バロックのチェンバロの音
そのひとつひとつが溶解した夜空の
柔らかい素肌のようなビロードに覆われた
自転と公転周期に突き刺ささり
噴煙に包まれる地球
結局は
人間は脳ではないことを証明するため
最後は自らの脳を破壊し
そのとき湧き上がる黄金の入道雲
スローモーションのように動き
思いもよらない文法を持った詩が生まれる
すでに予言された運命のように
決して同じ形に戻ることはなく
同じ言葉をしゃべることのない人間は
オレンジの大木によじ登り
枝伝いに窓から侵入する
教室の中では
生徒に
思考の定型文法と
決断の初歩的命題の証明法が教えられている
その怖ろしく難しい授業とは対照的に
もう一つの方法があることを知っているある生徒は
歴史や推論的思考を用いることなく
直感を使うやり方をのみ試みる
すでに揮発してしまった記憶の断片が意識下に押し寄せ
それはかつて話した女の子でもあり
そこで話したことは
一杯のコーヒーを飲みながら
直感でしか
無言でしか会話できないことではあるが
チェンバロの演奏と
よく似合っている