増補改訂しました。
卒 ソツ・シュツ・おわる・にわかに・ついに 十部
解字 甲骨文第1字は衣と筆の形から成り、衣服に筆で印をつけることを表す。第2字は筆に又(て)を加え、手で筆をもつ形の異体字。甲骨文では祭祀名の用例しかないため、それ以外の意味は不明[甲骨文字辞典]。春秋戦国時代(古文)になると、筆の形が衣の下部に斜め線をつけた形に簡略化された。篆文は上部が亠に変化し、現代字で卒になった。卒の字の下部の一以外は衣が変化した形である。
私はこれまで[字統]の「死者の衣の襟を重ねて結びとめた形」説を引用し、この字の原義は人が亡くなる意として解字していたが、甲骨文字が筆で印をつけた形と判明したことで、解釈を変えざるをえない。後漢の許慎が[説文解字]で述べている「卒衣とは題識(識別するための印)有る者なり」が正しかったことになる。印の入ったユニホームを着た歩兵などを表し、集団で数が多い下層の人々を表すようである。
なお、「おわる」の意味については、「歹(死ぬ)+卒(ソツ)」の「歹卒」(これで一字。発音はソツ)という字があり、ソツの発音で死ぬ・おわる・つきる意なので、この字に由来する。また「にわか」の意味は「犭(いぬ)+卒(ソツ)」の猝ソツという字があり、犬が急な動きをする「にわか」の意味があることから、この字に由来する。なお、卒の俗字に「卆」があり、卒を含む新字体では、卒⇒卆に変化する。
意味 (1)雑兵。歩兵。人夫。小者。しもべ。下級役人。「兵卒ヘイソツ」(軍隊で最下位の階級)「従卒ジュウソツ」(将校の世話をする兵)「獄卒ゴクソツ」(獄の下級役人)「隷卒レイソツ」(役所にあって特定の賤役に従事する者) (2)おおい。多くの人。あつまり。「卒伍ソツゴ」(周代の兵隊の編成単位。卒は百人一組、伍は五人一組) (3)おわる(卒わる)。おえる(卒える)。つくす。つきる。「卒業ソツギョウ」「卒章ソツショウ」(詞や文の最後の章) (4)しぬ。大夫の死をいう。「卒去ソッキョ」「卒年ソツネン」(①死んだときの年齢。②年の終わり) (5)にわか(卒か)。急に。「卒倒ソットウ」「卒然ソツゼン」「卒爾ソツジ」(にわかなさま) (6)ついに。 (7)ことごとく。
イメージ
兵卒などの「下級階層の集団」(卒・倅)
下級兵卒はユニフォームを着て「そろう」(粋・萃・膵)
意味(3)の「おわる・つきる」(酔・悴・瘁)
意味(4)の「にわか」(猝・焠・淬・啐)
「形声字」(翠・枠)
音の変化 ソツ:卒・猝 スイ:酔・悴・粋・萃・膵・淬・翠 サイ:砕・倅・焠・淬・啐 わく:枠
下級階層の集団・小者
倅 サイ・ソツ・せがれ イ部
解字 「イ(人)+卒(小者)」の会意形声。卒は小者(集団で数が多い下層の人々)の意。これにイ(人)をつけた倅は、人に付き添う小者の意。いつもそばに付き添うので、「そえ・そえる」「副フク・つきそう」の意味になる。[説文解字]は「副也。人に従い卒ソツの聲(声)」とする。日本では「せがれ(息子)」の意味で用いる。
意味 (1)そう。そえる。副としてそなえる。「倅車サイシャ」(そえぐるま。予備の車)「倅馬サイバ」(そえ馬。予備の馬)「倅弐サイジ」(副官)「遊倅ユウソツ」(未だ仕官していない者) (2)[日本]せがれ(倅)。息子。
そろう
粋[粹] スイ・いき 米部
