遺産分割の審判に対し,2週間以内に相続人の誰からも異議が出なかったことにより審判は確定しました。そして,審判の対象となったものはその割合により,対象とされなかったものは法定相続分により払戻請求をすることになります。
そこで,相続人の一人を代表相続人として今回相続分の払戻金入金専用口座を作成し,そこに全員の払戻金を一旦入金した上,相続分に応じた金額を各人の口座に振り込む方法を提案し,払戻手続きの当職への委任を呼びかけました。
ところが,3人から委任が得られません。内2人は相続分を要らないと言い,1人は自ら行うから委任しないというのです。
要らないと言う方には,相続分譲渡証書に署名・実印押印をしてもらえるかと聞いてみても,具体的手続に協力してくれずはっきりしません。相続分をいったん受取った後,贈与する方法もありますと提案しましたが,結局,本件相続には係わりたくないと言い始めました。
いつまでも待っていても仕方ないので,委任された方のみで払戻を行うことにしました。こうなると,金融機関により対応がまちまちです。
すんなり委任を受けた者の相続分を払い戻してくれる所もあれば,委任を行わなかった者に対し,「遺言や遺産分割協議の成立はない」ことの確認を求める文書を発送する所,代表相続人以外の全員に対して,万一紛争が発生した場合責任を持つ旨の文書の提出を求める所もありました。
遺産分割の調停があれば,全相続人に通知が行くはずで,仮に遺言や遺産分割協議の成立があったならばそのことを調停上主張すると思われます。にもかかわらず,それが主張されずに審判が確定したということは,遺言等が無かったと推定できるのではと思います。
は,金融機関の善管注意義務の問題だと思われるのですが,無いことが容易に推定されるのであれば,そのまま払戻に応じても,債権の準占有者に対する弁済と認められ,相続人に対し,ことさら責任を負う旨を確認する必要はないと思うのですが。
本件のように,相続人が各地に散らばっていて一堂に会することができない場合,結果的に書面のやりとりを何度も行うことになります。
意味の無い書類を徴求する金融機関より,最低限の法律的な問題をクリアして,後は請求者の便宜を図る姿勢の金融機関方が,優れた対応であると思いました。
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