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何も考えずに、でも何かを求めて、鉄道の旅を続けています。今夜もmoonligh-expressが発車の時間を迎えます。

磐越西線の「ボルチモアトラス橋」の話

2020年07月15日 | 土木構造物・土木遺産
「会津に忘れ物をとりに行く!」と言って出かける。というのも、先月、お客様を案内して訪れた福島県会津地方だが、その時に行く予定だった第二の目的地を今回改めて訪問。「忘れ物をとりに行く」は「撮りに行く」ということ。
被写体は、近代土木遺産でもあるJR磐越西線にかかる橋梁。列車が走る鉄橋のことだ。

磐越西線には、トラス橋(橋桁に、鋼材等を三角形に組み合わせて強度を得る橋)の中でも、独特の構造の上、特に希少となった上路式(トラス桁の上を線路が走る方式)の「ボルチモアトラス橋」が、開業当時からだから100歳を超える現役橋梁がいくつか存在する。
ボルチモアトラス橋は、現存するものが全国で5例しかない。しかも使用されているのは4例。そのうち3例がこの磐越西線にかかるものである。



最初に紹介するのは「一ノ戸川橋梁(福島県喜多方市)」。鉄道ファン、特に撮り鉄には聖地ともいえる撮影スポットだ。
ご承知のとおり、磐越西線には「ばんえつ物語号」というSLでC57が牽引するジョイフルトレインが走っているため、その格好の撮影地であるので、どこかでこの橋を走行するSLの写真を見た人も多いかもしれない。
明治43年(1910)供用開始。445メートル16支間のガーダー橋の中央にトラス橋が1支間、高さ24メートル。新潟(新津)側から会津盆地に入ると周りが開けて、風光明媚な場所にあることから、人気スポットなるのは必然。
ガソリンスタンドで、助手席に置いていたカメラを見つけた店員さん、「何を撮影されるんですか?」と聞かれ、「一ノ戸川の鉄橋です」と答えたら、「あー」と一言。観光資源としても注目されているんです。



同じ方式の「長谷川橋梁(福島県耶麻郡西会津町)」は、御殿場線から転用されたもの(一部改造後)で大正2年(1913)供用開始。
阿賀川の支流で、狭く写真のとおり樹木の生い茂った中にひっそりいう感じ。
前後紹介のボルチモアトラス橋は、アメリカの設計者(アメリカン・ブリッジ社製)なのに対し、この橋梁は鉄道院の設計施工。ある意味、貴重な感じもするが、土木学会の近代選奨遺産ではCランク(前述の一ノ戸川橋梁は「A」、後述の蟹沢橋梁は「B」)。



そして3つ目の橋が「蟹沢橋梁(西会津町)」。上野尻駅の近くにある橋だが、こちらは長谷川橋梁よりさらにひっそりとした場所にあり、少し探すのに迷った。
ただ、ここは道路の真上に橋が架かっていて、トラス構造が目の当たりにできる。大正3年(1914)完成だから、間近に見るとかなりの古さが伝わってくる。ただ、上の写真のとおり、全国でもここだけのアングルで写真が撮れるんですから、これまた貴重です。

とにかく、磐越西線は近代遺産の宝庫。特に橋梁は、今回紹介した以外の方式でも注目に値する橋梁があるので、今後も機会を得て紹介していきたい。
今回、阿賀野川(阿賀川)にかかる橋は一つもないんですよね、すべて支流。磐越西線というと、阿賀野川に絡んで、橋梁の連続に思えるのですが、本川を渡るのはわずか5か所。阿賀野川の川幅や水深、流量の影響で、できるだけ渡らないようにしたのか?でも、その本川5橋も面白そうですよ!

コメント
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