解字 旧字は粹で「米(こめ)+卒(そろう)」の会意形声。米がそろっていてまじりけがないこと。新字体は、粹⇒粋に変化。
意味 (1)まじりけがない。「純粋ジュンスイ」 (2)もっとも優れている。質がよい。「抜粋バッスイ」 (3)[国]いき(粋)。すい。あかぬけしている。「粋人スイジン」
萃 スイ・あつまる 艸部
解字 「艸(くさ)+卒(そろう)」 の会意形声。草がそろう意でくさむらのこと。転じてあつまる意となる。
意味 (1)くさむら。 (2)あつまる(萃まる)。あつめる。「萃美スイビ」(よい物をあつめる)「萃然スイゼン」(あつまるさま)「萃聚スイシュウ」(萃も聚も、あつめる意)
膵 <国字> スイ 月部にくづき
解字 「月(からだ)+萃(あつまる)」の会意形声で国字。消化酵素を十二指腸内へ分泌する外分泌腺とランゲルハンス島とよばれる内分泌腺を含む細胞群があつまる身体の器官。江戸時代後期の蘭方医である宇田川 玄真が造字し『医範堤綱』で使用した。中国でもこの字を用いている。
意味 すいぞう(膵臓)。胃の後ろにあって膵液とホルモンを分泌する臓器。消化と代謝に関与する。「膵臓癌スイゾウガン」「膵島スイトウ」(膵臓の中にあるインスリンを作る細胞の塊。膵臓の中には約100万個の膵島がある。ランゲルハンス島)
おわる・つきる
酔[醉] スイ・よう 酉部
解字 旧字は醉で「酉(さけ)+卒(つきる)」の会意形声。酒がおわるまでまで飲むこと。[説文解字]は「卒(つき)る也(なり)。其の度量(酒を入れた容器の量)が卒(つき)る。亂(みだれ)る於(に)至(いたら)不(ず)也(なり)」として、容器の酒が尽きるまで飲むが、乱れる状態にならない程度とする。新字体は醉⇒酔に変化。
意味 (1)よう(酔う)。酒に酔う。「小酔ショウスイ」(ほろよい)「泥酔デイスイ」「酔狂スイキョウ」(酔って常軌を逸する) (2)うっとりする。「心酔シンスイ」「陶酔トウスイ」
悴 スイ・やつれる 忄部
解字 「忄(心)+卒(おわる)」の会意形声。死に近い人の状態をいい、すべてものの衰えたさまをいう。
意味 (1)やつれる(悴れる)。やせおとろえる。「憔悴ショウスイ」(憔も悴も、やつれる意)「悴容スイヨウ」(やつれたさま) (2)[和訓]しぼむ。かじかむ。
瘁 スイ・つかれる 疒部
解字 「疒(やまい)+卒(=悴。やせおとろえる)」 の会意形声。病でやせおとろえること。
意味 つかれる(瘁れる)。やむ。やつれる。「憔瘁ショウスイ」(やつれおとろえる=憔悴)「殄瘁テンスイ」(つかれきる)「尽瘁ジンスイ」(心を尽くして、つかれきる)「瘁瘁スイスイ」(やつれはてる)
にわか
猝 ソツ・ソチ・にわか 犭部
解字 「犭(いぬ)+卒(ソツ)」の形声。犬が急な動きをすることを猝ソツという。[説文解字]は「犬、艸(草)より暴(あば)れ出て人を逐(お)う也(なり)」とする。卒ソツに「にわか」の意味があるのは、同音の猝ソツによる。
意味 にわか(猝か)。思いがけぬことが急におこるさま。だしぬけに。「倉猝ソウソツ」(あわただしいさま。突然)「猝然ソツゼン」「猝嗟ソッサ」(にわかに嘆き声をだす)
焠 サイ・にらぐ・やく 火部
解字 「火(ひ)+卒(にわか)」 の会意形声。刀などの材料にする鉄を熱した火ににわかにいれること。こうして焼いた鉄を取り出してたたき、強い鉄をつくる。
