保存鉄道車両巡りの旅2

鉄道車両の静態保存車を紹介するブログです。

ワム60000とワラ1の違い(見分け方)

2022-06-10 22:51:56 | 廃車体あれこれ

国鉄時代の二軸貨車であるワム60000とワラ1。両者は積載量は違うもののよく似た外観で、当ブログ内でも両者を取り違えている箇所や「どちらか分からない」などと記載していた部分が多数あったかと思います。

この度ふと思いつきで両者の見分け方を調べてみました。ネット上では見分け方を紹介している方が多数いらっしゃるため何番煎じのネタか分かりませんし、廃車体を趣味にする者として今まで無頓着だったことは大変恥ずかしいことですが、何かの参考にして頂ければと解説させて頂きます。

 

撮影場所:北海道深川市納内町

車両:ワラ1(番号不明)

(2022年6月10日撮影)

これはワラ1の廃車体ですが廃車当時の塗装のまま一度も再塗装されていないようで、番号や標記は消えているためこれらから形式を特定することは不可能です。では、どのように見分けましょうか?

 

(納内町のワラ1です)

ワラ1だと見分けるポイントの1つめが妻面の突起です。妻面上部の中央には大きな通気口が付いていますがその両側に2つずつ(片側妻面で計4個)のリベットがあります。

これがあればワラ1、無ければワム60000だと見分けられます。

保存や再利用に際してわざわざ削り取ることは無いと思いますが、個体によっては腐食でリベットが脱落しているものもあります。

 

(納内町のワラ1です)

次にワラ1だと見分けるポイントは、側面引戸レールの位置です。

ワラ1は側面の下端とほぼ同じ位置にレールがあり、ワム60000は下端より少し上にレールが取り付けられています。

 

撮影場所:北海道三笠市幌内町2丁目287 三笠鉄道村

車両:ワム66172

(2010年10月1日撮影)

三笠鉄道村で保存されているワム60000です。車号が残されていますが、先ほど記載した見分け方には当てはまっているでしょうか?

 

(三笠のワム66172です)

妻面上部の通気口の左右に突起がありません。

 

(三笠のワム66172です)

下側の側面引戸レールが、車体裾(側面下端)から少し上側に取り付けられています。

なおワム60000のうち初期型と呼ばれる車両(ワム60000~61299の1300両)は、側面と妻面の接合部に凸部があるため(側面が妻面より凹んで見える。俗に「額縁」と呼称)この見分け方を使わなくても一発で判別可能です。この方法はワム60000後期型(ワム61300以降の7280両あまり)とワラ1を見分ける方法と言えます。

 

撮影場所:北海道旭川市東旭川町倉沼

車両:ワム60000(番号不明)

(2011年4月12日撮影)※2022年時点で撤去済

ここからは例題編です。ワム60000後期型です。妻面の突起が無いこととドアレールの位置で判別可能ですね。

 

撮影場所:北海道山越郡長万部町双葉 JR函館本線二股駅

車両:ワラ1(番号不明)

(2016年1月5日撮影)

貨車を改造した駅舎に転用されたワラ1です。側面引戸部分に壁を作り住宅用のアルミ戸を取り付けているので、オリジナルのドアレールは撤去されています。

 

(JR二股駅です)

しかし妻面上部にはワラ1の証である4カ所の突起がしっかり残っています。塗色の関係で少し見にくいですが、うっすら雪が積もっています。

 

撮影場所:北海道根室市納沙布

車両:ワム60000(番号不明)

(2014年6月18日撮影)

おそらく日本最東端に位置する保存車(放置車)と思われる車両です。

海岸まで約30mということと濃い海霧が頻繁に発生する場所なので車体は腐りかかっていますが、ドアレールの位置と妻面リベットが無いことからワム60000後期型だと分かります。

 

撮影場所:北海道標津郡標津町北1条西2丁目 根室標津駅転車台跡

車両:ワム60000、ワラ1(いずれも番号不明)

(2019年7月18日撮影)

ここには2両の廃貨車が置かれていますが、手前がワム60000後期型、奥がワラ1のようです。

ワラ1はワム60000よりわずかに全高が大きいようですが、このように下回りが失われてかつ真っ平ではない地面に置かれていると車高では区別出来ません。

加えて放置車では周囲に雑草が生い茂っていることも多いため(ドアレールが見えない)、妻面上部の突起が唯一見分ける方法となることもあります。逆に建物に取り込まれたり後付けで屋根が取り付けられているケースもありますので、そうなると妻面上部が見えない場合もあります。

 

古くからのファンの方々や保存車趣味の方々には常識のようなことだったかもしれませんが、自分自身の備忘録も兼ねて記事として残しておこうと思った次第です。

これまでに投稿した記事内でもワム60000とワラ1の区別が付いていない箇所が多数あるかと思いますが、見つけ次第訂正していきます。


日本最東端の保存車とは?

