日本庭園こぼれ話

日本の歴史的庭園、街道、町並み。思いつくままに
Random Talks about Japanese Gardens

多摩森林科学園・・・東京都八王子市

2023-05-04 | 散策

東京都八王子市、高尾山麓にある丘陵地の1つに位置する多摩森林科学園は、以前は「実験林」と呼ばれていたように、「森林に関する研究機関」で、国内外から集められた様々な種類の樹木が植えられています。

そこで一番有名なのは、「日本全国の主要なサクラの栽培品種などが約500栽培ライン、1400本」が植えられているという「8ヘクタールの広さを持つサクラ保存林」ですが、興味のある方は、本ブログ・2023年3月18日をご参照ください。

 

 

(上:4月半ばのサクラ保存林)

 

そして、サクラの花が終わった、新緑のこの季節。お薦めは、サクラ保存林に隣接する「7ヘクタールの樹木園」です。

そこには、国内外の樹木が、「約500種、6,000本」が植えられているそうで、3つの区画に分けられ、第1樹木園には、針葉樹、第2樹木園には、落葉樹、第3樹木園には、外国産の樹木と、それぞれの樹木が、特徴的な景観を見せています。

 

 

 

入園すると、そこは緑の世界。

そんな中を進むと、要所、要所に、樹木の解説板は、もちろんのこと、そこに生息する野鳥、昆虫、動物などの解説板も設置されていて、勉強になると同時に、楽しめます。

 

 

中には、イノシシスポットや、サルに注意の案内板も・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

丘陵地帯なので、道は山道です。ちょっと息切れが・・・

上から見ると、桜園保存林は、もう緑一色

 

 

でも、所々に初夏の花が・・・

ホオの花も・・・

そして、ミズキの花も・・・。かなりの大木と思われます。

新緑の季節の森は、様々な緑色のハーモニーです。

 

* 多摩森林科学園

開園時間 = 午前9時30分~午後3時30分 (4月は午前9時~午後4時)

入園料 = 5月~3月: 大人300円、子供50円 (4月は大人:400円、子供150円)

      年間パスポート = 1200円 

      ただし、入口前にある「森の科学館」のみの見学は無料

休園日 = 原則、毎週月曜日(例外もあります)

園内ガイドツアーもあります

問い合わせ = 森林総合研究所 多摩森林科学園

http://www.ffpri.affrc.go.jp/tmk/

アクセス = JR高尾駅北口(または京王高尾駅)から徒歩10分

 


パワースポット in 弥彦・・・新潟県弥彦村(改編)

2021-04-07 | 散策

これまで、このブログでも何度かご紹介してきた新潟県弥彦村は、越後一宮・弥彦神社の門前町として発展してきました。

(上: 高く聳える杉並木に囲まれた弥彦神社参道)

弥彦神社の御祭神は、天照大神の曾孫にあたる「天香山命(アメノカグヤマノミコト)」で、万葉の昔から、人々の信仰を集めてきたと語り継がれています。

(上: 弥彦山を背景に建つ弥彦神社拝殿)

「佐渡弥彦米山国定公園」の一環として、観光地の要素は様々ありますが、今回ご紹介するのは、パワースポット。「おやひこさまから、スピリチュアルなパワーをもらおう」と、観光パンフレットのキャッチコピーにありました。

「パワースポットその1」は、もちろん弥彦神社。深い森に囲まれた神域は、荘厳な雰囲気に満ち、足を踏み入れただけで、パワーをもらえそうです。

(上: 境内の一画に並ぶ、天香山命の子孫が祀られている摂社)

境内には、「パワーストーン」(下の写真)もあります。宝物殿の前にある「火の玉石」というもの。地元では、「重い軽いの石」とも呼ばれるそうで、まず願い事を心に思い描き、石を持ち上げて軽く感じれば「成就」。重ければ、叶うことが「難しい」とか。

 

「パワースポットその2」は、弥彦神社の背後に聳える弥彦山山頂にある「御神廟」。奥の宮と呼ばれるこの地には、弥彦神社の御祭神と妃神が祀られれています。

標高634m(東京スカイツリーと同じ高さ)の弥彦山は弥彦村のシンボル。

その向こうに広がる日本海に面して、天香山命が上陸したと伝わる野積海岸があります。沖に見えるのは佐渡島。

登山はちょっと・・・という方には、ロープウエイがおすすめ。(車なら、スカイライン利用も・・・)

山の上からの眺めは、絶景。眼前に広がる日本海。水平線の向こうには佐渡島

振り返れば、広大な越後平野

「御神廟」までは、ロープウエイ山頂駅から、700mほど山道を歩きます。

途中には、急坂もありますが、全体的には平坦な道で、徒歩15分ほどで到着

 

御神廟には、弥彦神社の祭神「天香山命」と妃神が仲良くお2人で祀られているので、縁結びの名所としても知られているとか。

ここからの眺めも素晴らしいので、お参りの後は、目の保養をしてください。

 

