日本庭園こぼれ話

日本の歴史的庭園、街道、町並み。思いつくままに
Random Talks about Japanese Gardens

依水園からの散歩道(上)=依水園~ささやきの小径・・・奈良市(改編)

2020-12-06 | 古道

同じ古都でも、京都と異なり、奈良には名勝庭園の数は多くありませんが、この庭園は奈良屈指の池泉回遊式庭園と言われ、借景の妙を味わえる名園です。

広い池のほとりに立って見渡せば、池に打たれた沢飛び石が、前景を引き締め、対岸には、こんもりとした築山。その向こうに、中景として東大寺南大門の瓦屋根と参道の並木、さらにその先には、遠景として若草山、春日山、御蓋山のなだらかな稜線の連なり・・・。

ここでは、庭の内と外との境界を意識することなく、視線がリズミカルに導かれ、雄大な広がりが目に飛び込んできます。それが借景の効果です。

依水園の総面積は約4、000坪。前園(下の写真)と後園(上の写真)から成り、前園は、江戸時代(17世紀後半)の作と伝わり、後園は明治32年、奈良の晒(さらし)業者、関藤次郎の構想に基づき完成されたということ。

前園と後園は景色の趣が違うのですが、風雅な滝組が、地形の高低差とともに、2つの景をつなぐ役割を果たし、全体として1つの大回遊式庭園をつくりだしています。

植物が冬枯れの今の時期は、庭を観賞するには、適していないと思われるかもしれませんが、実は庭の骨格を観賞するには、絶好の機会です。

依水園を拝観した後は、奈良公園に向かいます。奈良の市街地に隣接して、東西約4キロメートル、南北約2キロメートルの広大な面積を占めるのが奈良公園。若草山を背景に、東大寺、春日大社、興福寺、などなど著名な古社寺が点在しています。そうそう、人なつっこい鹿さんも有名ですね。

この奈良公園を散策しながらの寺社巡りもいいし、春日大社の二の鳥居から続く「ささやきの小径」を抜け、あと2キロほど先の白毫寺まで足を伸ばしても、味わい深い散歩になると思います。

上の写真は、春日大社の摂社、若宮神社前のクスノキの巨木。神功皇后お手植えの木と伝わるもの。奈良を歩くと、古代にまで遡る土地の記憶の豊かさを実感します。

そして下の写真、鬱蒼とした森の中に延びる1本の小道は、かつて春日の神官たちが、春日大社に通った道で、「下の禰宜(ねぎ)道」が正式名称ですが、誰がつけたか、「ささやきの小径」と呼ばれています。

春日山原生林の裾野に位置するこの森は、古代からのカシやシイの巨木が繁茂し、春にはアセビの花が足元を彩るという照葉樹林。密生した樹木に陽光も遮られ、昼でも薄暗い中、時折、差し込む木洩れ日が、名画に見るような光と影のコントラストを演出します。

 

500メートルくらいの小道ですが、行き交う人も少なく、繁茂した木々が空気を浄化してくれるのでしょうか、清澄な空気に満たされ、心が癒されます。

・・・つづく・・・

 


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