうのは思ったときに行くのがいい。

東京から帰ると、堀辰雄の『大和路』を書棚から探し出した。
大学3回生のとき、一時期夢中になった堀辰雄。ゼミでの研究もちょうど堀辰雄だった。
確かこの『大和路』の一説に伎芸天のことが書いてあったと思い出し、久しぶりに手に取ってみた。

やはりあった。

「いま、秋篠寺という寺の、秋草のなかに寝そべって、これを書いている。いましがた、ここのすこし荒れた御堂にある伎芸天女の像をしみじみと見てきたばかりのところだ。このミュウズの像はなんだか僕たちのもののような気がせられて、わけてもお慕わしい。朱い髪をし、おおどかな御顔だけすっかり香にお灼けになって、右手を胸のあたりにもちあげて軽く印を結ばれながら、すこし伏せ目にこちらを見下ろされ、いまにも何かおっしゃられそうな様子をなすってお立ちになっていられた。……」

これを読むと、もうどうしても秋篠寺へ行かなくてはという気持ちになって、早速ツアー計画を立てたのであった。
どんな奈良ツアーになったかは、また次回。