三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「朽ちないサクラ」

2024年06月23日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「朽ちないサクラ」を観た。

 小説が原作だけあって、起承転結がしっかりと纏まっている。序盤で事件が起きて、その捜査の過程で人間関係が徐々に明らかにされていく。無理のない展開で、次にどうなるのかを考えながら鑑賞することになる。よく出来た作品だ。

 公安警察は、治安の維持を目的とするが、内実は国家体制に反対する人物や組織の監視と違法捜査が主な仕事だ。戦前の特高(特別高等警察)と似ている。かつて「蟹工船」で有名な小説家小林多喜二を、治安維持法という反共の法律に基づいて拷問死させた人権無視の組織だ。
 治安維持法は破防法(破壊活動防止法)と名前を変えたが、実質的に反共活動は続いている。やはり反共であるアメリカの反共組織であるCIAの影響を受けていると、当方は睨んでいる。
 日本の反共組織である公安警察は、各都道府県警察に設置されたが、財布は別だ。すなわち国家予算によって運営されている。だから警察庁が直接指揮する。その警察庁のホームページには、日本共産党は暴力革命の組織だと、堂々と書かれている。
 公安警察の基本は反共だが、現状の国家体制を揺るがす勢力の取り締まりにも余念がない。そのひとつがカルト教団である。松本サリン事件や地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教は言うまでもないが、意外と反共のカルトである統一教会(勝共連合)も監視対象なのではないかと、当方は思っている。
 アベシンゾーは別の人間に射殺されたという主張がある。アベシンゾーは統一教会に深入りし過ぎて、韓鶴子に阿るような発言をしていた。それが公安警察の危機感を煽った。また、アベが憲法を変えて日本を戦争のできる国にしようとしていたことが、反体制的とみなされて、山上徹也を監視していた公安警察が、山上の銃撃に乗じて高性能の狙撃銃で殺した。総理大臣を辞めてただの人になったから、抹殺してもいいと判断されたという説だ。強ち陰謀論で片付けられないかもしれない。

 杉咲花が演じた主人公森口泉は、公安警察の実態など何も知らなかったという設定で、警察学校は出たものの、警察官ではなく警察事務として働いている。捜査の経験はないが、いくつか浮き上がったヒントから、どこに行って誰に話を聞けばいいかの勘所がある。

 泉の仕入れた情報で捜査が進むのだが、どこか違和感がある。調子がよすぎるのだ。豊原功補が演じた人のいい梶山刑事は、泉の捜査能力を評価するが、泉本人は素直に喜べない。もちろん自分の不信が原因で友人を死に追いやったのではないかという罪悪感もある。しかしそれ以上に、罪のない友人が殺された理不尽に対する怒りがある。
 つまり泉の感情が、物語を引っ張る原動力になっていて、演じた杉咲花は見事だった。突き進む彼女は、持ち前の分析力と洞察力によって、ついに真相を描き出す。それは果たして正解なのか。
 原作がそうなのかはわからないが、本作品には強権に対するそこはかとない確執が感じられる。その雰囲気がとてもいい。地方の県警本部が舞台だが、スケールの大きな物語だった。

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