国鉄時代の二軸貨車であるワム60000とワラ1。両者は積載量は違うもののよく似た外観で、当ブログ内でも両者を取り違えている箇所や「どちらか分からない」などと記載していた部分が多数あったかと思います。
この度ふと思いつきで両者の見分け方を調べてみました。ネット上では見分け方を紹介している方が多数いらっしゃるため何番煎じのネタか分かりませんし、廃車体を趣味にする者として今まで無頓着だったことは大変恥ずかしいことですが、何かの参考にして頂ければと解説させて頂きます。
撮影場所:北海道深川市納内町
車両:ワラ1(番号不明)
(2022年6月10日撮影)
これはワラ1の廃車体ですが廃車当時の塗装のまま一度も再塗装されていないようで、番号や標記は消えているためこれらから形式を特定することは不可能です。では、どのように見分けましょうか?
(納内町のワラ1です)
ワラ1だと見分けるポイントの1つめが妻面の突起です。妻面上部の中央には大きな通気口が付いていますがその両側に2つずつ(片側妻面で計4個)のリベットがあります。
これがあればワラ1、無ければワム60000だと見分けられます。
保存や再利用に際してわざわざ削り取ることは無いと思いますが、個体によっては腐食でリベットが脱落しているものもあります。
(納内町のワラ1です)
次にワラ1だと見分けるポイントは、側面引戸レールの位置です。
ワラ1は側面の下端とほぼ同じ位置にレールがあり、ワム60000は下端より少し上にレールが取り付けられています。
撮影場所:北海道三笠市幌内町2丁目287 三笠鉄道村
車両:ワム66172
(2010年10月1日撮影)
三笠鉄道村で保存されているワム60000です。車号が残されていますが、先ほど記載した見分け方には当てはまっているでしょうか?
(三笠のワム66172です)
妻面上部の通気口の左右に突起がありません。
(三笠のワム66172です)
下側の側面引戸レールが、車体裾(側面下端)から少し上側に取り付けられています。
なおワム60000のうち初期型と呼ばれる車両(ワム60000~61299の1300両)は、側面と妻面の接合部に凸部があるため(側面が妻面より凹んで見える。俗に「額縁」と呼称)この見分け方を使わなくても一発で判別可能です。この方法はワム60000後期型(ワム61300以降の7280両あまり)とワラ1を見分ける方法と言えます。
撮影場所:北海道旭川市東旭川町倉沼
車両:ワム60000(番号不明)
(2011年4月12日撮影)※2022年時点で撤去済
ここからは例題編です。ワム60000後期型です。妻面の突起が無いこととドアレールの位置で判別可能ですね。
撮影場所:北海道山越郡長万部町双葉 JR函館本線二股駅
車両:ワラ1(番号不明)
(2016年1月5日撮影)
貨車を改造した駅舎に転用されたワラ1です。側面引戸部分に壁を作り住宅用のアルミ戸を取り付けているので、オリジナルのドアレールは撤去されています。
(JR二股駅です)
しかし妻面上部にはワラ1の証である4カ所の突起がしっかり残っています。塗色の関係で少し見にくいですが、うっすら雪が積もっています。
撮影場所:北海道根室市納沙布
車両:ワム60000(番号不明)
(2014年6月18日撮影)
おそらく日本最東端に位置する保存車(放置車)と思われる車両です。
海岸まで約30mということと濃い海霧が頻繁に発生する場所なので車体は腐りかかっていますが、ドアレールの位置と妻面リベットが無いことからワム60000後期型だと分かります。
撮影場所:北海道標津郡標津町北1条西2丁目 根室標津駅転車台跡
車両:ワム60000、ワラ1(いずれも番号不明)
(2019年7月18日撮影)
ここには2両の廃貨車が置かれていますが、手前がワム60000後期型、奥がワラ1のようです。
ワラ1はワム60000よりわずかに全高が大きいようですが、このように下回りが失われてかつ真っ平ではない地面に置かれていると車高では区別出来ません。
加えて放置車では周囲に雑草が生い茂っていることも多いため(ドアレールが見えない)、妻面上部の突起が唯一見分ける方法となることもあります。逆に建物に取り込まれたり後付けで屋根が取り付けられているケースもありますので、そうなると妻面上部が見えない場合もあります。
古くからのファンの方々や保存車趣味の方々には常識のようなことだったかもしれませんが、自分自身の備忘録も兼ねて記事として残しておこうと思った次第です。
これまでに投稿した記事内でもワム60000とワラ1の区別が付いていない箇所が多数あるかと思いますが、見つけ次第訂正していきます。