140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

名古屋フィル#134ベルク ヴァイオリン協奏曲『ある天使の想い出に』

2023-11-21 12:57:41 | 音楽
第517回定期演奏会〈死と継承〉
ベルク:ヴァイオリン協奏曲『ある天使の想い出に』
細川俊夫:光に満ちた息のように
ワーグナー:歌劇『ローエングリン』第1幕への前奏曲
R.シュトラウス:交響詩『死と浄化(変容)』 作品24

アルマ・マーラーが、再婚したグロピウスとの間にもうけた娘マノンをベルクはたいそうかわいがっていたということだが、そのマノンは18歳で夭折してしまう。
その『天使』に捧げるものとして、このヴァイオリン協奏曲が作曲されたと伝えられている。
曲は1935年8月に完成されたが、その後ベルクは敗血症にかかり、同年12月に急逝した。この曲は彼自身のレクイエムと言えるかもしれない。

存在している者が意に反して消滅させられる。それはとても理不尽なことに思える。
地球より重いと言われることもある人間一人一人のかけがえのない命は、数十年の猶予の後に、例外なく召し上げられる。
ずっと存在していたいと思っても、その願いが叶うことはない。不本意であっても、いつか自分が失われてしまうという事実を受け入れねばならない。
不満を口にしても聞き入れてくれる者は何処にもいない。
それでも生きていたことを覚えていれくれる人がいれば、その『想い出』の中に人は生き続けることができるのだろうか? 
私が死んだとしても、かつて私が生きていたことを覚えていてくれる人がいれば、私は完全に消滅する訳ではないのだろうか? 
だが、想い出を胸に生き続ける者がいたとしても、その者もいつかこの世界に存在する権利を剥奪されてしまう。
私たちは何て悲しい宿命を背負って、この世に生まれて来ているのだろう? 
そういうことがわかっていても私たちは生き続ける。
一切が無駄になることがわかっていても私たちの感性が働きを止めることはない。
そこで感じる喜びや哀しみこそかけがえのないものだと信じて、限りある人生を精一杯生きるしかない。
この曲を聴いていると、そんな気がして来る。

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