幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 チェンバロを弾く

2013-09-15 01:32:25 | Weblog

 
 
 バロックのチェンバロの音
 
 そのひとつひとつが溶解した夜空の
 
 柔らかい素肌のようなビロードに覆われた
 
 自転と公転周期に突き刺ささり
 
 噴煙に包まれる地球
 
 結局は
 
 人間は脳ではないことを証明するため
 
 最後は自らの脳を破壊し
 
 そのとき湧き上がる黄金の入道雲
 
 スローモーションのように動き
 
 思いもよらない文法を持った詩が生まれる
 
 すでに予言された運命のように
 
 決して同じ形に戻ることはなく
 
 同じ言葉をしゃべることのない人間は
 
 オレンジの大木によじ登り
 
 枝伝いに窓から侵入する
 
 教室の中では
 
 生徒に
 
 思考の定型文法と
 
 決断の初歩的命題の証明法が教えられている
 
 その怖ろしく難しい授業とは対照的に
 
 もう一つの方法があることを知っているある生徒は
 
 歴史や推論的思考を用いることなく
 
 直感を使うやり方をのみ試みる
 
 すでに揮発してしまった記憶の断片が意識下に押し寄せ
 
 それはかつて話した女の子でもあり
 
 そこで話したことは
 
 一杯のコーヒーを飲みながら
 
 直感でしか
 
 無言でしか会話できないことではあるが
 
 チェンバロの演奏と
 
 よく似合っている
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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