日本庭園こぼれ話

日本の歴史的庭園、街道、町並み。思いつくままに
Random Talks about Japanese Gardens

日本庭園ランキング・・・外国人の視点から(2017年度版)

2017-12-02 | 日本庭園

アメリカの日本庭園専門誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』は、「しおさいプロジェクト」と題して、日本庭園のランキングを発表しています。

その2017年度版の上位20庭は、以下の通りです。

①足立美術館(島根) ②桂離宮(京都) ③湯村常磐ホテル(山梨) ④御所西・ 京都平安ホテル ⑤山本亭(東京) ⑥養浩館(福井) ⑦無鄰菴(京都) ⑧ 佳翠苑・皆美(島根) ⑨栗林公園(香川) ⑩庭園の宿・石亭(広島)⑪二条城二の丸庭園(京都) ⑫皆美館(島根) ⑬大濠公園(福岡) ⑭二条城清流園・和楽庵) ⑮玉堂美術館(東京) ⑯頼久寺(岡山) ⑰湯の宿・長楽園(島根) ⑱松田屋旅館(山口) ⑲白河院(京都) ⑳依水園(奈良)  

少し驚かされたのが、20庭のうち、なんと8庭(③④⑧⑩⑫⑰⑱⑲)が旅館の庭だということで、以前より数が多くなっています。

ここでの選出基準が、庭園美だけでなく、建物との調和や維持管理、利用者への対応などもポイントとなっているそうなので、このような結果になっているのかもしれません。そして、足立美術館が発足以来、連続で第1位を獲得していることも頷けます。

ベスト20のうちのいくつかの庭園については、このブログでもご紹介したことがあるので、まとめてみました。

⑳依水園は、奈良屈指の池泉回遊式庭園。東大寺のすぐ近くにあり、市街地の中では珍しく、借景の妙を味わえる名園。

同じ古都でも、京都に比べ名園の少ない中、貴重な存在と言えます。

 

⑯頼久寺は、城郭のような外観が特徴的な寺院です。

庭園は江戸初期の作庭で、築庭の巨匠として名を馳せた「小堀遠州」作。海に見立てた白砂敷きの中に、鶴島と亀島をデザインした典型的な禅院式蓬莱庭園ということ。

なんと言っても景のポイントは、ダイナミックなサツキの大刈り込み。大波のように、うねりながら押し寄せてくる様に目を奪われます。

桃山時代の豪快な手法と、江戸時代の洗練された意匠が調和して、時代の過渡期の庭園としても価値があります。

 

⑮玉堂美術館は、近代日本画の巨匠・川合玉堂の美術館です。建築設計は、数寄屋建築の名手として知られた吉田五十八氏。庭園は、世界各地にも日本庭園を造っている中島健氏。

一見すると、有名な竜安寺石庭を彷彿させますが、ここでは、直線的な延段が加わることによって、モダンな庭園へと変化しているのを感じます。

周囲の自然を借景に、清々しい空気に満たされた庭園です。

 

⑨栗林公園は、代表的な大名庭園として知られる広大な池泉回遊式庭園。

庭園内を縦横に走る園路を辿れば、まさに「一歩一景」。次々に新しい景色が展開。

緑と石と水、そして建物と、すべての庭園要素が絶妙な調和を見せています。特に松は、「手入れ松千本」といわれるだけに、数多くある松のどれもが、芸術作品のよう。

個人的には、もっと上位にランキングされてほしい庭園です。

 

⑦無鄰菴は、明治時代、元老・山縣有朋が造営した別荘。庭園は有朋自らの設計・監修により、小川治兵衛が作庭し、後の巨匠と呼ばれる彼の造園家としての地位を確立した代表作と言えるものです。

東山を借景とし、ゆるやかな起伏のある芝生の庭に、さらさらと耳に心地よい流れが縦横に走る開放的な洋の風景が見どころ。歴史の新しい息吹が、作庭にも反映されたかのような庭園になっています。

一方、庭の奥に進めば、樹木に囲まれた和の風景。澄んだ水面に映る木々の葉の美しさが印象的。小川治兵衛は後に「水の魔術師」とも言われました。

 

⑥養浩館は、回遊式林泉庭園と数寄屋風建物群からなり、地元の人には「御泉水(おせんすい)」と呼ばれて親しまれている庭。その呼び名の通り、幅広の遣水と広大な池が、まず目に飛び込み、芝生で覆われた築山とともに、美しい景をつくっています。

池の対岸では、雁行する建物群が優美な姿を水面に映し、庭園と建物が互いに引き立て合いながら雅びな景色を見せてくれます。

  

 

②桂離宮は、江戸時代初期、八条宮智仁親王・智忠親王の父子二代に渡り造営された庭園です。

広大な敷地の中央に複雑な汀線を持つ池があり・・・

周囲に風雅な書院や茶亭が配され、大小の中島には、それぞれ趣きの異なる橋が架かり、随所に据えられた燈籠、手水鉢などが点景となり・・・

足元の延段さえ見逃せないといった具合に、歩を進めるごとに景色が変化する、回遊式庭園のお手本のような光景が展開します。

 日本の建築美、庭園美が凝縮され、その歴史的背景も含めて、個人的にはランキング1位の庭園です。

 

①足立美術館は、地元出身の実業家・足立全康氏により創設された美術館。

彼の「庭園もまた一幅の絵画である」という言葉に包括されるように、入館するとすぐに眼前に開ける庭の大パノラマをはじめとして、庭のどこを切り取っても「絵になる」庭園です。

そして卓越した構成美とともに、維持管理の見事さも、特筆すべき点です。それが、このランキングはもちろん、フランスのガイドブック『ミシュラン』でも「三つ星」を獲得している所以でしょう。