そして「パワースポットその3」は、弥彦駅に近い公園の裏山にある「湯神社」。弥彦温泉発祥の地で、温泉の神として信仰されています。

弥彦駅に隣接して広がる公園の裏山にあり・・・

公園の高台にある広場から、本格的な参道が始まります。

一本道なので、迷うことはないと思いますが、最初は、並び立つ鳥居が目印

その後は、赤い幟が目印となります。

最後に石段を下ると、その先に湯神社が・・・

湯神社到着

湯神社は、別名を「石薬師様」といいます。神社にお供えされている「石」で、身体の悪い部分を撫でると治ると言われているからです。

地元では、湯神社よりも、石薬師様を縮めた「いっしゃくさま」という呼び名が最も親しまれているかもしれません。

参道周辺は樹木が多く、夏は蚊が多いので、訪れる時期としてのお勧めは春秋です。弥彦公園は、モミジの名所なので、特に秋は、紅葉も一緒に楽しめます。

 

「パワースポットその4」は、温泉街に点在する弥彦神社の末社です。

まずは「祓戸(はらえど)神社」。昔、弥彦への本街道入口にあたる位置にあり、不浄な物の怪の侵入を防ぎ、訪れる人の罪や汚れ、過ちを「祓い除く」と言われています。

実は、ここは子どもの頃の遊び場でした。当時は「パワースポット」という言葉は、聞いたことがありませんでしたが、知らない間に「スピリチュアル・パワー」を授かっていたかもしれませんね(笑)。

 

「住吉神社」は、水難からの加護を願い祀られたもの。ご神木のケヤキの巨樹は、樹齢800~1000年、高さ30m、幹周り8m。

 巨大なタコが8本の足を広げたような枝振りを見せているところから「タコケヤキ」と呼ばれていますが、残念ながら、タコの足にあたる枝は、伸びすぎたためか、途中で切られてしまっていました。

それでも、幹の巨大さは、大蛸のイメージを彷彿させます。

 

余談ですが、「住吉神社」から「上諏訪神社」に行く途中には、「聖人清水」という湧水スポットがあります。

親鸞聖人の霊力で水が湧いたと伝わる泉で、今も渾々と水が湧いています。

 

「上諏訪神社」は、武勇に優れた神を祀り、災いを防ぎ、農耕の神としても信仰されているそうです。

 ここにもケヤキの巨木が・・・

 

さらに、火防(ひぶせ)の神を祀る「火宮神社」と、上諏訪神社と同じ神を祀り、相撲にゆかりのある「下諏訪神社」が加わります。

(上:下諏訪神社)

これらのスポットは、いずれも人家が立ち並ぶ中にある小さな一画ですが、そこだけは結界の中にあるかのような、特別な空気感に包まれています。守護神のように聳え立つ巨木や、社を囲む木立が、そうした雰囲気の創出に一役買っているのかもしれません。

(上: 祓戸神社=樹木の存在が、スピリチュアルパワーを増幅させているかのよう)

 

そしてこの他に、弥彦神社の近くにある「宝光院」があり、合計6箇所が「パワースポット4」として数えられています。

宝光院の境内裏手に聳え立つのは、「婆々杉」という杉の巨木。樹齢1000年を超えるそうで、新潟県の天然記念物に指定されています。この「婆々杉」にまつわる伝説については、以前ご紹介しましたので、興味のある方は、本ブログの「婆々杉=巨木の話(1)(2021年9月10日)」の項をご一読ください。

 

※ パワースポットと弥彦観光の詳しい情報は、弥彦観光協会HPをご参照ください。 

 

 

 

 

 


見どころいっぱいの聖なる小島・江の島

2013-07-18 | 散策

神奈川県の相模湾に浮かぶ小さな島、江の島。江の島といえば、弁天様が有名で、安芸の厳島弁財天、琵琶湖の竹生島の弁財天と並んで、日本三弁財天のひとつに数えられています。

アクセスに一番近い駅は、小田急江ノ島線の「片瀬江ノ島駅」。竜宮城をイメージしたような駅舎を出ると、江の島はすぐ目の前。全長600メートル余りの弁天橋が、島へのアプローチです。

江の島は島全体が、門前町といった感じ。島の入り口から、参道が続き、その細い道の両側に、ぎっしりと土産物店や食堂が建ち並んでいます。

少し歩くと、赤い鳥居の向こうに、辺津宮(へつみや)。浦島太郎の絵本に出て来る竜宮城の門のような建物が印象的です。

島内には三つの宮=「辺津宮」「中津宮」「奥津宮」があり、これらを総称して「江島神社」と呼ばれています。

江の島縁起は、「昔、この辺りに悪龍がいて、人々に災いをもたらしていたところ、6世紀半ば、欽明天皇の時代に、大地の震動とともに、海上に島が出現し、そこに天女が降り立ち、龍に教えを説いて悪いことをやめさせた。以来、江島明神として祀られるようになった」と、弁天信仰の起源を伝えています。

