月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

キング・オブ・ケトル

2013-01-17 | 生活
私の友達は知っている人も多いと思うが、私はずっと純銅のケトルを使っている。
一人暮らしをする時にどうしても欲しいものを全部そろえたのだが、その中の1つがこれだった。

イギリスのシンプレックスというメーカーの熟練職人によるハンドメイド。
オールドファッションタイプの純銅100%ケトルだ。
ウィリアム王子とケイト妃の結婚式の引き出物にも選ばれたという。
イギリス王室をはじめ世界中のセレブからの評価も高い。

「銅」は熱伝導がよいのだが、底に集熱コイルが入っているため、さらに熱が早く伝わりあっという間にお湯が沸く。
紅茶好き、ポットが苦手(沸騰したお湯を長時間置いておくということに嫌悪がある)の私にとって、「早くお湯が沸く」ということはとても魅力的だった。

そして、それ以上に魅力的だったのが、美しいフォルム。
「オールドファッションタイプ」というだけあって、アンティークな香りがする。
細身の注ぎ口とボディとのバランスが素晴らしい。
たかが「やかん」。
なのに、見ているだけで嬉しくなるなんて。

使い勝手も非常によく、お湯が沸くと「ピィーーーー」と鳴いてお知らせしてくれる。
決して吹き零れない。
どんなに熱く沸騰しても、ハンドルを手で持てる。
蓋がしっかりとはまるので、決してずれない。

何から何まで素晴らしく、私の中ではキング・オブ・ケトルだったわけだ。

しかし、購入してから15年。
毎日毎日お湯を沸かし続け、いよいよ底のコイル部分がボロボロになって欠けてきた。
使用は可能だが、コンロに置くとグラグラする。
また、銅の宿命だが、とにかく手入れが面倒。
たまに磨くと元の輝きを取り戻すが、少し使うとすぐに錆びのような色がついてくる。

確かにそんな面倒はあるけれど、それでも自分にとっては最高のケトル。
これ以外を使う気持ちはない。
「一生もの」と思って購入し15年使用してきた。
ただ、底のコイルの欠けたのだけが気になるので、近々同じものを買い換えたいなぁと思ってネットで探してみた。

それが、な、なんと2010年にメーカーが製造を中止したらしい!
日本で取扱っていたウィリアムズソノマが撤退したため、もともと輸入でしか手に入れられなかったので高くなったのは知っていたが、製造中止によって「超レア」「入手困難」の文字も踊り、ものすごい値段がついている。
ネットでいろいろ検索したところ、一番高いものでは6万円台だった!

今のところ、一番安くてコレ↓
http://www.california-direct.com/product/511

29,400円也・・・

当時、私が買った時は15,000円くらいだったように記憶しているので、2倍になっている。
これは今の私には買い替えは無理だ……
でも、今買わないと、そのうち出回っているものもなくなり、もう二度と手に入らないのだろうな……
そう考えるとなんとも悲しい。

そういえば、サンビームのポップアップトースターも欲しくて欲しくてずっと探していたのだが、こちらも製造中止に。
たまたまもんちゃんが栃木の雑貨屋さんで見つけて「これちゃう?!」とメールしてくれ、購入することができたが。

コレです
http://tominet.com/sunbeamtoaster.html

同じポップアップでも、今はもっと機能的に優れたものも販売されているし、フォルムだってアンティーク風にされているものもあるから、何もこんな古いトースターを選ぶ必要はなかったのだけど。
でも、自分にとっては特別な思い入れがあり、「いつか買いたい」と思い続けてきたトースターなのだ。
使い勝手は最高とは言えないが、それでも使うたびに嬉しくなる。

どうしていいものが製造中止になるのかな。
世の中が便利になっていくから、古いものが切り捨てられるのは仕方ないのかもしれないけれど、なんだか淋しいことだ。
どうせ使うなら機能性だけにこだわるのではなく美しいものを使ったほうが、生活は豊かになると思うのだけどなぁ。

ずっと忘れたくない「用の美」の心。
ものは生活の中で使われてこそ美しい、という考え方。

おそらく買い換えることはできないであろうケトルは、本当に「一生もの」になってしまうのかもしれない。
が、それもまたよろし。
グラグラするくらいは我慢しよう。