ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

森林公園 滑川町

2011年07月28日 18時26分15秒 | 名所・観光

森林公園 滑川町

12年の冬、世界も日本も異常な寒さに見舞われた。こんな寒さは記憶にないほどだ。その寒さの底が、2月18日の土曜日前後だったらしい。

「何を好き好んで」と言われよう。この日、後期老齢者が多いわが歩く会は、東武東上線の森林公園駅で降りる「国営武蔵丘陵森林公園」へ梅見としゃれ込んだ。

なぜそんなときに出かけるのか。勤め人も交じっているので、日程の都合で毎月第3土曜日と決まっているからだ。

ありったけの防寒具をずんぐりと着込み、背をかがめて歩く、女性の多い8人の仲間は、風流な花見客というよりどこかの避難民のように見えたことだろう。

私は前日、所定の会合の前の時間つぶしに、大宮公園の梅林を訪ねたら、紅梅がほんのちょっぴりほころんでいただけだった。

この日は、風があって冷たいものの、抜けるような快晴。雪国の人たちには申し訳ない埼玉の冬日和である。

森林公園と呼ばれても、比企北丘陵にあるので「武蔵丘陵公園」と呼んだ方がふさわしい。ゆるやかな起伏のある典型的な武蔵野の雑木林である。国木田独歩が歩いたら、「武蔵野」の続編が書けたろうな、と思うほどだ。

日当たりのいい広場に県木に指定されている高いケヤキ、雑木林にはコナラを筆頭に、アカマツ、クヌギ、イヌシデと武蔵野の林のお膳立てはそろっている。

それがすべて葉を落とし、背の高い樹肌をさらしているのだから、厳冬期の雑木林の魅力を満喫できる。これまで見たことのない光景だ。

この公園には何度来たか。だが、酷寒の季節に訪れたのは初めてで、葉を落とした林の“ヌード姿”の美しさに感激した。

森林公園駅から歩いて2.6kmの南口の入り口から、ありがたい老人割引で200円で入場。「♪ 春は名のみの風の寒さや ♪ 」と口ずさみ、「咲いてるかしら」と話しながら、入り口に近い梅林に向かう。

鶯どころかすべての鳥も、「時にあらずと声も立てず」の状態なので、耳に入る歌声はない。

房総半島ではないのに、まず目に入ったのは、菜の花だ。葉はさすがに寒さでいじけていた。霜を受けたのだろうか。だが、パンジーも咲いていたから、寒さに強い花はあるものだ。

紅白120品種、600本あるという梅林の斜面には、梅の花こそまだちょっぴりながら (写真)、根元には福寿草がいくつも咲いていた。日の光を受け、黄色に輝いている。寒さのせいか、まだ開ききっていないのも多かった。1万5千株あるとか。

私の好きな昔からの唱歌「早春賦」には、「春と聞かねば 知らでありしを 聞けば急(せ)かるる、胸の思(おもい)を いかにせよとのこの頃か」という一節がある。この気持ちにぴったり沿ったウォーキングで、「早春賦」の歌詞の意味が歩きながら実感できた。

レンギョウもユキヤナギも、桜林も寒さの中でつぼみを膨らませていた。森林公園は春とともに、まもなく盛りを迎えようとしている。

森林公園は、四季さまざまな姿で我々を迎えてくれる。

桜はソメイヨシノ500本、山桜、大島桜などを含め、園内には全部で1千本。4月には約5千平方mの花畑一面にアイスランドポピー。5月下旬には約6万本のルピナス、7月には自生しているヤマユリ1万株のうち3千株が開花する。秋には日本一といわれるコリウスガーデンもある。

11月の、50品種、500本あるカエデの紅葉の季節にはライトアップが行われ、紅葉狩りの人でにぎわう。年間の来園者は約87万人(09年度)。

1974年、国の明治百年記念事業の一環として、全国初の国営公園として開園した。南北約4km、東西約1kmあり、総面積約304ha。東京ドーム65個分。子どもに人気の日本一大きいエアトランポリン「ぽんぽこマウンテン」もある。15年5月3日で開園以来の累計入園者数は4000万人を超した。


園内を一周する全長17kmの自転車専用道路が整備されていて、レンタサイクルのほか、持ち込みも可能。



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