実務上最も困ったことは,先買権行使の資金とするローンの借入が容易でなかったことでした。 限定承認をしますと,自宅はいったん法定相続分による相続登記を行います。
しかしながら,自宅の所有権は,債権者に対する債務の弁済の引き当てとなる不動産のため,勝手に売却することはできず,原則競売による方法になります。 但し,相続人のみ不動産鑑定士による鑑定額以上の金額で買い取ることができます。
この場合,買受人を除く法定相続人から買受人に対する持分移転登記の申請をし,登記原因は「民法932条但し書きによる価額弁済」となります。 もっとも,取得者には通常の相続では発生しないはずの持分移転に対する不動産取得税が課せられる不利益があります。
この一連の手続きは,通常,法定相続人の持分の売買に等しいのですが,持分を失う売主に代金が支払われるのでは無く,当然ながら相続財産管理人の口座に入金されることになります。
今回,たまたま不動産の買主と相続財産管理人が同一人でした。銀行にとっては,買主にローンの実行金が渡される感覚になり,通常の住宅ローンが使えないようでした。
個人としての買主と相続財産管理人は,氏名が同じでも立場が異なる別人格です。買主は仕方なく,住宅ローンでは無く金利の高いフリーローンを借りざるを得ませんでした。
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