漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「玄ゲン」<黒い>と「弦ゲン」「舷ゲン」「眩ゲン」「牽ケン」

2023年02月07日 | 漢字の音符
  鉉ゲンを追加しました。
 ゲン・くろ  玄部      

解字 金文は幺ヨウと同じで糸たばのかたち。金文では「玄衣ゲンイ」(赤黒い色の衣)という用法があり、すでに「黒い(赤黒い)」意味があるので、ゲンの発音を借りて黒い色を表したものと思われる。その後、篆文は糸たばの上に横線が入り、この形が元になり現代字の玄になった。意味は、くろい色、転じて、奥深い意を表す。音符になるとき、黒い意は消え、糸たばの形から「太いより糸」のイメージがある。
意味 (1)くろ(玄)。くろい色。「玄米ゲンマイ」「玄鳥ゲンチョウ」(ツバメの別称)「玄鶴ゲンカク」(ナベヅル。黒い羽毛におおわれた鶴)(2)ふかい。奥深い道理。「玄妙ゲンミョウ」「幽玄ユウゲン」(3)きた。玄は黒なので五行説で北にあたる。「玄天ゲンテン」(北方の天)(4)はるか。とおい。「玄孫やしゃご・ゲンソン」(孫の孫。ひまごの子) (5)すぐれた。「玄人くろうと」(専門家。対語は素人)

イメージ 
 仮借カシャ「くろい」(玄)
 糸たばの形から「太いより糸」(弦・舷・絃・鉉・牽)
 「形声字」(眩・衒・呟)
音の変化  ゲン:玄・弦・舷・絃・鉉・眩・衒・呟  ケン:牽

太いより糸
 ゲン・つる  弓部
解字 「弓(ゆみ)+玄(太いより糸)」の会意形声。弓に張る縒りをかけたつよい糸。
意味 (1)つる(弦)。弓に張る糸。「鳴弦メイゲン」(弓の弦を鳴らすこと) (2)楽器に張る糸。「弦楽ゲンガク」「管弦楽カンゲンガク」 (3)弓を張ったような半円形。弓張り月。「弦月ゲンゲツ」(月の明るい部分の一辺は曲がり、一辺は真っすぐで弓に弦を張ったように見える頃を云う)「上弦ジョウゲン」(朔サク(新月)より望(満月)に至る間の半月を上(かみ)の弓張(上弦)と云う。弓は右側)「下弦カゲン」(望(満月)より晦(つごもり)に至る間の半月を下(しも)の弓張(下弦)と云う。弓は左側)※なお、上弦の月は日没のころ南中し右半分がみえる。真夜中に弦を上にして沈む。下弦の月は明け方に南中し左半分がみえる。昼ごろに西の空に沈むとき弦が下になる)

三日月⇒上弦⇒満月⇒下弦(イラストブックネットより) 
 ゲン・ふなばた  舟部
解字 「舟(ふね)+玄(=弦。弓張り月)」の会意形声。弓張り月のように反っている舟べり。
意味 ふなばた。ふなべり。「舷窓ゲンソウ」「舷灯ゲントウ」「右舷ウゲン」「左舷サゲン
 ゲン・いと・つる  糸部
解字 「糸(いと)+玄(太いより糸)」の会意形声。縒りをかけた糸や、つる。
意味 (1)いと(絃)。つる。楽器に張る糸(=弦) (2)絃を張った楽器の総称。「三絃サンゲン」(=三弦)(①3本の絃を有する東アジアの絃楽器。三線(沖縄)。三味線など。②三味線の別称。③雅楽に用いる楽器である和琴・楽琵琶・楽箏の総称) (3)箏などをひく。「絃歌ゲンカ
 ゲン・ケン・つる  金部
① 
①つる(鉉)付き鍋(ヤフオク写真) ②鼎鉉とされる器具(鼎の下右の金具)
②https://zhidao.baidu.com/question/624330986828744924.html
解字 「金(金属)+玄(=弦。弦を張った弓)」の会意形声。鍋や薬缶ヤカンにつける、弦を張った形に曲がる弓形の金属製の「つる」をいう。中国では鼎かなえの両耳に通す鉤形の器具をいう(移動に用いる)。
意味 (1)つる(鉉)。鍋や、やかんにつける弓形の取っ手。「鍋鉉なべづる」(2)[中国]鼎の両耳にいれる鉤形の器具。「鼎鉉テイゲン」(鼎(かなえ)を動かすとき両耳に懸ける金具。転じて、王室の宝器である鼎を動かす大臣・宰相のこと)(3)三公(中国で最高の位の三つの官職)の類の重臣。「槐鉉カイゲン」(槐座(三公の位)の鉉(大臣。宰相))「鉉席ゲンセキ」(三公の位)「鉉台ゲンダイ」(三公の位) (3)姓のひとつ。名前。中国では三公に因んで名前にも用いられる。
 ケン・ひく  牛部            

解字 篆文は、「玄(つな)+冖(鼻輪の半分が見える形)+牛」の形。玄ゲンは、ここでは牛をひく綱。次の冖は牛の鼻輪で鼻の外に出ている半分を表す。一番下が牛。牽は、牛の鼻輪につけた綱を引っぱるかたちで、意味は牛を「牽く」。
牛を牽く(JA鶴岡 [山形県庄内のお米産地]より)
意味 (1)ひく(牽く)。ひっぱる。ひきつける。「牽引ケンイン」「牽牛ケンギュウ」(牛飼い)「牽牛花ケンギュウカ」(あさがお)「牽牛子ケンゴシ」(あさがおの種。生薬になる)「牽強付会ケンキョウフカイ」(牽強はむりにひく、付会はくっつける、あわせて無理にこじつける意)「牽制ケンセイ」(いて御する。相手の注意をひきつけ、自由に行動できないようにする) (2)つらなる。つづく。「牽連ケンレン」(ひかれつながる。ひきつづく)
参考 牽の書き方

形声字
 ゲン・くらむ・まぶしい・まばゆい  目部
解字 「目(め)+玄(ゲン)」の形声。ゲンは幻ゲン(まどわす)に通じ、目がまどわされること。
意味 (1)くらむ(眩む)。めまい。「眩暈ゲンウン」(めまい) (2)まどわす。「眩惑ゲンワク」 (3)まぶしい(眩しい)。まばゆい(眩い)。「眩耀ゲンヨウ」(まばゆいほどかがやく)
 ゲン・てらう  行部
解字 「行(おこなう)+玄(ゲン)」の形声。ゲンは幻ゲン(まどわす)に通じ、世間をまどわす行ないをいう。
意味 てらう(衒う)。たぶらかす。「衒学ゲンガク」(学問や知識を必要以上にひけらかす)
 ゲン・つぶやく  口部
解字 「口(くち)+玄(ゲン)」の形声。ゲンは幻ゲン(まどわす)に通じ、まどわすような言葉で言うこと。
意味 (1)あいまいな言葉でさそう。たぶらかす。(2)[国]つぶやく(呟く)。小さな声でひとりごとを言う。
<紫色は常用漢字>

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