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第905話 ステイホーム週間は本を読もう(1)

2020年04月25日 | コミュニケーション

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。さて、いつもはビジネスに関わる内容をお届けしているこのブログですが、今回はステイホーム週間に合わせて「読書のすすめ」を連休中毎日書いていこうと思います。

 先日の新聞に「30大学1万人強の学生を調査したところ、まったく本を読まない学生が53.1%だった(全国大学生協連合会、2017年調査)」という記事がありました。これは若者に限らずほとんどのビジネスパーソンに共通する傾向です。実際、研修中に「普段どのくらい本を読みますか?」と質問すると「全く読まない」という答えが大半を占めます。その一方、著名なビジネスパーソンには読書家が多いのも事実です。ビジネス上の成功と読書に因果関係があるかどうかはわかりませんが、何十年か経って「あのときもっと本を読んでおけばよかった」と思う人は少なくないはずです。

 ステイホーム週間は本を読む絶好のチャンスです。1冊の本は、テレビやネットの映画でマヒしてしまった脳を活性化させます。何を読むかは自由ですが、お薦めは?と聞かれたら「これはいかがですか」という本をご紹介します。では、早速1冊目から始めましょう。


「老人と海」アーネスト・M・ヘミングウェイ  

 おそらく、読んだことがある、という方が多いことでしょう。ヘミングウェイの作品の中ではもっとも有名な短編小説です。ストーリーは単純明快です。老いた漁師が1人で漁に出て、大物を苦労して捕まえ、港に戻る途中で失ってしまうというただそれだけの話です。
 ヘミングウェイといえば、簡潔な文体です。複雑でひねくれたような表現は一切ありません。そのため、英語の授業で原著を読んだという方もいるでしょう。非常にわかりやすい英文ですから、中学レベルの読解力があれば読み切れます。英語以外の言葉や固有名詞も少し出てくるので、翻訳を読んでから英語の原著に取り掛かるとよいでしょう。

「老人と海」はストーリーが知られている短編小説ですから、普段あまり活字を目にしない方でも短時間で読めます。最初と最後の部分は会話が中心ですが、本文はほとんどが獲物との戦いの描写で、老人のひとり言と回想がそこに絡んできます。

「大した魚だ。が、思い知らせてやらねばいかん。彼は思った。奴自身の力に気づかせてはいけないし、突っ走ればどうにかなると悟られてもいけない。」

 頭の中に映像が浮んできて、サスペンス小説のような緊張感があります。こうした緊迫した場面と、老人が過去の出来事を思い出し、しみじみとしたりちょっと残念がったりする場面が繰り返されます。読者の気持が次第に主人公の心情に同調していきます。実に上手い物語の進行です。

「だが人間は、負けるように造られてはいない」彼は言った。「打ち砕かれることはあっても、負けることはないんだ」

 後半、老人ははっきりとそう言います。このセリフをダンディズムやマチズモを象徴する主張であると考えるのは間違っているように思います。たしかに負け戦の話のようですが、「打ち砕かれても負けじゃない」という言葉がこの小説の主題なのです。

打ち砕かれて、疲れて、眠る。そのことを淡々と受け入れる。今こそ私たちがあらためて読むべき本だと思います。

 最後に、疲れ切った老人は眠り、いつもの夢をみます。疲れ切った私たちはどんな夢をみるのでしょう。

老人と海 (光文社古典新訳文庫) (日本語) 文庫

老人と海 青空文庫/card57347)

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