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患者を診ない医師、顧客を観ない営業

2016年09月28日 | コンサルティング

 カチャカチャ、カチャカチャ・・・

問診中、私の話を聞きながらひたすらキーボードを打ち続ける医師。診察室にはキーボードの音だけが鳴り響き続けています。

一昔前と比べて、診察室の光景が随分変わったなと感じています。最近では、多くの医師が患者の話をひたすらパソコンの画面に向かって打ち続けているのです。

本来であれば、患者と相対して問診し、きちんと観察して診断を下すはずだと思うのですが、現在は前述のように患者が置いてきぼりにされている場面が多くなっているように思います。先日、私が行った病院の医師に関して言えば、ほぼ9対1の割合で画面に向かっていて、顔を見ながら話をした時間はたったの1割くらいだったと記憶しています。

医療現場に電子カルテが導入されて久しいですが、元来は医師を助けるために導入されたはずのものが、診察の現場を見ると、パソコンに入力することが最優先され、医師は以前よりさらに忙しそうに見えます。

もとより行うべき患者の顔を見て問診したり、返答するときの表情を確認したり、患部に触れたりすることが減ってしまい、まるでデータを入力することが仕事であるかのようです。

しかし、そこまでして入力していたはずなのに、次の診察のときにその情報がほとんど生かされていないのです。前回と同様の質問が繰り返されるので、「前回お話をしたとおりなのですが・・・」と言いつつ再度説明を始めると、慌てて画面を戻して確認をすることもあります。

そういう場面に遭遇すると、入力すること自体が目的になってしまっていて、肝心の情報は全く生かされていない、本末転倒の状況になってしまっていると感じますし、患者の顔をきちんと観ることもせずに、一体何がわかるのだろうと思います。こういうことが何度か繰り返された結果、医師に対しての信頼がなくなり、別の病院を探したこともこれまでにありました。

さて、では営業の場面でも同じようなことが起こっているのでしょうか?

先日、弊社を商談で来社された営業パーソンも、先の医師と同様に話をしながらひたすらパソコンの画面に対峙していました。

彼に関して言えば、こちらが話した内容の入力をしていたわけではないのですが、プレゼンテーションのために画面と格闘していたのです。

私が当方のニーズを話した後に、先方のサービスの紹介が始まったのですが、データの保管場所がわからなくなってしまったようで、ひたすらパソコンに向かい、データを探していました。

5分くらい探して、結局は見つからなかったようなのですが、紙の資料を持参しておらず口頭での説明になったのです。結局、私自身今一つサービス内容が理解できずに、結局その会社のサービスの採用を見送ることになりました。

大量の情報を蓄積できるように設計され、人間の判断や活動を支援するために適切にプログラムされたパソコンを始めとしたコンピューターは、もともとは人間を助け、人間にしかできない仕事をする時間を提供してくれるものだったはずです。

しかし、顧客(患者)の情報を収集したり、それに基づき問題を解決するために適切な方法(治療法)を提示したりするはずだったものが、反対に人がコンピューターに操作されてしまっているようです。

医師であれば目の前の患者に、営業であれば顧客に真正面から向かうことをせずに、パソコン画面に向かってばかりいる医師や営業パーソンを見て、そのデータがきちんと活用されず、本来の仕事を助けるどころか逆に負担が増えてしまっている現実があります。一体何のためのコンピューターの導入なのだろうかと考えてしまいます。

つい、「パソコンから離れて、目の前をもっと注視しましょう、生の情報を得ないで一体どうするのですか」と言いたくなるのです。

(人材育成社)


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