意味 にらぐ(焠らぐ)。やく。「焠掌サイショウ」(手のひらをやく。眠気をさますため手のひらをやいて勉強する。努力することの例え)「焠刀サイトウ」(刀をにらぐ)
淬 サイ・にらぐ 氵部
解字 「氵(みず)+卒(にわか)」 の会意形声。刀をきたえる最終段階で、焼き入れした刀をにわかに水にいれること。にらぐ。きたえる意。また、転じて、はげむ意。
意味 (1)にらぐ(淬ぐ)。きたえる。「淬礪サイレイ」(淬はきたえる、礪はとぐ意。刃物をきたえ、とぐこと。転じて自分の修養につとめる) (2)はげむ。「淬励サイレイ」(淬も励も、はげむ意)「淬勉サイベン」(はげみ、つとめる)
啐 サイ・ソツ・よぶ 口部
解字 「口(くち)+卒(にわか)」 の会意形声。鳥などが口からにわかに出す音。鳥のなきごえ、よぶ意となる。また、サイの発音で、少しのむ・なめる意となる。
意味 (1)なきごえ。よぶ。「啐啄同時ソツタクドウジ」(啐はひなが孵化のとき殻の中で鳴く声、啄は母鳥が外から殻をつつくこと。逸することのできない好機をいう) (2)のむ。なめる。「啐酒サイシュ」(酒をなめる。少しのむ)「啐嘗サイショウ」(啐も嘗も、なめる意。味見すること)
形声字
砕[碎] サイ・くだく・くだける 石部
解字 旧字は碎で 「石(いし)+卒(サイ)」 の形声。[説文解字]は「䃺マ(磨マの異体字。石臼でひく)也(なり)。石に従い卒サイの聲(声)」とし、石うすでひいて(䃺マ)、物を細かくすることをいう。新字体は、碎⇒砕に変化。
意味 くだく(砕く)。くだける(砕ける)。「砕米サイマイ」(細かく砕けた米粒)「粉砕フンサイ」(粉々にする)「玉砕ギョクサイ」(玉のごとく砕け死ぬ)
翠 スイ・かわせみ 羽部
翡翠かわせみ(「暦生活」翡翠より)
解字 「羽(はね)+卒(スイ)」 の形声。スイという名の青緑色の羽をもつ鳥をいう。[説文解字]は「青い羽の雀(小鳥)也(なり)。羽に従い卒(スイ)の聲(声)」とする。転じて青緑の色、青緑色の宝石をいう。
意味 (1)かわせみ(翠)。水辺に生息する小鳥。背の羽が青色、腹部の毛が緋色(濃い赤)なので、翡翠(かわせみ)とも書く。 (2)みどり(翠)。「翠雨スイウ」(青葉に降る雨)「翠草スイソウ」「翠雲スイウン」(碧ヘキ雲)(3)青緑色の玉。「翠玉スイギョク」「翡翠ヒスイ」(青緑色の玉。宝石の翡翠は赤い色は含まれていない)
故宮博物院の翠玉白菜(「ウィキペディア・翠玉白菜」を参照)
枠 <国字> わく 木部
解字 「木(き)+卆(ワク)」 の形声。ワクは籆ワク・䈅ワクに通じる。この二字は糸をまきつける道具で、わく・かせ、の意がある。木偏をつけた「枠わく」は、木製の糸わくを表す国字。転じて、木枠・窓枠などの意味になる。
糸枠(「麻絲の縁 道具・材料」より)
意味 (1)わく(枠)。①糸をまきつける具。「糸枠いとわく」②木や竹・金属などの細い材で器具の縁としたもの。「木枠きわく」「窓枠まどわく」③輪郭の線。「枠でかこむ」 (2)かこい。制約。「枠組み」(物事の仕組み)「予算の枠」(予算の制約)
<紫色は常用漢字>
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卒 ソツ・シュツ・おわる・にわかに・ついに 十部
