Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「第九 歓喜のカンタービレ」 野本 由紀夫 ほか

2010-11-22 02:11:13 | book
第九―歓喜のカンタービレ
野本 由紀夫 ほか
ネット武蔵野


第九 歓喜のカンタービレ 野本 由紀夫 ほか

Amazonの紹介文から↓
中島悠爾、小山実稚恵、高辻知義、渡辺裕、増井敬二など日本を代表する50人の豪華執筆陣*が、様々な視点で第九の魅力に迫る!小林研一郎&宇野功芳の(初の!)スペシャル対談、二ノ宮知子の人気マンガ『のだめカンタービレ』の書き下ろし番外編「のだめの歓喜の歌♪ベートーヴェン交響曲弟9番」なども収録。
付録DVDは人気のコンサート・シリーズ「茂木大輔隊長と名曲の森探検隊」のライヴ映像より。茂木大輔の指揮、東京二期会・藤原歌劇団を代表するソリスト、東京混声合唱団による“第九”初演プログラム再現演奏会(第九は全曲、他は抜粋)を収録。


てな本でした。

コバケンの対談などでは曲としての面白さ・不思議・魅力・こだわりなどに触れているし、
シラーの原詩の成り立ちや内容から踏まえた第九歌詞のこころを言葉に即して解説してあるし、
ベートーヴェンの生涯から第九の成立・初演、そしてその後の演奏史や20世紀の全体主義との関わりも含めた歴史的なこともあるし、
20世紀の全体主義との関わりを含めた
日本での初演と受容から年末行事化した経緯にもかなり深く踏み込んでいるし、
ワグナーやマーラーなどによる「改編」の内容や意味にも触れているし
日本の第一線作曲者や演奏者が抱く第九への思いがたくさん載っていたり、
書き下ろしのだめショートコミックまでついて(ほんとにショートだけども)、
さらには初演時プログラムを再現したコンサートのDVDまでついていて、
このお値段(笑)

と、盛りだくさんの多角的内容。
大勢の執筆者がいるためにところどころ内容や主張が食い違っていたりするが、
それを含めて第九をめぐる「複数の声」を多様性を失わずにコンパクトに読みやすくまとめてある。
内容以前にこの編集手腕にびっくりである~。

考えたら昔もっていた第九のLPのライナーくらいしか知識がないなーと思い、書店で目についたものを買ってみたのだけれど、これは面白かった。
ページ数も少なめ、ノリも軽いのでするすると読めるのになかなか内容が濃い。
これから演奏するということもあるけれど、年末に向けて(笑)第九についてお勉強するには最適かもしれません。




特にワタシが面白かったのは(てまあ、全部面白かったんだけども)、
19世紀のなかばころからドイツでベートーヴェンが国民的英雄に位置づけられていくあたりで、
銅像がお披露目された生誕百年だかなんだかの記念式典での盛り上がりなどを、
当時の写真を交えつつ解説してるとことか。

世紀末から第二次大戦までのドイツでのメンタリティをこういうところでも見ることが出来るのだな。この時期を生きたブラームスも結構な愛国者だったというし、排外的全体主義も突然変異ではなかったということですね。

日本での演奏史も興味深い。
初演が第一次大戦時のドイツ人捕虜によるものだということは最近では常識の範疇に入ってきたようだが、
そこでの捕虜生活が想像以上に社会的で、収容所からコンバスの弦を発注した注文書が残っているとかいう話も。

日本人による演奏は、時期的にも学徒出陣の壮行会で演奏されたりと、社会情勢に密接に関連したスタイルとなったわけで、当時の演奏会参加者の証言もあり面白い。

あとは、細かい話wで、第4楽章冒頭ファンファーレのトランペットをどう扱うかとか、第3楽章の4番ホルンはなぜ4番なのかとか、テノールの音が不自然に上下するところを均すかそのままにするかとかいう話が面白い。




小林研一郎って第九演奏回数のギネス記録保持者なんだそうですねー
日本一=世界一ということで、いかに日本で第九が流行っているかということですね。

年末での演奏回数もちょうどバブル期に最高潮で近年は減少しているということで、今後この風潮がどうなっていくのか興味深いところですね。
楽器はできないけれど歌はできるというアマチュアが年に一度の晴れ舞台として演奏するというスタイルが定着しているので、演奏回数は減っても地道な活動としては続いていくような気がしますけど。



人気blogランキングへ
↑なにとぞぼちっとオネガイします。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Quand la femme tient la bar... | トップ | 「未来型サバイバル音楽論」... »

コメントを投稿