日本庭園こぼれ話

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Random Talks about Japanese Gardens

城南宮・楽水苑---京都

2012-02-13 | 日本庭園

近鉄線竹田駅から案内図に従って20分ほど歩くと「城南宮」です。このあたりは、平安時代後期、白河上皇が造営した鳥羽離宮のあったところ。その広大な敷地の西端近くを占める城南宮は、上古、神功皇后が軍船に立てた旗を納めたと伝わる古社。

桓武天皇による平安遷都に際しては、都の守護神と仰がれ、方除け大社として、古来より信仰を集めてきました。「菊水若水」と呼ばれる湧き水は、東大寺のお水取りとの関わりも伝えられるものです。

寝殿造りを思わせる壮麗な社殿を囲むように、「楽水苑」と名付けられた神苑があり、各時代を特徴づける様々な様式で構成された五つの庭園が連続しています。作庭は中根金作氏。

 苑内に入ったすぐのところにある「春の山」は、文字通り、春の草木が植えられ、早春にはシダレウメが見事です。

本殿の裏手から広がる部分は「平安の庭」。遣水が庭を縫うように流れ、春と秋には、ここで平安朝の優雅な遊び、「曲水の宴」が再現されます。

参道を横切った先には、「室町の庭」と「桃山の庭」。この二つの庭園が楽水苑の五つの庭のうち最初に作られたもので、造景的にはもっとも見応えがあります。昭和29年~35年にかけての作庭です。

(上: 「室町の庭」は池泉回遊式庭園)

「室町の庭」は池泉回遊式。池を巡るに従って現れる滝石組や三尊石、蓬莱島などの石組と、手入れの行き届いた樹木が、心地よい景色をつくっています。

(上: 池の複雑な汀線により多彩な景色が展開する「室町の庭」)

対する「桃山の庭」は、広々とした芝生を海に見立て、そこに一群のソテツの「島」を配し、前面に点在する岩島、背後には波濤を表す大刈込みを添えた、モダンで豪快な意匠です。ソテツは冬期の保護のために、ワラで囲われていましたが、春にはまた違った姿を見せてくれることでしょう。

(上: 斬新な意匠の「桃山の庭)

隣接する「城南離宮の庭」は、この地が華やかだった時代を偲び、離宮の建物と庭園の様子を石組と下草でイメージした枯山水庭園です。玉砂利が池、リュウノヒゲが覆う部分は陸地、石組は殿舎を表現しているそうです。

苑内全体を潤す澄んだ水が印象的な「楽水苑」です。

(上: 鳥羽離宮をイメージした「城南離宮の庭」)