解字 甲骨文第1字は衣と筆の形から成り、衣服に筆で印をつけることを表す。第2字は筆に又(て)を加え、手で筆をもつ形の異体字。甲骨文では祭祀名の用例しかないため、それ以外の意味は不明[甲骨文字辞典]。春秋戦国時代(古文)になると、筆の形が衣の下部に斜め線をつけた形に簡略化された。篆文は上部が亠に変化し、現代字で卒になった。卒の字の下部の一以外は衣が変化した形である。
私はこれまで[字統]の「死者の衣の襟を重ねて結びとめた形」説を引用し、この字の原義は人が亡くなる意として解字していたが、甲骨文字が筆で印をつけた形と判明したことで、解釈を変えざるをえない。後漢の許慎が[説文解字]で述べている「卒衣とは題識(識別するための印)有る者なり」が正しかったことになる。印の入ったユニホームを着た歩兵などを表し、集団で数が多い下層の人々を表すようである。
なお、「おわる」の意味については、「歹(死ぬ)+卒(ソツ)」の「歹卒」(これで一字。発音はソツ)という字があり、ソツの発音で死ぬ・おわる・つきる意なので、この字に由来する。また「にわか」の意味は「犭(いぬ)+卒(ソツ)」の猝ソツという字があり、犬が急な動きをする「にわか」の意味があることから、この字に由来する。なお、卒の俗字に「卆」があり、卒を含む新字体では、卒⇒卆に変化する。
意味 (1)雑兵。歩兵。人夫。小者。しもべ。下級役人。「兵卒ヘイソツ」(軍隊で最下位の階級)「従卒ジュウソツ」(将校の世話をする兵)「獄卒ゴクソツ」(獄の下級役人)「隷卒レイソツ」(役所にあって特定の賤役に従事する者) (2)おおい。多くの人。あつまり。「卒伍ソツゴ」(周代の兵隊の編成単位。卒は百人一組、伍は五人一組) (3)おわる(卒わる)。おえる(卒える)。つくす。つきる。「卒業ソツギョウ」「卒章ソツショウ」(詞や文の最後の章) (4)しぬ。大夫の死をいう。「卒去ソッキョ」「卒年ソツネン」(①死んだときの年齢。②年の終わり) (5)にわか(卒か)。急に。「卒倒ソットウ」「卒然ソツゼン」「卒爾ソツジ」(にわかなさま) (6)ついに。 (7)ことごとく。
イメージ
兵卒などの「下級階層の集団」(卒・倅)
下級兵卒はユニフォームを着て「そろう」(粋・萃・膵)
意味(3)の「おわる・つきる」(酔・悴・瘁)
意味(4)の「にわか」(猝・焠・淬・啐)
「形声字」(翠・枠)
音の変化 ソツ:卒・猝 スイ:酔・悴・粋・萃・膵・淬・翠 サイ:砕・倅・焠・淬・啐 わく:枠
下級階層の集団・小者
倅 サイ・ソツ・せがれ イ部
解字 「イ(人)+卒(小者)」の会意形声。卒は小者(集団で数が多い下層の人々)の意。これにイ(人)をつけた倅は、人に付き添う小者の意。いつもそばに付き添うので、「そえ・そえる」「副フク・つきそう」の意味になる。[説文解字]は「副也。人に従い卒ソツの聲(声)」とする。日本では「せがれ(息子)」の意味で用いる。
意味 (1)そう。そえる。副としてそなえる。「倅車サイシャ」(そえぐるま。予備の車)「倅馬サイバ」(そえ馬。予備の馬)「倅弐サイジ」(副官)「遊倅ユウソツ」(未だ仕官していない者) (2)[日本]せがれ(倅)。息子。
そろう
粋[粹] スイ・いき 米部
