140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

名古屋フィル#114ロット交響曲

2021-12-18 21:03:32 | 音楽
第496回定期演奏会〈川瀬賢太郎のロット〉
カゼッラ:三重協奏曲 作品56
ロット:交響曲ホ長調

聴いたことのない曲はいつもYouTubeで予習をしている。
今回は二曲ともマニアックな選曲ということでファンは入念な予習を強いられるのであった。
今度の定期演奏会の曲は何だっけ? ハンス・ロット? 誰? というところから始まるのであった。
不勉強で申し訳ないが、そんな作曲家は知らない。YouTubeで検索してみると幸いにも曲は見つかった。
動画を再生してみる。これはいったい? 何度か聴いてみて今度は作曲家の素性を調べる。
「オーストリアの作曲家。生前は恩師ブルックナーと学友マーラーから賞賛されていた」と書いてあった。
そして二十五歳という若さで没している。
第三楽章はマーラーの交響曲第1番のスケルツォを連想させる。いや、そっくりではないか?
だがこの曲が書かれたのは1880年でマーラーが交響曲第1番の作曲を始めたのは1884年とされる。
その1884年にロットは亡くなっている。ブラームスに「才能がないのだから音楽を諦めるべきだ」と
言われたことが原因で精神を病み、精神病院に収容され、最後は結核で亡くなったと伝えられている。
ロットの残した交響曲の自筆譜はマーラーが所持していたという話もある。
ブラームスの認めなかった学友の才能にマーラーが何か特別なものを見出していたかもしれない。
譜面の意味するところを理解し密かに温めていたマーラーがやがて自身の交響曲として結実させる。
ブルックナーがベートーヴェンから引き継いだ交響曲の系譜をマーラーが引き継ぐまでの過程に
二十五歳で亡くなった無名の作曲家が何かしら関与していたのではないかという確信を
この曲を聴いたなら想像せずにはいられない。
日の目を見ずに亡くなってしまった学友の作品を懐に抱いて、その作品の真価に誰よりも先に気付いて、
その延長線上に誰も打ち立てたことのない新たな交響曲の形式を夢見る後の大作曲家。
その姿を勝手に思い浮かべてなんだかとてもわくわくしてしまった。
私たちは素晴らしい音楽を聴きにコンサートホールを訪れるのだが、
作品に比べるとあまりに脆弱な生前の生身の作曲家の気質に触れることで、
これが疑うことなく人間の所為であることを思い知り、
そこに音楽を聴くのとはまた別の喜びを見つける。

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