日本庭園こぼれ話

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小江戸・佐原・・・千葉県香取市(改編)

2022-02-03 | 歴史を語る町並み

『小江戸』の定義は、「江戸と関わりが深い町」「江戸の風情を残す古い街並みを残している町」とのこと。

千葉県の北に位置する「佐原」は、江戸時代に、利根川水運の中継地として発展した商業の町であり、その面影を今に伝える町並みが、平成8年(1996年)に、関東では初めて「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。

佐原はまた、日本で最初の実測地図を作った伊能忠敬の出身地でもあります。JR成田線佐原駅の駅舎を出ようとすると、足下に「伊能忠敬の歩幅」と記された足形がありました。その歩幅は約70センチ。かなり大きい歩幅で、日本全国を歩き回って実測したのですね。

駅から10分足らずで、保存地区のある小野川べりに出ます。歴史のある家々が、忠敬橋を中心に川沿いと、川と直角に走る道路に沿って並び、統一感がありながらも、それぞれ個性的な外観を見せてくれます。

(上: 風格のある構えを見せる中村屋商店)

忠敬橋のたもとにある「中村屋商店」は、安政2年(1855)建築という、荒物、畳表、雑貨商を営む店。二階の手摺り部分の金文字看板がお洒落。

その向かいには「旧油惣商店」。明治期建築の木造総二階建ての店舗に、寛政10年(1798)建築と伝わる、佐原で最古の袖蔵が隣接しています。

その並びの「正文堂書店」は、明治13年建築の、防火に有効な「店蔵」という土蔵造りの建築様式。明治25年に大火があったためか、ここでは土蔵造りの建物が多く見られます。

正文堂書店では、龍の彫刻のある看板が見事。昔の看板は味わい深く、町並み景観に一役も二役も買っているのに、現代の町では、看板が景観を損ねる存在になっているのは何故でしょう。

(上: 正面に龍の彫り物がある看板)

続いては、そば屋を営む「小堀屋本店」、隣が「福新呉服店」。同じく千葉県有形文化財に指定されている歴史的建造物で、それぞれ、代表的な佐原の商家建築を伝えています。 

忠敬橋から小野川に沿って、趣のある建物を眺めながら上流に向かうと、前方に木橋が架かっています。「樋橋(とよはし)」と名付けられた橋ですが、一般には「ジャージャー橋」と呼ばれています。

(上: 昔の水路橋を復元した「ジャージャー橋」は、その水音で風景を引き立てている)

元々それは、江戸時代の初期以来、佐原村の灌漑用水を、小野川の東岸から西岸に送るために架けた水路橋だったそうですが、その時に用水があふれ、滝のように川に落ちる様を現代に再現したのがこの橋。

ジャージャーと流れ落ちる心地良い水音は、環境省選定の「日本の音風景100選」に選ばれています。また、この橋自体も、国土交通省選定の「手づくり郷土賞」を受賞しています。

樋橋の両側には、伊能忠敬ゆかりの建物があります。伊能忠敬は日本地図をつくった人として有名ですが、それは50歳で隠居してからのことで、それまでは、養子で入った伊能家の当主として、佐原の名主・村方後見を務め、家業では醸造業や船運業に励んでいたそうです。

その店舗と母屋が樋橋の東のたもとに残されています。また、橋をはさんで対岸には、「伊能忠敬記念館」があります。

伊能忠敬記念館の見学の後も、町歩きマップを片手に、古い家並みの見学を続け、今度は小野川の東岸を戻って行くと、「いかだ焼本舗」の暖簾を下げた「正上(しょうじょう)」の建物が見えてきます。

ここは、江戸時代の店構えと、明治の袖蔵、その隣には石造りのファサードがモダンな大正時代の建物と、それぞれ様式の異なる三棟の建築が並び建ち、佐原の重伝建地区の中でも、ひときわ目を引く景観を創っています。

(上: 三時代の建物が並ぶ正上の店前は、時代もののロケ地としても人気)

正上の創業は寛政12年(1800)。油屋から醤油醸造業を経て、現在は佃煮の製造販売をしています。

小野川の川岸のところどころには、、船の荷物の積み降ろしに使われた「だし」と呼ばれる石段と船着き場がついていて、水運の盛んだった当時を彷彿させます。また親水空間の演出としても、なかなか効果的。

(上: 「だし」と呼ばれる船着き場)

佐原の町並みを歩きながら、まるで時代劇のセットのよう、と思ったら、佐原はロケの町としても人気だそうで、上記「正上」の店内には、見たり聞いたりしたことのあるドラマのパネル写真が、所狭しと飾ってありました。

忠敬橋から小野川を離れ、先に進むと、赤いレンガと白い花崗岩の壁面が美しい洋風建築。大正3年に建てられた旧三菱銀行で、現在は観光客の休憩所として利用されています。

その手前にあるのが「中村屋乾物店」。重厚な明治の店蔵造りを見せるこの店は、二階の観音開きの土戸に「勝男節」「諸國乾物類」「祝儀道具」などと彫られた大きな木の看板が嵌め込まれて壮観。

(上: 重厚な店蔵造りの中村屋乾物店。隣の現代建築にも、町並み景観を損なわない配慮がされている)

佐原の伝統的建造物群保存地区の魅力は、多くの商家が昔からの家業を受け継ぎ、今も現役であり続けている、いわば「生きた町並み」であることで、そこに価値があると言えます。

 

* 本文は、最情の情報ではありません。ご訪問の際は、公式HPなどでご確認ください。


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2 コメント

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Unknown (名無し)
2022-02-03 12:48:14
香取市です。
Unknown (jun)
2022-02-04 09:36:19
ご指摘ありがとうございました。

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