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言葉自体で意味合いを判断できない

2015年12月09日 | コンサルティング

「話が煮詰まってしまって・・・良い考えが浮かばないので、時間までに課題を仕上げることができそうにありません」

先日担当した研修で、グループ演習の最中に受講者から困ったような表情で言われた言葉です。過去にも何度かこのようなケースがありましたので、この言葉が実は本来の意味とは異なる使われ方をしていることが理解できるようになりました。

言うまでもないことですが、「煮詰まる」とは本来は議論や考えなどが出つくして、結論を出す段階になることです。しかし、若い世代を中心に間違った意味で使用する人が多くなり、この例のように議論などが停滞してしまう状況を表すような引用が日常的にされているのだと思います。

前後の文脈や話し手の表情を見れば、異なった意味で使っていることがわかるため、研修の時には聞き流してしまっていますが、それが果たして年長者の対応として良いものかと疑問に思いつつ、ついついやり過ごしてしまっている自分がいます。

16歳以上の人を対象に文化庁が毎年実施している「国語世論調査」では、「現代の社会状況の変化に伴う、日本人の国語意識の現状」を調べています。2014年調査結果によると、「普段の生活の中で接している言葉から考えて、今の国語は乱れていると思うか、それとも、乱れていないと思うか」との質問に対して「乱れていると思う」割合は73.2%。一方、「乱れていないと思う」は23.5%でした。過去の調査結果と比較すると「乱れていると思う」割合は減少傾向にあるようです。

若者の言葉が変化したと言われて久しいですが、前述のように乱れていないと感じる人の割合が増えているということは、まさにその表れではないかと思います。

先日も「ヤバイ!スゲーうまそう」という賑やかな声がする方を見たところ、修学旅行中と思しき男子高校生のグループが、パン屋の前で口々にこの言葉を発していました。

彼らが見ているのはウィンドウ越しに見える数々のパンで、それはそれはおいしそうなパンでしたが、テレビなどでは見聞きしているにしても普段プラスの表現として「ヤバイ」を使い慣れていない私には、とても違和感がありました。

「やばい」は、本来は不都合なことや危険なことを言い表す言葉ですが、現在は肯定であっても、否定であってもという自分の想定を超えた場合の表現として、いわば「凄い」というような意味に使われています。

先の「国語世論調査」でも、「やばい」を「とてもすばらしい(良い,おいしい,かっこいい等も含む)」という意味で言う人が 26.9%おり、年代が低いほど高くなる傾向で16~19歳で91.5%と最も高く、次いで20代(79.1%)となっています。

このようなことから考えると、言葉が本来の意味とは異なった用い方をされるようになったことから、言葉(単語)自体で意味合いを判断するのではなく、文脈全体で判断する必要があるのかもしれません。

若者言葉は新しい時代の表現を求めて、いろいろな方向に変化しています。また、現代の日本語は、室町時代に日本語が古代語から近代語へ移っていった時以来の大変革期にあると言われています。ですから、新しい言葉ができたり、違う意味で使ってみたりすることも、一概にダメとは言えないのかもしれません。それにしてもこのままだと、いずれは「話が煮詰まった」にしろ、「やばい」にしろ本来の意味が失われてしまうのではないかと危機感さえ覚えてしまいます。

今の若者言葉の多くは時代の変化に伴ってとともに消えていくのだろうとは思うのですが、それでもいくつかは今後も一般的な日本語として定着していくのでしょう。

ですから、若者に限らず我々自身、普段から言葉を無自覚に使うのではなく、時にはその意味や使い方が正しいのかなどを意識的に見直しながら使うことも必要なのではないでしょうか。

 (人材育成社)


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