亀田司法書士ブログ

越谷市の亀田司法書士事務所のブログです

遺産分割協議は一人ではできない

2014-09-04 17:19:11 | 遺言・相続

登記の仕事をしていて,何故?何の実益があるの?と思うことがあります。先ず,民法の規定から紹介します。民法898条 相続人が数人あるときは,相続財産は,その共有に属する。民法909条 遺産の分割は,相続開始(死亡)の時にさかのぼって効力を生じる。

 さて,父母(夫婦)・子が一人の家族。父名義の土地について,先ず父が死に,遺産分割協議(遺産分けの話し合い)を行わないまま,次いで母が亡くなりました。この場合,生存している子が,当然,この土地を単独で相続します。つまり,夫の死亡日を原因として,子が相続した旨の登記を行えばよいと考えるのが普通でしょう。ところが,そうは行かないと考える人(登記)の理屈があるのです。

登記制度は,実体関係を忠実に登記簿に反映させる方針を採っています。例えば,売買でA~B~Cと所有者が代わった場合,Aから直接Cに所有権移転登記をすることはできず,実体どおりBの所有権移転を経由して登記をする必要があるのです。

これは,相続の場合にも適用されますが,例外として相続の場合は,祖父A~父B~子Cのように,祖父の相続登記を行わないうちに父が死んだ場合,中間つまり祖父の相続について,相続した者(法定相続人が複数いても協議により)が一人の場合に限って,〔祖父死亡日・父Bの名と死亡日〕を原因として,一気に子C名義に登記ができます。

ですから,祖父の相続の際,父Bと父の兄弟例えばD二人が 祖父の不動産を相続したような場合,祖父の相続につき,父BとD共有の相続登記を経て,父Bの持分を子に移転登記をする必要があるのです。

これを前提に,事例において,子が一人だから一人では協議ができないと考えれば,協議がないのだから,民法898条により,父の不動産は,亡母と子の共有に属すると考える余地があるのです。

すると,中間の相続人が亡母と子2名だから,亡母と子共有名義の登記を省略して,父から直接子名義の相続登記をすることができないとする結論になってしまいます。これには,違和感を感じます。

何故なら,子は亡母が父の遺産分割協議を行う権利を相続するのだから,事例とは異なり父母(夫婦)に子が2名(CとEとしましょう)いた場合には,子2名で父の遺産の分割を,亡き母の分も含めて,例えばCが取得するとか,CとEが共有で取得するとか協議して決めることができるのです。そして,遺産分割協議は相続開始時にさかのぼるため,母は一度も父の遺産を相続したことにならなくて,直接CあるいはCとE共有名義の登記ができるのです。

違いは,夫婦に子が複数存在するか否かだけなのです。一人では協議ができないとすることは余りにも形式的に過ぎると思います。一人っ子に対する差別のようにも感じます。

ですから事例では,子Cが母の分も含め自分が全部を取得すると決めることができると考えれば良いのです。(もっとも一人の場合,他に法定相続人がいないのですから決める必要もないと思いますが)

亡き母にいったん法定相続分である持分2分の1を相続させても何の実益もないと思いますし,亡き母も一度自分が相続したとの認識もないでしょう。いずれは,子のものになるのだからこのままにしておきましょうと思っていたはずです。でも,いったん法定相続による登記をすべきだと考える人がいて,有力誌にこの論考が掲載されたため,法務局に照会しました。

その結果,一人で決めた旨の遺産分割決定書(実印押印・印鑑証明書添付)を付けてくれれば,直接登記ができるとの回答でした。でしかし,この取り扱いはあくまでも,照会先の法務局の取り扱いであって,他でも認められるとは限らないとのことでした。

私達司法書士は,法律に従って業務を行うべきです。しかし,法律には趣旨というものがあって,その法律が適用されるにあたって意義ある(有益な)ものでなければならないと思います。

法の規定は,協議を行わない場合には,法律の割合によって取得する権利があるよということで,その権利を主張しないまま亡くなった人は,この人を相続した者に権利の処分を任せている(任せざるを得ない)のです。ですから,協議という日本語の字面にとらわれず,一人であろうがなかろうが,相続した者が全てを決めることができると考えるのが筋だと思います。

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