日本庭園こぼれ話

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Random Talks about Japanese Gardens

白神山地(1)・・・ブナの森に点在する「十二湖」(改編)

2020-06-07 | トレッキング

青森県と秋田県にまたがる世界最大級という広大なブナの原生林が、鹿児島県・屋久島とともに、日本で初めてユネスコの世界自然遺産に登録されたのは、1993年(平成5年)のことでした。世界に誇れる貴重な動植物の宝庫がここにあります。

先年、白神山地の西の玄関口・十二湖と暗門の滝をめぐる、1泊2日のハイキングツアーに参加しました。

現地ガイドさんの案内で、ハイキング開始。初日は、ブナの森の中に点在する湖沼を巡ります。

(上: 早くも森の精気が伝わって来るブナの森の入口)

十二湖と言っても、実際には33の湖沼群の総称で、これらは1704年の大地震により、付近の「崩山」が崩壊した時に、堰き止められた川から形成されたものとか。これが何故「十二湖」と呼ばれるのかというと、地滑りを起こした「大崩」から眺めると、12の湖沼が見えるからなのだそうです。

森はブナを中心に、サワグルミ、カツラ、ホウなどで構成される落葉広葉樹林。自然歩道に足を踏み入れると、足元は腐葉土でフカフカ。とても足に優しい小径です。

(上: 天然のエコサイクルで、多様な生態系を育むブナの森)

歩き始めるとすぐに「鶏頭場(けとば)の池」が見えてきました。十二湖の中でもっとも面積の広い池で、複雑な汀線が鶏の頭の形に似ていることが名前の由来。(下の写真)

さらに歩いて行くと、なにやら甘い焼き菓子のような香りが漂っているのに気がつきました。ガイドさんによれば、これは「カツラ」の木が黄葉する時に発する香りなのだとか。ここは、地元の人々にとっては、暮らしの森。有用木や根元の山菜、キノコの説明を受けながら森の奥へと進みます。

小径は上り坂となり、やがて斜面の中腹から下を見ると、本日の目玉?「青池」がありました。

(上: 眺めていると、吸い込まれそうな気分になる青池)

名前の通り、湖面はインクを流したような青色。この青の色が天候や時間によって変化するのだそうです。この日は曇りのためか、深いネイビーブルーでした。透明度も高く、周囲の木々を映した水面に、水底にある枯れたブナの木が透けて見える様は神秘的。小さい池ですが、十二湖のシンボルと言うにふさわしい存在感です。

風の強い日だったため、森を通る風が木々の枝を揺らし、頭上から聞こえる音は、不思議なことに、海の波の音を連想させました。そんな中を歩き、「長池」、ブナの倒木が横たわる涸れ池の「四五郎の池」を見て、「金山の池」に到着です。

(上: 水が涸れている四五郎の池。しかし雪解けから8月頃までは、水があるという)

「金山の池」は湖沼群の中では大きい方で、対岸には「崩山」。300年前に崩れた痕が、いまだに生々しい山肌を見せています。

(上: 金山の池の背景は、十二湖の誕生の元となった崩山)

この後、「子宝の池」を経て、休憩所のある十二湖リフレッシュ村で昼食タイム。

午後の目玉は「日本キャニオン」と「沸壺の池」です。

「日本キャニオン」は、長い年月の間に崩壊と浸食が繰り返されて、白い石灰岩が露出した絶壁。その姿がアメリカのグランドキャニオンを連想させることから、名付けられたということですが、アメリカ人の観光客には「ベビーキャニオン」だと笑われたとか。

 (上: 石灰岩の白い肌が、異様な雰囲気を創出している日本キャニオン)

 確かに「ベビーキャニオン」ではありますが、崖が間近に迫る展望ポイントからの眺めは、かなりの迫力。自然が創り出した異次元空間を見る思い。山肌の白さは雪山と見紛うほどで、そこに深い襞が刻まれています。

その後は「玉池」「越口の池」「中の池」「落口の池」などの展望が連続する車道を進み、再び森の中へ。「沸壺の池」を目指しました。

この池は、湧水が流れ込み、先ほどの「青池」同様、澄んだ青色の水面が見られるというので、楽しみにしていたのですが、途中で突然の雷とドシャブリの雨。池を観賞できないまま、大急ぎで帰途につき、この日のハイキングは終了となりました。残念。

全行程約9㎞、ゆっくり歩いて、約5時間の散策でした。

・・・つづく・・・ 

 


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