まつかぜ日記

暮らしの中で思うこと

ハスカップという名の猫

2007年03月26日 | 
図書館の棚に鮮やかなピンク色の本を見つけました。
「ココにいますよ―♪」と唄いかけてくるような存在感に
すいよせられる様にして、本を手にしました。

『モンテロッソのピンクの壁』
=作:江國香織*荒井良二:絵=

主人公は
うす茶色の猫で、からだの大きさは中ぐらい、性格は楽天的で、
金茶色の目
をしたハスカップという名の猫です。

赤い屋根の洋館に住む年とったご婦人と暮らすハスカップは晴眠雨眠、いつも寝ています。
そして、いつもピンクの壁の夢を見るのでした。
夢の中のピンクの壁のある場所こそ、自分がどうしても行かなくてはいけない場所なのだ…思いに駆られるハスカップは、そこがモンテロッソであると知り、旅に出ます。

頁を繰るたびに現れる風景は、瑞々しく輝いていて
モンテロッソに向かう彼女の
期待に胸躍らせる、その鼓動が伝わってくるようです。

ハスカップは、世間に対する礼儀もわきまえていますし
猫としての誇りも持っています。
そして、かわいい嘘をつくのも上手な猫なのです。

かなり魅力的な猫ですね。

そんな彼女にも密かに抱えている心配ごとが一つありました。
それは・・・
もしもライオンに会ってしまったらどうしよう、ということでした。
ハスカップは昔から、自分はライオンむきだ、と考えていたのです。
ですから、もしも旅のとちゅうでライオンの群れにあったりしたら、
彼らの魅力に抵抗できず、どうしたって仲間になっちゃうにきまっています。
そうなればモンテロッソにはいかれません。
ああ、そうなったらどうしよう。


やるべき事も、大切なものも、ハッキリと解っているのに
それでも今ソレに出会ってしまったなら、どうにも心が揺さぶられてしまう。
その魅力には抵抗できそうも無い、もの。。。

自分をカタチつくっている遺伝子の根っ子の部分に、潜んでいる熱いものを
私たちは携えて生きているのだ、と思う事があります。
それを一つも認めずに暮らし続ける事も出来るのでしょうけれど、
それが何か、をちゃんと知っている者のほうが味わい深い(というのでしょうか)
面白い人生なのではないかと思うのです。

<出会ってしまったら、どうしたってライオンの仲間になちやうに決まっている…>
心配し続けているハスカップは何てチャーミングな女の子なのでしょう!
彼女の魅力にすっかりやられてしまいました。(笑)

そして物語は、夢と現実が一つに重なり合ったような不思議な終わりをむかえます。


*私が出会った『モンテロッソのピンクの壁』は1992年のクリスマスに発行されたものでA4版位の大きさのものです。残念ながら表紙の画像が見つけ出せませんでした。
文庫サイズも出ているようですが、表紙の絵が変わっています。中の絵も描きなおされているのか?今度調べてみようと思います。