しかし、史実としての江の島信仰が確立されるのは、鎌倉時代のこととか。

辺津宮境内にある「福石」にまつわる話を一つ・・・。

江戸時代に鍼灸を学んでいた杉山和一は、その上達を願い、弁財天に祈願していたところ、ここで大きな石につまづき、転んで気を失ってしまった。その時、弁財天が現れ、気がついた後、竹筒に松葉が入ったものを拾い、そのことから「管鍼術」を考案し、五代将軍綱吉の病を治療して、関東総検校の地位にまで昇ったというもの。

以来、ここで物を拾うと幸運が授かると伝えられ、つまづいた石は「福石」と呼ばれるようになったそうです。

さて、頂上まで続く神社の参拝には、たくさんの石段を登らなくてはなりません。そこで「エーッ!」という人のためには、エスカレーターも設置されています。

頂上には植物園と、灯台を兼ねた展望台があります。(下の写真は、ヨットハーバーの眺め)

 

江の島は、海岸の方から眺めると、円盤のような形に見えますが、実際は、真ん中がくびれた瓢箪形をしています。植物園から先は、そのくびれた部分に当たり、絶壁が両側から迫る地形は「山二つ」と呼ばれています。

その原初的で、荒々しい風景は、ここまでの江の島のイメージを一変させるかのようで、カラフルだった風景も、セピア調に変わり、何となく、安らぎさえ覚えます。

その先にあるのが奥津宮で、そこを過ぎると、道は海岸へと下って行きます。

海岸は、千畳敷のように平らな岩盤が広がる海食台地。背後は絶壁で、そこに波の浸食でできた洞窟があります。

この洞窟は「龍の棲み家」とも言われ、江の島信仰のルーツは、ここに始まったとされています。弘法大師など多くの行者がこの洞窟に籠って修行し、源頼朝が戦勝祈願に訪れたとも。

「お岩屋」と呼ばれていたその洞窟は、落石事故のため昭和46年以来閉鎖されていましたが、平成5年に再整備され、公開されています。第一岩屋(奥行152m)と第二岩屋(奥行56m)から成り、霊場であった当時の様子がギャラリーで紹介されています。

 

 

 

 

 

 

 

    

第一岩屋の突き当たりには柵がしてありますが、行き止まりではなく、まだ先にも続いていそうな雰囲気。向こうからは、かすかに風が吹いてくるような・・・。実は、この洞窟は、富士山に通じていると言い伝えられているのです。

第二岩屋の方は、入った途端、ガォーッ、ガォーッという獣の叫び声のようなものが聞こえて来ます。不気味さを感じながら奥に進むと、最奥部には、稲妻に照らされた龍が!

 

約3時間の江の島散策。この小さな島は、今では俗っぽい様々なものもいっぱいですが、聖なる島の面影は、決してそれに負けてはいません。それは江の島が、弁財天という艶っぽいイメージの神の島だからかもしれません。

弁天橋から岩屋までは、遊覧船もあり、晴れていれば、相模湾に浮かぶ富士山が見えるはず。


自然教育園---東京都港区

2011-11-05 | 散策

「国立科学博物館付属自然教育園」という長い正式名称を持つ、通称「自然教育園」は、都心の一等地にあるとは思えないほどの自然が、広大な面積を占めています。

地下鉄南北線「白金台」駅から徒歩5分(またはJR目黒駅から徒歩7分)。目黒通りに面して鬱蒼と繁茂する森。一歩足を踏み入れると、目の前に展開する樹木の高さと密度に驚かされます。

 

(上: 深い森に縁取られた園路)

この地の歴史を遡れば、室町時代、「白金長者」と呼ばれた豪族が館を構えていたとされ、江戸時代には、高松藩主・松平讃岐守の下屋敷。明治時代には陸海軍の火薬庫となり、大正時代には白金御料地と変遷。

こうした経歴により、一般の人々が中に入ることができなかったために、都心にありながら、かつての武蔵野の自然が手付かずの状態にある、貴重なエリアが残されたといいます。自然教育園として公開されるようになったのは、昭和24年のこと。

 

自然教育園の面積は約20万平方メートル。「白金長者」の館の名残と伝わる土塁で囲まれ、その上には、当時植えられたというシイの巨木が林を形成しています。

道端に可憐に咲く山野草を愛でながら園路を進めば、都会の喧噪は次第に消えて、郊外の森を散策しているかのよう。

 

(上: 大都会の真ん中に残る武蔵野の自然)

園の構成は樹木園、路傍植物園、奥には水生植物園となっている湧水池や湿地帯、水鳥の沼などがあり、まさに武蔵野の動植物の宝庫。

(上: 都心にいることを忘れさせる静寂)

極相林への変遷を見る林も興味深く、園路の途中には、江戸時代の下屋敷の庭に植えられた松の巨木が残り、「物語の松」「大蛇(おろち)の松」と命名され、傍らの「ひょうたん池」とともに、過去の記憶の断片を伝えています。

(上: その名の通り、過去の歴史を物語る「物語の松」)