鶴岡の市内散策の後、鶴岡駅からバスで羽黒山に向かいました。
鶴岡の西方に聳える羽黒山は、月山、湯殿山とともに、出羽三山と呼ばれ、今から約1400年前の推古元年(593)、崇峻天皇の皇子である蜂子皇子が、3本足の霊鳥に導かれ、羽黒山に登拝し、山頂に祠を創建したのが始まりとされる、山岳信仰・修験の霊場です。
山頂までバスでも行けますが、足に自信のある方は、霊山の雰囲気を満喫するために、麓の「随神門」で降りて、歩いて登るのがお勧め。頂上まで延々と続く石段は、2,446段。途中、3ヶ所の急坂があり、かなりきつい道程ではありますが・・・。
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(上: 杉の老樹の並木の中を2,446段の石段が続く羽黒山の荘厳)
随神門をくぐって、最初は下り。やがて清流に架かった赤い神橋を渡れば、いよいよ登り坂の始まり。すぐに一の坂。その手前の杉の木立ちの中に、まるで杉の精霊のように、古色を帯びて佇む五重塔は、平安時代(920年代)、平将門の創建と伝わるもの。国宝です。
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五重塔近くに、天を突くがごとく聳える巨大な杉は、樹齢1000年と言われる「爺杉」。私の故郷に聳える巨杉「婆杉」とオーバーラップするのでした。
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(上: 呼応するかのように並び立つ「爺杉」と五重塔)
樹齢300~500年という杉の老樹が立ち並ぶ中を、はるかに延びる石段。見上げれば、ほとんど垂直かとも思える急坂。苔むして滑りやすいところもあるので慎重に。二の坂を登り切ったところには茶屋があります。そして最後の三の坂を登れば、まもなく山頂。約60分の道のりでした。
山頂には、月山・羽黒山・湯殿山の三神を合祭した社殿があります。月山と湯殿山は、冬期には積雪のため参拝できないことから、ここに三神を祀るようになったと伝わっています。
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(上: 羽黒山山頂の三神合祭殿。茅葺き屋根の巨大さが圧倒的)
神仏習合の名残を伝える権現造りの社殿は、見た瞬間、ほーっと声が出るくらいスケールの大きな建物で、特に東北随一という茅葺き屋根の大きさには圧倒されます。なにしろその厚みは、2.1メートルといいますから・・・。
帰り道に出会った山伏の行列の中には、外国人もちらほら。修験道の国際化を実感しました。
そして、羽黒山まで来たら、ぜひとも立ち寄りたいのが、山裾にある玉川寺(ぎょくせんじ)。庭園が名勝に指定されています。交通の便があまり良くないのですが、麓からタクシーで5分くらい。バスなら「大鳥居」下車、徒歩15分くらいです。
寺伝によれば、玉川寺は鎌倉時代(1251)に、朝鮮百済国から渡来した了然法明禅師によって開山された曹洞宗の古刹。現在の規模は決して大きくありませんが、山門からすでに、そこだけが別世界のような、幽玄の雰囲気を漂わせ、その由緒の確かさを物語っているかのようです。
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庭園は池泉回遊式蓬莱庭園と呼ばれる様式。本堂とそれに連なる書院・茶室の前に広がっています。横長の池の対岸の築山は、背後の裏山に続き、開山堂に通じる石段が、木間隠れにちらちら見えます。
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池前の飛石の中に据えられた巨大な礼拝石。向こう岸には、それと対峙する立石。池には、3つの島があり、それぞれが目立たないけれど風情のある橋で連結され、滝石組や護岸の石組などで形成された複雑な汀線が、景を豊かにしています。
池の中に点々と配された夜泊石(よどまりいし)は、蓬莱思想を象徴するもので、理想郷である蓬莱山へ向かうための船の一団が、夜、船溜りに停泊している姿を表現しているそうです。
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手入れもよく行き届き、ピーンと張りつめたような静寂境に、心が洗われるようです。室町時代にあった庭園を、江戸時代初期に、羽黒山の別当だった天宥が改修したといわれています。
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玉川寺を出たら、遙か彼方に見える赤い大鳥居を目指して歩けば、鶴岡駅へのバス停まで迷う心配はありません。見渡す限りの庄内平野と、頭上の広い空が心地良い、一日の終わりでした。
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