解字 旧字は粹で「米(こめ)+卒(そろう)」の会意形声。米がそろっていてまじりけがないこと。新字体は、粹⇒粋に変化。
意味 (1)まじりけがない。「純粋ジュンスイ」 (2)もっとも優れている。質がよい。「抜粋バッスイ」 (3)[国]いき(粋)。すい。あかぬけしている。「粋人スイジン」
萃 スイ・あつまる 艸部
解字 「艸(くさ)+卒(そろう)」 の会意形声。草がそろう意でくさむらのこと。転じてあつまる意となる。
意味 (1)くさむら。 (2)あつまる(萃まる)。あつめる。「萃美スイビ」(よい物をあつめる)「萃然スイゼン」(あつまるさま)「萃聚スイシュウ」(萃も聚も、あつめる意)
膵 <国字> スイ 月部にくづき
解字 「月(からだ)+萃(あつまる)」の会意形声で国字。消化酵素を十二指腸内へ分泌する外分泌腺とランゲルハンス島とよばれる内分泌腺を含む細胞群があつまる身体の器官。江戸時代後期の蘭方医である宇田川 玄真が造字し『医範堤綱』で使用した。中国でもこの字を用いている。
意味 すいぞう(膵臓)。胃の後ろにあって膵液とホルモンを分泌する臓器。消化と代謝に関与する。「膵臓癌スイゾウガン」「膵島スイトウ」(膵臓の中にあるインスリンを作る細胞の塊。膵臓の中には約100万個の膵島がある。ランゲルハンス島)
おわる・つきる
酔[醉] スイ・よう 酉部
解字 旧字は醉で「酉(さけ)+卒(つきる)」の会意形声。酒がおわるまでまで飲むこと。[説文解字]は「卒(つき)る也(なり)。其の度量(酒を入れた容器の量)が卒(つき)る。亂(みだれ)る於(に)至(いたら)不(ず)也(なり)」として、容器の酒が尽きるまで飲むが、乱れる状態にならない程度とする。新字体は醉⇒酔に変化。
意味 (1)よう(酔う)。酒に酔う。「小酔ショウスイ」(ほろよい)「泥酔デイスイ」「酔狂スイキョウ」(酔って常軌を逸する) (2)うっとりする。「心酔シンスイ」「陶酔トウスイ」
悴 スイ・やつれる 忄部
解字 「忄(心)+卒(おわる)」の会意形声。死に近い人の状態をいい、すべてものの衰えたさまをいう。
意味 (1)やつれる(悴れる)。やせおとろえる。「憔悴ショウスイ」(憔も悴も、やつれる意)「悴容スイヨウ」(やつれたさま) (2)[和訓]しぼむ。かじかむ。
瘁 スイ・つかれる 疒部
解字 「疒(やまい)+卒(=悴。やせおとろえる)」 の会意形声。病でやせおとろえること。
意味 つかれる(瘁れる)。やむ。やつれる。「憔瘁ショウスイ」(やつれおとろえる=憔悴)「殄瘁テンスイ」(つかれきる)「尽瘁ジンスイ」(心を尽くして、つかれきる)「瘁瘁スイスイ」(やつれはてる)
にわか
猝 ソツ・ソチ・にわか 犭部
解字 「犭(いぬ)+卒(ソツ)」の形声。犬が急な動きをすることを猝ソツという。[説文解字]は「犬、艸(草)より暴(あば)れ出て人を逐(お)う也(なり)」とする。卒ソツに「にわか」の意味があるのは、同音の猝ソツによる。
意味 にわか(猝か)。思いがけぬことが急におこるさま。だしぬけに。「倉猝ソウソツ」(あわただしいさま。突然)「猝然ソツゼン」「猝嗟ソッサ」(にわかに嘆き声をだす)
焠 サイ・にらぐ・やく 火部
解字 「火(ひ)+卒(にわか)」 の会意形声。刀などの材料にする鉄を熱した火ににわかにいれること。こうして焼いた鉄を取り出してたたき、強い鉄をつくる。
