日本庭園こぼれ話

日本の歴史的庭園、街道、町並み。思いつくままに
Random Talks about Japanese Gardens

『百草画荘』・・・洋画家・小島善太郎記念館

2014-07-26 | 美術館

小島善太郎は、明治25年生まれの洋画家。不遇な少年時代に画家を志し、後に大成、昭和59年に91歳で他界するまで、日本洋画界の重鎮として、意欲的な創作活動を続けた----と案内にあります。

善太郎は、昭和46年、東京都日野市百草にアトリエを構え、最晩年を過ごしました。

ここでご紹介する「百草画荘」は、平成25年、ご遺族により、その住まい兼アトリエと、残された作品、遺品などが日野市に寄贈され、「小島善太郎記念館」として一般に公開されることになったものです。

近所でもあり、この話を知って以来、ずーっと行きたかったのですが、開館が土曜、日曜、祝日に限られているため、なかなか実現せず、先日やっと訪問できました。

交通の便はあまり良くなく、京王線百草園駅から、歩いて約20分。途中、かなり急な上り坂が続きます。

なので、この案内板を見た時には、ほっとしました。

ここから道を下って、すぐ左手に記念館の入口があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしアトリエの入口は、もう少し先。石段を上ります。

(上: 苔むした石段と周りの緑に清涼感)

 (上:アトリエ=記念館の入口)

 

展示室は、15、6畳くらいでしょうか。一歩足を踏み入れると、

数十点の絵やオブジェや工芸品などが、

一気に目に飛び込んで、密度の濃さに圧倒されました。

 

この記念館は、ボランテイアの方たちによって運営されているそうですが、これらを日野市に寄贈するにあたり尽力された、小島善太郎画伯の次女の方(素敵なおばあ様です)が、善太郎の生い立ちや、画家になるに至ったいきさつ、彼を支えてくれた庇護者の方々、作品にまつわるエピソードなどを、温かい口調で説明してくださいました。

「ほら、この絵の花瓶がこれですよ」 「この絵を描いた時にはね・・・」などなど、エピソードがいっぱい。小島善太郎ワールドが広がっていきました。

展示室内が撮影OKというのも、珍しいのではないでしょうか?

(下: 展示室に付属する茶室)

 

 

 玄関脇は芝庭で、建物が高台にあるため、庭木の向こうに広々とした空の広がりが望まれます。

 

     

広い庭ではありませんが、裏木戸や飛石の表情にも風情が感じられます。

 

庭の一角に据えられた石碑には「桃李不言下自成蹊」の文字と、小島善太郎が好んで描いた桃の絵が刻まれています。

これは「絵は人なり」をモットーにした善太郎の座右の銘で、「桃やスモモはもの言わざれど、下自ら蹊(こみち)を成す」すなわち「優れた人格を備えた人の周りには、その人を慕って自然に人が集まってくる」という意味だそうです。

美術館では味わえない、画家の温もりが感じられる空間です。

※ アクセスその他、詳しくは小島善太郎記念館公式HPなどをご参照ください。http://hino-museum.org/zentaro/

※ 問合わせは、日野市まちづくり部文化スポーツ課へ: ☎042-585-1111(内線3811)

 

 


奥入瀬渓流こぼれ話・・・十和田湖伝説

2014-07-17 | 番外編

奥入瀬渓流の水の源である十和田湖。十和田八幡平国立公園の中心として、毎年、大勢の観光客で賑わうこの湖は、約20万年前の大噴火により陥没した二重式カルデラ湖で、湖面標高は401mということです。

 

湖に伝わる言い伝えを繙けば、昔々、マタギであった八郎太郎という若者が、ある時、仲間の掟を破り、奥入瀬川で捕まえたイワナを一人で全部食べてしまったところ、猛烈に喉が渇き、川の水をどんどん飲んでいるうちに、龍に変身してしまったそうです。そこで龍になった八郎太郎は、十和田湖を創り、その主になりました。

時代下って、およそ千年前、修験行者「南祖坊」が、熊野権現のお告げにより、この湖に堂を建て、大願成就の暁に十和田湖の主になろうとしたところ、古くからの主の「八郎太郎」が大いに怒り、両者の壮絶な戦いになったとか。

結局、南祖坊の勝利となり、敗れた八郎太郎は秋田に逃げ去り、南祖坊が十和田の主となります。

この伝承に、大和民族による土着民の討伐の歴史を重ねる見方もあるそうですが、湖畔の十和田神社が、平安初期に蝦夷討伐に功績があったという坂上田村麻呂によって創建されたと聞けば、その話も頷けます。

一方、秋田に逃げた八郎太郎は、そこに八郎潟を創ったと言われ、さらには田沢湖の主・辰子姫をも巻き込んで、東北三大湖を舞台にした壮大なドラマが、この地に伝わっています。湖の神秘的な美しさが、こうした伝説を生むのでしょうか。

* 詳しい伝承はHP『三湖物語』『三湖伝説』などをご参照ください