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先日の本ブログでも記したように、テレワークでは対面しているときのように「空気に頼ったコミュニケーション」はできません。だからこそ、今後はこれまで以上に意識的に「対話」をすることが求められるようになるのではないでしょうか。
平田オリザさんの著書「わかりあえないことから」(2012年講談社現代新書)では、「会話と対話を次のようにきちんと区別することが大事なのではないか」と書かれています。
「会話とは、親しい人同士のおしゃべり。」
「対話とは、異なる価値観や背景を持った人との価値観のすりあわせや情報交換。あるいは知っている人同士でも価値観が異なるときに起こるやりとり。」
さらに続けて同書では、対話は「価値観を一つにする方向のコミュニケーションではなく、価値観は異なったままで、文化的な背景の違う者同士がどのように合意形成を行っていくかが問われている。」ともおっしゃっています。
その場の空気に頼ったやりとりをすることが比較的多いと言われる日本人のコミュニケーションにおいて、対面していないテレワークでの対話は、普通に考えればかなり難しいやりとりになると考えられています。事実、私自身もそのように考えていました。
しかし最近、私は反対にオンライン上でのコミュニケーションだからこそ、対話が進むということもあり得るのではないかと考えるようになってきました。
テレワークにおいては、いつでも自由につながってコミュニケーションをとれるようにしている組織もある一方で、多くの組織は朝礼やミーティングなど、あらかじめ時間を決めて行っているところが多いようです。
そうなると、限られた時間の中で自分の意見・考えをきちんと伝えることが求められますが、同時に相手の合意を得るためには、自分自身も集中して相手の話を聴くことが対面のとき以上に求められることになります。
「空気」に頼ることができない分、異なる価値観を背景にしている人や異なる意見を持っている人に対して、少しでも合意ができるように言語をフル活用したり、熱意をもって話したりすること。そしてこちらも相手の話をしっかり聴くことが今まで以上に必要になってくるのです。
対面でのコミュニケーションのときに行っていた「言わなくてもわかるでしょう」というような「空気」に頼ったコミュニケーションが行えないからこそ、一生懸命に伝え、そして聴く努力が求められるのです。
今回、コロナ禍をきっかけに予期せず一気に普及したテレワークですが、コミュニケーションが変わる大きなきっかけにできるのかもしれません。
空気に頼ったコミュニケーションから、対話を重視したコミュニケーションへと変えるチャンスにしましょう。