意味 にらぐ(焠らぐ)。やく。「焠掌サイショウ」(手のひらをやく。眠気をさますため手のひらをやいて勉強する。努力することの例え)「焠刀サイトウ」(刀をにらぐ)
淬 サイ・にらぐ 氵部
解字 「氵(みず)+卒(にわか)」 の会意形声。刀をきたえる最終段階で、焼き入れした刀をにわかに水にいれること。にらぐ。きたえる意。また、転じて、はげむ意。
意味 (1)にらぐ(淬ぐ)。きたえる。「淬礪サイレイ」(淬はきたえる、礪はとぐ意。刃物をきたえ、とぐこと。転じて自分の修養につとめる) (2)はげむ。「淬励サイレイ」(淬も励も、はげむ意)「淬勉サイベン」(はげみ、つとめる)
啐 サイ・ソツ・よぶ 口部
解字 「口(くち)+卒(にわか)」 の会意形声。鳥などが口からにわかに出す音。鳥のなきごえ、よぶ意となる。また、サイの発音で、少しのむ・なめる意となる。
意味 (1)なきごえ。よぶ。「啐啄同時ソツタクドウジ」(啐はひなが孵化のとき殻の中で鳴く声、啄は母鳥が外から殻をつつくこと。逸することのできない好機をいう) (2)のむ。なめる。「啐酒サイシュ」(酒をなめる。少しのむ)「啐嘗サイショウ」(啐も嘗も、なめる意。味見すること)
形声字
砕[碎] サイ・くだく・くだける 石部
解字 旧字は碎で 「石(いし)+卒(サイ)」 の形声。[説文解字]は「䃺マ(磨マの異体字。石臼でひく)也(なり)。石に従い卒サイの聲(声)」とし、石うすでひいて(䃺マ)、物を細かくすることをいう。新字体は、碎⇒砕に変化。
意味 くだく(砕く)。くだける(砕ける)。「砕米サイマイ」(細かく砕けた米粒)「粉砕フンサイ」(粉々にする)「玉砕ギョクサイ」(玉のごとく砕け死ぬ)
翠 スイ・かわせみ 羽部
翡翠かわせみ(「暦生活」翡翠より)
解字 「羽(はね)+卒(スイ)」 の形声。スイという名の青緑色の羽をもつ鳥をいう。[説文解字]は「青い羽の雀(小鳥)也(なり)。羽に従い卒(スイ)の聲(声)」とする。転じて青緑の色、青緑色の宝石をいう。
意味 (1)かわせみ(翠)。水辺に生息する小鳥。背の羽が青色、腹部の毛が緋色(濃い赤)なので、翡翠(かわせみ)とも書く。 (2)みどり(翠)。「翠雨スイウ」(青葉に降る雨)「翠草スイソウ」「翠雲スイウン」(碧ヘキ雲)(3)青緑色の玉。「翠玉スイギョク」「翡翠ヒスイ」(青緑色の玉。宝石の翡翠は赤い色は含まれていない)
故宮博物院の翠玉白菜(「ウィキペディア・翠玉白菜」を参照)
枠 <国字> わく 木部
解字 「木(き)+卆(ワク)」 の形声。ワクは籆ワク・䈅ワクに通じる。この二字は糸をまきつける道具で、わく・かせ、の意がある。木偏をつけた「枠わく」は、木製の糸わくを表す国字。転じて、木枠・窓枠などの意味になる。
糸枠(「麻絲の縁 道具・材料」より)
意味 (1)わく(枠)。①糸をまきつける具。「糸枠いとわく」②木や竹・金属などの細い材で器具の縁としたもの。「木枠きわく」「窓枠まどわく」③輪郭の線。「枠でかこむ」 (2)かこい。制約。「枠組み」(物事の仕組み)「予算の枠」(予算の制約)
<紫色は常用漢字>
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