2014-07-01 13:05:00 | 廃車体あれこれ

当ブログでは、保存を目的とした鉄道車両を中心に紹介しています。大雑把な区切りとして、特に国鉄末期に大量に民間転用されたいわゆる「ダルマ貨車」は対象外としています。今回、当ブログで通常は対象外としているダルマ貨車も含めての「日本最東端の車両」を探してみました。
このあたりの顛末は、先に紹介した最北端編と同じです。最北端編の記事を事前にお読み頂くことをおすすめします。


保存を目的とした車両の最東端は、別海町奥行の別海村営軌道の車両たちになります(東経145度12分)。

今回の捜索の条件として、北方四島は対象外としています。これは現状では観光や趣味目的での訪問が実質不可能であるためで、私の政治的思想とは関係がありません。
ネット上で事前に調べたところ、最北端編の時と違い捜索範囲を大幅に絞れる物件を発見していました。まずはこちらをご紹介します。

※2024年2月20日に車両の撤去状況に合わせて加筆しました。


場所:根室市温根元
保存されていた車両:ワラ1(番号不明)
(東経145度46分53秒)
温根元のオンネモトチャシ入口に置かれています。チャシとはアイヌの城の跡で、このオンネモトチャシは日本百名城にも選定されています(※この車両は撤去済みです)。
このワラ1があるお蔭で、捜索範囲はこれより東側約2.5km四方ほどの範囲に限定されました。捜索は前回同様自動車で行い、運転しながらですがかなり細い道まで探しました。そして発見出来たのが以下の物件です。

場所:根室市納沙布
保存車両:ワム60000(番号不明)
(東経145度48分45秒)
納沙布岬灯台より約300m西側に置かれています。1度黄緑色で塗装されたようですがかなり腐食が進み、標記類の判読は不可能です。漁具や資材の保管庫に使われているようです。
「日本最東端」という事以外、現車は特に変哲の無い典型的なダルマ貨車です。

実は納沙布地区には、この他に1件ダルマ貨車があります。順にご紹介します。

場所:根室市納沙布
保存車両:レム5000形レム63?2(「?」部分は判読不能)
(東経145度48分45秒)
2番目に東に位置する廃車体です。扉はシャッターに改造されていますが側面の青帯が良い状態で残ります。
右側に小さく写るのは日本最東端と思われるバスの廃車体です。


場所:根室市納沙布
保存されていた車両:ワム80000(番号不明)
(東経145度48分41秒)
3番目に東にあった車両です(※この車両は撤去済みです)。民家の庭先で物置に使われているようです。


場所:根室市納沙布
保存車両:ワラ1(番号不明)
(東経145度48分30秒)
3番目(かつては4番目)に東にある車両です。同じ納沙布地区でも交番付近からは少し離れた場所にあります。


場所:根室市納沙布
保存されていた車両:レム5000(番号不明)
(東経145度48分28秒)
5番目に東にあった車両です。上記の3番目(かつては4番目)のワラ1とは30m程しか離れていません。車両の背後は海でかなり過酷な環境に置かれていますが、錆以外は現役当時の姿をよく残しています。

続いて納沙布地区からは外れますが、冒頭のオンネモトチャシより東側にある車両を紹介します。

場所:根室市珸瑤瑁(ごようまい)3丁目
保存車両:レム5559
(東経145度48分20秒)
4番目(かつては6番目)に東にある車両です。塗装が剥がれかけていますが良く原形を保っています。


場所:根室市珸瑤瑁1丁目
保存車両:ワラ1形(番号不明)
(東経145度47分48秒)
5番目(かつては7番目)に東にある車両です。現役当時の塗装がそのままで置かれていますが、番号部分は腐食していて判読出来ませんがワラ1形です。

