ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

滝とホタル

2022-07-04 17:26:20 | ゲンジボタル

 滝を背景に舞うゲンジボタルを観察し、写真には初めて収めた。

 当初の予定では、昨年の秋にヒメボタルの生息環境調査と保全指導で招かれた宮城県仙台市へ、ヒメボタルの発生状況を実際に確認するつもりであったが、沖縄遠征から帰ってきて直ぐに東京も梅雨明けとなり、連日の猛暑で睡眠不足。疲れも抜けないことから、仙台遠征は見送ることにした。
 その代わりに滝を背景に舞うゲンジボタルを観察し、写真に収めてきた。このゲンジボタル生息地は、2019年の台風19号の影響によって大きな被害を受けた。二日間の総雨量610mm、渓流は濁流となって直径1mもある岩をも流した。これによりゲンジボタルの幼虫やカワニナの多くも流されてしまい、2020年の発生は激減してしまったのである。観察時では2頭のオスのみであった。
 しかしながら、ゲンジボタルは一年ですべての幼虫が成虫になるわけではなく、最長4年かかる個体も存在する。小さな幼虫ほど流されないため、何にもなければ3~5年かかって再び増えていく。今年が3年目であり、どの程度回復したのか確認しておきたかった。
 またこの生息地には大きな滝があり、滝の周辺もゲンジボタルが舞うのであるが、雨量が多い時期では滝風が強くなり、その数は減ってしまう。今年は6月24日以降まったく雨が降っておらず、しかも連日の猛暑。滝の水量も少なくなりゲンジボタルが舞うに違いない。天候は曇りで月はない。そして無風。滝を背景に舞うゲンジボタルの写真は、これまで撮影したことがなかったので、またとないチャンスであった。

 現地には17時半に到着。気温は25℃。思った通り水量は多くなく滝風も弱い。構図を決め待機する。1頭目のゲンジボタルが発光を始めたのが、19時40分。下流の茂みの中であった。しばらくすると発光する数も増え始め、飛翔も開始。滝方向では、高さ20m以上もある木の梢で光っている。すべての個体が高い場所におり、川岸の茂みにはまったくいない。その高い梢から滝の周囲を舞い始めた。滝風に巻き込まれるのか、光りながら早いスピードで滝つぼの方へ降りていく個体もいる。それが、長い光の線で写っている。(写真3)
 2020年に観察し撮影した、滝から50mほど下流の場所にも行って見た。5~6頭ほどが飛翔しているが、ほとんどが頭上の遥か上である。他の場所でもそうであるが、渓谷で細く深い谷では、オスは高い所を飛翔する傾向にある。水面近くを飛翔しても、休む時は地上10mほどの杉の梢に上がっていき、川岸の茂みではない。こちらでは、映像を記録した。
 まだ乱舞という数ではないが、災害からの復活の兆しが見え始めたという印象である。同じような被害が無ければ、来年、再来年は更に多くのゲンジボタルが舞うに違いない。

 本年のゲンジボタルの観察と撮影は、これで終了である。他には、千葉県と岐阜県の生息地しか訪れなかったが、新たに多くを学ぶことができた。今週末以降は、ヒメボタルの観察と撮影である。
 東京都内に生息するヒメボタルの写真と映像を記録として残すこと、そして都内の新たな生息地の探索、また富士山麓にて日本ホタルの会主催の「ヒメボタル観察会」もある。今年は「天の川とヒメボタル」を撮ってみようと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

滝とホタルの写真

滝とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 ISO 640 約6分相当の多重(撮影日:2022.7.03)

滝とホタルの写真

滝とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 ISO 640 約1分相当の多重(撮影日:2022.7.03)

滝とホタルの写真

滝とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 ISO 640 約1分相当の多重(撮影日:2022.7.03)

渓流源流部に棲むゲンジボタル

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