漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「匊キク」<まるく包む>と「菊キク」「掬キク」「鞠キク」「麴キク」「椈キク」

2024年03月28日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 キク  勹部つつみがまえ jū

解字 金文・篆文とも、「米(こめつぶ)+勹(つつむ)」の会意。勹ホウは、人が身体をまげたかたちで、つつむ意。これに米を合わせた匊キクは米をつつむようにすくいとる形。掬キク(すくう)の原字。単独では使われないが、「まるく包む」イメージをもつ。
意味 すくう。

イメージ 
 「まるく包む」(匊・菊・掬・鞠・麴・椈)
音の変化  キク:菊・掬・鞠・麴・椈

まるく包む
 キク・すくう  扌部 jū
解字 「扌(手)+匊(まるく包む)」 の会意形声。手のひらをまるくしてすくいとること。
意味 すくう(掬う)。むすぶ。両手ですくいあげる。「掬水キクスイ」(両手で水をすくう)「掬飲キクイン」(すくって飲む)
 キク  艸部 jú

花弁がまるく包む菊の花
解字 「艸(くさ)+匊(まるく包む)」 の会意形声。多くの花弁がまるく包むように集まる菊の花の意。
意味 (1)きく(菊)。キク科の多年草。「菊花キッカ」「菊月キクゲツ」(旧暦九月の別名)「観菊カンギク」(菊の花を観賞する)「残菊ザンギク」(秋の末に咲き残った菊の花)「菊水キクスイ」(①無数の菊が自生し菊花から濡れ落ちたしずくが集まり谷川となり、その水を飲む下流の小さな集落の人々はすべて長寿の者ばかりという中国の伝説。②酒造メーカーの名前) (2)姓の一つ。「菊池」「菊地」「菊川」「菊谷」
 キク・まり  革部 jū
解字 「革(かわ)+匊(まるく包む)」 の会意形声。革で外をまるく包んだまり。また、「身+(まるく)」の身匊キク(これで一字。身をまるくかがめる)に通じ、身をかがめて子を抱き育てる意味にも使われる。
意味 (1)まり(鞠)。けまり。「蹴鞠けまり」「鞠庭まりば」(蹴鞠をおこなう場所) (2)やしなう。そだてる。「鞠育キクイク」(養い育てる)
麴[麹] キク・こうじ  麥部むぎ qū
 
団子状の麹(「発酵する食卓」より)
解字 「麥(むぎ)+匊(まるく包む)」 の会意形声。新字体に準じた「麹」も常用される。中国大陸などでは、麦(小麦のほか、アワ・コウリャンなど)をすりつぶしたり、臼で搗いて粉砕し、そこに水を加えて手で丸めたもの。これをそのままにしておくと麦などの穀物に付着しているカビが繁殖して種麴になる(これを餅麴もちこうじという)。なお、種麴を用いてカビをはえさせたものも言う。
 日本酒などの種麴の原点は稲穂につく稲麹菌を、蒸した米とまぜてつくる「散麹ばらこうじ」で製法が異なる。(小泉武夫氏の著作を参考にした)
 
稲穂に付いた稲麹(「稲麹(いねこうじ)を発見」より)
意味 (1)こうじ(麴・麹)。米や麦・豆などを蒸し、種麴を散布してコウジカビを生じさせたもの。「麴菌こうじキン」「麴室こうじむろ」(麴をつくるための温室)「麴花こうじばな」(蒸した米に麹菌がついて淡黄色になったもの)「餅麴もちこうじ」(麦などを粉砕し水を加えて餅のようにまるめて作る種麹)「散麴ばらこうじ」(蒸し米に稲麹菌を付着させた種麹)「紅麴べにこうじ」(蒸した米に紅麴菌を混ぜ入れ発酵させたもの。発酵で赤い色素が生まれる) (2)さけ。「麴院キクイン」(酒を造る所)
キク・ぶな  木部 jú
解字 「木+匊(まるく包む⇒手のひら)」 の会意形声。手のひらのような葉をもつコノテガシワ(児の手柏)の別称。日本ではブナの木の意味で用いる。
意味 (1)コノテガシワ(児の手柏)の別称。ヒノキ科の常緑高木。柏樹。 (2)[国]ぶな(椈)。ブナ科の落葉高木。橅(ぶな)とも書く。「椈森ぶなもり」(秋田県中央部の山)
<紫色は常用漢字>

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1 コメント

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2016-04-29 19:57:56
>音符「勹+米」キクはネットで表示されないので、以下に「菊の略体」と書く。

匊 ←コピーして使ってください
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