意外なことに東の果てにかなりの廃車体を確認出来ました。オンネモトチャシの貨車は8番目に東に位置していましたが撤去されました(現在オンネモトチャシ以東には5両の貨車が存在します)。
海沿いの地域ですので塩害や強風などかなり過酷な環境ですが、国鉄貨車の頑丈さを思い知らされます。
ダルマ貨車は体系的なデータが存在せずほとんどのファンに見向きもされてこなかった存在ですが、国鉄民営化からもうすぐ30年が経とうとする中で徐々に数を減らしていくことと思います。当たり前に見られる光景が当たり前ではなくなる時代が来ると思うと、記録の大切さを感じさせられます。
(2014年6月調査、2024年2月加筆修正)

2015年12月8日 上記車両の現存を確認。


日本最北端の保存車とは?

2014-05-17 00:00:00 | 廃車体あれこれ

日本で一番北にある保存鉄道車両は何か?という問いがあったならば、答えは1つとは限りません。それは「保存車」の定義が曖昧だからです。
当ブログでは保存されていたり放置されている鉄道車両を紹介していますが、例外として「ダルマ貨車は紹介しない」という事にしています。ダルマ貨車とは主に国鉄末期に大量に余剰になった貨車が民間へ売却された物を指し、今でも全国に多数残っています。
平たく言えば「鉄道趣味の対象になるかどうか?」ということであり、私自身も厳密な線引きは出来ていません。下周りが無い有蓋車でも大切に保存していれば趣味の対象になることもありますし、下周りが残っていても捨てるように放置されているのであれば対象外になることもあります。何となくで線引きを感じて頂ければ幸いです。

(典型的なダルマ貨車。みなさんの近所にもあるのではないでしょうか。これをブログで紹介すると件数が多すぎて収拾がつかなくなるからという事情もあります。)

保存車趣味で対象になるもので言えば、日本最北端の車両は「豊富町JR豊富駅前のオエ61(北緯45度06分)」です(参考→ http://train.ap.teacup.com/osyakatravel/63.html)。

そこで前述した普段であれば趣味の対象外になる廃車体も含めれば最北の車両は何だろうか?と思い、探索してみました。
ちなみに過去に存在した保存車ではこれより北のものがありましたので参考までにご紹介します。
(1)稚内市開運 北防波堤ドーム C55-49(北緯45度25分)(1996年解体)
(2)浜頓別町頓別 キハ22-142(北緯45度07分)(2009年頃解体)

ダルマ貨車等の保存や放置の情報は無いものかと調べましたが有力な情報は得られず、手がかりの無いまま現地へ行きローラー作戦を行う事にしました。
捜索は自動車で行いました。運転しながらですので見落としがある可能性がありますが、稚内市内の野寒布岬~JR稚内駅の間、富士見地区、声問漁港周辺はかなり細い道まで捜索しましたが発見出来ませんでした。さらに国道238号線を稚内市街から宗谷岬を経由して浜頓別まで走りましたがこの沿線でも発見出来ませんでした。

よって、現在確認出来た分での最北端の保存・放置車はこれになります。

場所:稚内市抜海村上勇知 JR勇知駅(北緯45度15分)
車両:ヨ3500またはヨ5000(車号不明)

かつての車掌車が再利用された駅舎です。北海道では老朽化した木造駅舎の更新や無人化で発生した余剰スペースの解消のために、余剰となっていた車掌車を改造した駅舎が多数見られます。
この勇知駅もそんな駅の1つですが、2013~14年の間に外装にサイディングが張られもはや鉄道車両の面影はありません。
保存車の趣獅ゥらは外れる物件ですが、近年は「ダルマ駅」などと紹介され興味を持つ方も多いようです。

「最北端の車両を紹介する」と大見栄を切っておきながら情けない結果になりました。今後、勇知駅より北に置かれている車両があればそれが最北端の物件という事になります。しかし範囲が広すぎるため私だけで捜索することは不可能だと思います。もし情報をお持ちの方がいらっしゃればお知らせ頂ければありがたいです。

※冒頭から一切触れていませんが、択捉島および南樺太(サハリン)の保存車は対象外としています(私の政治的思想とは無関係です)。択捉島に保存車があるのかは分かりませんが、南樺太には存在します。下の画像はユジノサハリンスクのキハ58。