漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「戔セン」<戈と戈でたたかう> と「残ザン」「浅セン」「銭セン」「賤セン」「餞セン」「箋セン」「牋セン」「践セン」「綫セン」「盞サン」「桟サン」

2024年09月08日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 セン・サン・ザン  戈部  jiān        

解字 甲骨文字は武器である戈(ほこ)とそれを上下反転させた戈を並べた形で、戈と戈を向かい合わせ、戦闘の状態を表している。甲骨文字はたたかう・戦闘の意[甲骨文字辞典]。篆文は戈を上下に重ねた戔センになった。本来は戦闘の意だが、戦闘により生き残った者が「すくない」ことから、後代には「ちいさい」「みじかい」「うすい」など小・薄・短のイメージで使われる。新字体に用いられるとき、戔 ⇒ 㦮に変化する。
意味 (1)そこなう。 (2)すくない。わずか。 (3)サの音。サンの発音のサだけ生かした万葉仮名の用法。「素戔嗚尊すさのおのみこと」(日本神話で天照大神あまてらすおおみかみの弟)

イメージ  
 戈と戈で「たたかう」(戔・残)
 戦いで生き残った者が「すくない」(賤・浅)
 後に発生したイメージ「ちいさい・うすい・短い」(銭・餞・盞・箋・牋・桟・践)
 「形声字」(綫)
音の変化  セン:戔・賤・浅・銭・餞・箋・牋・践・綫  サン:盞・桟  ザン:残

たたかう
 ザン・のこる・のこす  歹部 cán
解字 旧字は殘で「歹(ほね)+戔(たたかう)」の会意形声。歹ガツは死者の骨の一部を表わし、たたかいで死んだ兵士の骨が戦場に残っていること。また、骨が残る戦闘の、むごいことをいう。新字体は残に変化。
意味 (1)のこる(残る)。のこす(残す)。のこり。「残雪ザンセツ」「残業ザンギョウ」 (2)そこなう(残なう)。むごい。「残酷ザンコク」「残虐ザンギャク

すくない
 セン・いやしい  貝部 jiàn
解字 「貝(財貨)+戔(少ない)」の会意形声。財貨が少ない人の意から、まずしい・身分が低い・いやしい意となる。
意味 (1)いやしい(賤しい)。身分がひくい。しず(賤)。「賤民センミン」(いやしい身分とされた人。低い身分として差別をうけた人々)「下賤ゲセン」(身分の低いこと。品性がいやしいこと)「賤の女しずのめ」(身分の低い女子)(2)いやしむ。さげすむ。「賤侮センブ」(賤も侮も、さげすむ意) 
 セン・あさい  氵部 qiǎn・jiān
会意 旧字は淺で「氵(水)+戔(少ない)」の会意形声。水が少ない、即ち、あさい意。新字体は浅に変化。
意味 (1)あさい(浅い)。「浅瀬あさせ」「遠浅とおあさ」「浅学センガク」 (2)あさはか。「浅薄センパク」 (3)あっさりしている。あわい。「浅緑あさみどり」(4)姓のひとつ。「浅井あさい」「浅岡あさおか」「浅見あさみ」(5)地名。「浅間山あさまやま」(長野・群馬両県にまたがる活火山)

小さい
 セン・ぜに  金部 qián
解字 旧字は錢で「金(金属)+戔 (小さい)」の会意形声。小さな銅などの金属の意で、金属の貨幣を表わす。新字体は銭に変化。
意味 (1)ぜに(銭)。かね。貨幣。「金銭キンセン」「日銭ひぜに」「銭湯セントウ」(銭を払って入浴する湯) (2)貨幣の単位。せん(銭)。1円の100分の1。
 セン・はなむけ  食部 jiàn
解字 「食偏の旧字(たべる)+戔 (小さい)」の会意形声。別れる人に贈るこじんまりとした酒食の宴。
意味 (1)はなむけ(餞)。送別する。※「はなむけ」とは旅立つ方向に馬の鼻を向けること。「餞送センソウ」(旅立つ人を見送る)「餞亭センテイ」(送別の宴の会場)「餞別センベツ」(旅立つ人に贈る金品や言葉)
 サン・さかずき  皿部 zhǎn
解字 「皿(うつわ)+戔(小さい)」の会意形声。小さいうつわで、さかずきをいう。皿(さら)は日本では平たい器だが、本来はふくらみのある器をいう。
意味 さかずき(盞)。小さい酒杯。「酒盞シュサン」「一盞イッサン」(一杯のさかずき)
うすい
 セン・ふだ  竹部 jiān
解字 「竹(たけ)+戔(うすい)」の会意形声。文字を書いた薄い竹のふだ。古代は筆写の材料に竹を用いたが、紙ができてからは紙のふだをいう。  
意味 (1)ふだ。はりふだ。「付箋フセン」 (2)手紙や文章を書く紙。「便箋ビンセン」「処方箋ショホウセン
 セン・ふだ  片部 jiān
解字 「片(木片)+戔(うすい)」の会意形声。文字を書きつける薄い木のふだ。のち、紙などのふだをいう。
意味 (1)ふだ(牋)。かきつけ。手紙。「牋簡センカン」(文書)「牋翰センカン」(紙と筆)「牋札センサツ」(手紙・書簡)「牋草センソウ(文書の下書き・草稿) (2)申し立てる書状。「牋奏センソウ」(上奏の文)
みじかい
 サン・かけはし  木部 zhàn  
解字 旧字は棧で「木(き)+戔(短い)」の会意形声。短い木や板を並べて作った構造物をいう。新字体は桟に変化。

蜀の桟道(「三国志街道をゆく」より)

木曽の桟(長野県上松町・木曽路名所図会)
意味 (1)かけはし(桟)。けわしい所に横に平行して掛け渡した橋。「桟道サンドウ」「蜀の桟道」(陝西省の沔ベン県より四川省(蜀)の剣閣に至る道で、難所の崖に短い木や板を用いて作った道)「木曽の桟(かけはし)」(木曽川沿いの通行困難な断崖に差し込んだ丸太の上に板などをあてて通り道とした桟道)「桟橋サンバシ」(船に人や荷物をのせるため短い木や板を用いて作った橋)(2)ねだ。床板を張るための横木。「桟敷サジキ」(土間や地面より一段と高く作った席)(3)さん(桟)。戸や障子のほね木。「ガラス戸の桟サン
 セン・ふむ  足部 jiàn  
解字 旧字は踐で「足(あし)+戔(みじかく・こきざみ)」の会意形声。足をみじかく小刻みにしっかりとふむこと。
意味 (1)ふむ(践む)。ふみ行なう。「践行センコウ」(ふみおこなう。実行すること)「実践ジッセン」 (2)のぼる。位につく。「践位センイ

形声字
 セン・すじ  糸部 xiàn
解字 「糸(いと)+戔(セン)」の形声。センという名の糸。[説文解字]は「縷(いと・いとのように長いもの・いとすじ)也(なり)」とし、いと・いとすじをいう。字はまた線につくる。
意味 (1)いと。いとすじ。すじ(綫)。「綫縷センル」(細い糸)「綫索センサク」(糸すじをたどってもとめる。消息をさぐる)「綫金センキン」(鉱脈)「綫車センシャ」(糸車)(2)ぬいいと。「綫脚センキャク」(縫い目)
<紫色は常用漢字>

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