漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「巫フ」<みこ>と「誣フ」「筮ゼイ」「噬ゼイ」「覡ゲキ」「霝レイ」と「霊レイ」「櫺レイ」

2024年02月10日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 フ・ブ・みこ  工部 wū

解字 甲骨文と金文は呪具である工2つを組み合わせた形。古文(春秋戦国時代の文字)は、工の両側に「人+口」を向きあわせて配し、下に両手をつけている。「人+口」は召で招く意と思われ、呪具を両手でもち神を招いている形か。篆文で工の両側に人が向き合う形になり、現代字は「人+工+人」の巫になった。工をもち、神を招く巫女を表す。(なお、呪具の工は、ノミの形の象形である工具の工とは別物と考えられる。)
意味 みこ(巫)。巫女とも書く。かんなぎ(巫)。神に仕える女性。男のみこは覡ゲキという。「巫祝フシュク」(神職。巫も祝も、神に仕える者の意)「巫術フジュツ」(みこの行なう霊的な術)「巫医フイ」(祈祷で治療する人)  

イメージ   
 「みこ」
(巫・筮・噬・誣)   
 「神に祈る」(覡)
音の変化  フ:巫・誣  ゼイ:筮・噬  ゲキ:覡
 

みこ
 ゼイ・めどき・うらなう  竹部  shì
解字 「竹(竹の細い棒)+巫(みこ)」の会意。みこが占いで用いる細い竹の棒。
意味 めどき(筮)。うらなう(筮う)。占いに用いる竹の細い棒。ふつう50本を一組として使う。「筮竹ゼイチク」「筮卜ゼイボク」(筮による占い)
 ゼイ・セイ・かむ  口部  shì
解字 「口(くち)+筮(ゼイ)」の形声。[説文解字]は「啗(くう・くらう)也。喙(くちばし)也。口に従い筮ゼイの聲(声)」とし、くう・くちばし(でかむ)意とする。発音字典の[玉篇]は「齧噬ゲツゼイ(かむ・かじる)也(なり)」とする。白川静[字通]は「筮ゼイはおそらく齧(か)む音の擬声音として用いた」としている。
意味 (1)かむ(噬む)。かみつく。「齧噬ゲツゼイ」(かじる。齧も噬も、かむ意)「噬臍ゼイセイ」(ほぞ(へそ)をかむ。後悔する)(2)くう。くらう。「呑噬ドンゼイ」(①のむこととかむこと。②他国を侵略してその領土を奪うこと)「露国の極東呑噬ドンゼイ」(ロシアの極東侵略。「高橋是清自伝」より)「搏噬ハクゼイ」(つかみ捕らえて食らう)
 フ・ブ・しいる  言部  wū
解字 「言(いう)+巫(みこ)」の会意形声。みこが神のお告げをまげて言うこと。
意味 しいる(誣いる)。事実をまげて言う。こじつける。「誣告ブコク」(事実をいつわって告げる)「誣告罪ブコクザイ」(虚偽の申告をする罪)「誣言フゲン・ブゲン」(事実をまげて言う)

神にいのる
 ゲキ  見部 xí
解字 「見(みる)+巫(神にいのる)」の会意。神に祈って神を見ることのできる人。特に男性のミコに用いられる。 
意味 かんなぎ(覡)。ミコ。特に男性のミコ。「巫覡フゲキ」(かんなぎの総称。巫は女の、覡は男のかんなぎ)


    
     レイ <雨乞いする>
 レイ・リョウ  雨部 líng

解字 甲骨文字は「雨(あめ)+二つの口(うつわ)」の会意。口サイは器(うつわ)であり器で雨をうけることを表す。甲骨文字は地名またはその長の意。「霝妃」という人名がある[甲骨文字字典]。金文以降は口が三つになった霝だが、金文の意味は不明。篆文(説文解字)は「雨零ウレイ(水滴がおちる)也(なり)」とする。この字は下に巫(みこ)がついてミコが雨乞いの儀礼を行なう意となるので、雨を器で受けるという行為は雨乞いの意味がある思われる。
意味 雨が降ること。しずく。雨乞い。

イメージ   
 「雨乞い」
(霝・)  
 「形成字」(櫺)  
音の変化  レイ:霝・霊・孁・櫺 

雨乞い
 
[靈] レイ・リョウ・たま  雨部 líng
解字 旧字はで、「巫(みこ)+霝レイ(あまごい)」 の会意形声。霝レイは、天に雨乞いする形。はミコが雨乞いの儀礼を行なうこと。雨乞いのみでなく神霊の降下を求めるときにも同じ形式で行なわれるので、のち、その神霊をいい、およそ神霊にかかることをみな霊という[字統]。新字体は旧字の、口口口 ⇒ 一 、巫 ⇒ 亚 に変化した霊になった。
意味 (1)たま(霊)。神のみたま。また、死者のたましい。「神霊シンレイ」「亡霊ボウレイ」 (2)ふしぎな。神聖な。人知で計り知れない。「霊感レイカン」「霊泉レイセン」「霊妙レイミョウ」(人知こえて優れていること)「霊長類レイチョウルイ」(妙な力を持ち万物のとなる動物の種類。サルやヒトの仲間)
 レイ・リョウ・め  女部  líng
解字 「女(おんな)+霝レイ(あまごい)」 の会意形声。霝レイは、天に雨乞いする形。これに女がついたは、雨乞いする女で、巫女のこと。
意味 (1)巫女。(2)女子の名。「大日孁おおひるめ」(日孁ひるめは、日の女(巫女)。太陽神の巫女から太陽の女神をいう。日本書紀第五段本文では「伊弉諾いざなぎみこと・伊弉冉いざなみみことのあいだに生まれた。」また、五段の一書では「伊弉諾尊が、左手で白銅鏡(ますみのかがみ)を持ったときに大日孁貴が生れた」とある)「大日孁貴おおひるめのむち」(貴むちは尊称で「天照大神あまてらすおおみかみ」の別名) 

形成字

 レイ・リョウ  木部  líng
櫺子窓(連子窓)
解字 「木(き)+霝(レイ)」の形声。レイは囹レイ(牢獄)に通じる。木のついた櫺レイは、牢獄の窓に囚人が逃げないようタテにつけた木の格子をいう。転じて格子のはいった手すりにも用いる。
意味 (1)れんじ(櫺)。欄干(手すり)や窓に一定の間隔でとりつけた格子。「櫺子レイシ」(れんじ=連子)「櫺子窓れんじまど=連子窓」「櫺軒レイケン」(れんじの手すり)「櫺檻レイカン」(れんじのてすり)「櫺牀レイショウ」(れんじの手すりのあるベッド)
<紫色は常用漢字>    

 バックナンバーの検索方法 ※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

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